コミット 25:『旅立ちの決意!この世界のバグ、見過ごせないっしょ!』
村での生活は、ニーナにとって多くの学びと、そして新たな葛藤をもたらした。自分の持つSE知識と論理魔導という力が、この世界で十分に通用すること。そして、この世界が、まるでバグだらけのシステムのように、あちこちで不具合を起こし始めていること。 村人たちの期待は重荷ではあったが、同時に、彼らの純粋な感謝は、ニーナの心の奥底に眠っていた「誰かの役に立ちたい」という原始的な欲求を刺激してもいた。
「(このまま、この小さな村で便利屋SEとして一生を終えるのも悪くないのかもしれない。でも……)」
ニーナの脳裏には、家畜小屋で感じた魔力汚染の不気味さや、夜空に一瞬だけ見えた謎のコードの残像が焼き付いていた。そして、各地で頻発しているという原因不明の災害や魔物の凶暴化の噂。それらは全て、この世界が抱える「バグ」が、もはや無視できないレベルにまで進行していることを示唆していた。
「(こんな中途半端な仕組み、SEとして放っておけるか!)」
それは、もはや使命感と呼ぶべきものだった。前世で、問題を見過ごした結果、取り返しのつかない事態を引き起こしてしまった苦い経験が、ニーナの背中を押していた。
そんな折、村に立ち寄った旅の行商人から、興味深い話を聞いた。
「最近、王都アウレア・シティの近辺では、原因不明の魔力の乱れが頻発していてね。それで、冒険者ギルドが正式に調査依頼を出して、腕利きの冒険者や魔術師たちが原因究明に乗り出しているらしいよ」
「(王都アウレア・シティか……)」
ニーナの心は決まった。この村での生活は、ある意味で快適だった。しかし、自分の知識と能力を本当に活かすべき場所は、ここではない。より広範囲の問題を調査し、可能ならそれを修正する。そして、この世界の仕組みの全体像を把握する。そのためには、より多くの情報と、そしておそらくは協力者が必要になるだろう。
「(それにせっかく異世界に転生したんだ。もっと広い世界を見てみたいって思うのは、当然っしょ!)」
ギャルとしての好奇心も、ニーナの決意を後押しした。
村長のゴードンさんに旅立ちの意思を告げると、ゴードンさんは寂しそうな顔をしながらも、ニーナの決意を尊重してくれた。
「お前さんのような若者が、こんな小さな村に留まっているのは勿体ないと思っていたよ。達者でな」
ニーナは、本格的な旅立ちに向けて、まずは近隣の村々を巡り、情報収集と物資の調達を始めることにした。
決意を固めたニーナの瞳に、一瞬強くコード紋様が浮かび上がり、耳元で揺れる赤い宝石のイヤリングが、まるでその決意に呼応するかのように、微かに光を放った気がした。
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
「面白かった!」「続きが気になる!」と感じていただけたら、ぜひブックマーク登録と、【★★★★★】評価で応援よろしくお願いします!
あなたの応援が、次のコミットに繋がります!




