コミット 22:『異世界の夜空に浮かぶ回路……って、まさかアレが!?』
村での生活は、驚きと発見の連続だった。特にニーナを魅了したのは、夜空に広がる満天の星々だった。前世では、都市の光害でほとんど見ることのできなかった無数の星の輝き。それは、まるで宇宙という巨大なディスプレイに、きらめくデータが映し出されているかのようだった。 その夜も、ニーナは村の外れの草むらに寝転がり、一人で星空を眺めていた。昼間の畑仕事と論理魔導の実験で疲れた頭を、夜風が優しく冷やしてくれる。
「(……綺麗だな。こんな星空の下で、毎日問題解決してるなんて、前世の俺が聞いたらひっくり返るだろうな)」
ふと、そんなことを考えていた時だった。 視界の端、天頂に近い星々の間で、何かが一瞬、淡く明滅したのに気づいた。
「(ん?流れ星か……?いや、違うな)」
それは流れ星のような軌跡を描くものではなく、まるで夜空に直接、何か図形が描かれたかのような光だった。ほんの一瞬の出来事で、すぐに消えてしまったが、ニーナの網膜にはその残像が焼き付いていた。それは、いくつかの直線と曲線で構成された、どこか幾何学的なパターン。まるで、複雑な回路の一部を抜き出したかのような……。
「(今の……まさか、何かの電子回路とかじゃないよね……?)」
慌てて目を凝らし、再び同じ場所を見つめる。しかし、そこには変わらず、静かに瞬く星々があるだけだった。
「(見間違い……か?いや、でも確かに……)」
ニーナは自分の目を疑った。疲れているのだろうか。それとも、この世界の異常な魔力が、ついに自分の視覚にまで影響を及ぼし始めたのだろうか。
「(もし、あれが本当に何かの『情報』だとしたら……この星空自体が、巨大なシステムだっていうのか?そして、俺が見たのは、その一部……?)」
荒唐無稽な考えだとは思う。しかし、この世界に来てからというもの、常識では考えられないことばかりが起きているのだ。自分の転生、論理魔導、そして世界のあちこちで起こるバグらしき現象。それら全てが、この世界が何らかの巨大な「システム」である可能性を示唆しているように思えた。
「(だとしたら、あの光のパターンは、誰が、何のために……?)」
しばらくの間、ニーナは夜空の一点を見つめ続けたが、二度とその不思議な光が現れることはなかった。
「(...考えすぎか)」
結局、ニーナはそう結論付け、ため息をついた。しかし、胸の奥には、新たな謎の種が蒔かれたような、ざわざわとした感覚が残っていた。
「(もし、あれが本当に何かの情報だとしたら、それを読み解く方法があるはずだ。あるいは、あの『回路』が見える条件や場所があるのかもしれない。次に夜空を観察する時は、魔力の流れをより精密に感知しながら、あの現象の再現を試みよう。あるいは、どこかに記録されている……?古文書の類も、もう一度徹底的に洗い直す必要があるかもしれないな)」
この世界のシステムは、自分が想像しているよりも遥かに広大で、そして複雑怪奇なものなのかもしれない。だが、SEとして、その未知の領域に挑まずにはいられない衝動が、ニーナを駆り立て始めていた。
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