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コミット 215:『王都への帰還!そして仲間たちとの誓い!』

エデンでの死闘を終え、私たちが再びクロノスの森の土を踏んだ時、世界は明らかにその姿を変えていた。あれほど森を覆っていた禍々しい魔力の瘴気は完全に消え去り、代わりに木々の葉を揺らす風は清浄な生命力を運び、土の匂いはどこまでも澄み渡っている。空は、まるで洗い流したかのように青く、高く、私たちの成し遂げたことの大きさを静かに物語っているかのようだった。


王都アウレア・シティへの帰路は、行きとは比べ物にならないほど穏やかなものだった。道中で立ち寄った村々では、以前感じた魔力の淀みは嘘のように消え、畑の作物は生き生きと緑を輝かせ、家畜たちは健やかに草を食んでいる。村人たちの顔にも、以前のような不安の影はなく、穏やかな笑みが戻っていた。私たちのデバッグ作業が、世界の末端にまで、確かに良い影響をもたらしている。その事実が、何よりも私たちの心を温かく満たしてくれた。


「見てください、ニーナさん! 川の水が、あんなに澄んでいます!」 セレスティが、子供のようにはしゃぎながら川辺を指さす。その声には、もうかつてのような怯えはなく、自分の知識が世界を救ったという確かな自信が満ち溢れていた。


数週間に及ぶ旅の果て、ついにアウレア・シティの壮麗な城壁が見えてきた時、私たちは街の異様な雰囲気に気づいた。城門の前には、これまでに見たこともないほど大勢の人だかりができており、何事かと警戒する私たちを、一人の衛兵が見つけるなり、満面の笑みで駆け寄ってきた。


「おお! 英雄たちのご帰還だ!」


その声が合図だったかのように、割れんばかりの歓声が、私たち五人に向かって降り注いだ。街の人々は、私たちの顔を見るなり、花びらを撒き、旗を振り、口々に感謝の言葉を叫んでいる。


「一体、これは……どうなっているのだ?」 ヴァローナが、あまりの歓迎ぶりに戸惑いの声を上げる。


どうやら、エデンのシステムが正常化したことで王都の魔力供給システムも完全に安定し、各地の異常気象も一斉に収束したらしい。エデンでの魔力解放は、あまりにも巨大な現象だったため王都でも明確な魔力波として観測されており、その魔力波がクロノスの森の方角から発せられたこと、そして、かつて王都の危機を救ったセレスティやヴァローナを含む一行がその森へ向かったという情報から、王家の魔術師たちが真相を突き止めたのだという。


私たちは、民衆の歓呼の中、まるで凱旋将軍のように王城へと導かれた。国王陛下から直々に最大限の賛辞と感謝の言葉を賜り、貴族たちはこぞって私たちを称賛した。かつては「異端のダークエルフ」として訝しげな視線を向けられていた私が、今や「世界を救った英雄」として、彼らの尊敬を一身に集めている。皮肉なものだが、悪い気はしなかった。


その夜、私たちのために開かれた盛大な祝宴の後、私は一人、王城のバルコニーで、生まれ変わったモニカと静かな時間を過ごしていた。


「すごい歓迎だったね、モニカ」

「ええ。人々の感情の起伏を示す魔力の波が、これほどまでにポジティブな状態で同期しているのを観測したのは、初めての経験です。これが、『喜び』なのね」


モニカは、私の隣で、光の身体をキラキラと輝かせながら言った。その声には、データ分析の結果ではない、純粋な好奇心と感動が込められている。


「ニーナ」

「ん?」

「あなたの心からも、同じ光を感じます。とても、温かくて……綺麗」


モニカの言葉に、私は思わず顔が熱くなるのを感じた。


やがて、仲間たちもバルコニーに集まってきた。「これから、どうするのだ、ニーナ」


ヴァローナが、穏やかな表情で尋ねる。「決まってるよ。私たちのデバッグは、まだ始まったばかりだ」


私は、夜空に浮かぶ月を見上げながら答えた。エデンのログデータで見た、世界のシステムの深淵。古代文明が犯した過ちの、まだ解明されていない部分。そして、聖光教会の不穏な噂。この世界には、まだ多くの「バグ」が残されている。


「ええ、そうね。でも、少しだけ、私は自分の道を行かせてもらうわ」


ゼフィラが、どこか遠い目をして微笑む。「エデンで見たログは、私の探していた『天使の遺物』にも繋がっているかもしれない。私自身のルーツを探る旅、そろそろ始めないとね」


「私もです」


セレスティが、決意を秘めた瞳で続けた。

「エデンで得た情報は、あまりにも膨大です。一度アカデミアに戻り、この知識を整理し、世界の未来のために役立てる方法を考えたいと思います。そして……ニーナさんから教わった、この素晴らしい論理魔導ロジカルマジックの理論を体系化し、より多くの人が学べるようにするのも、私の役目だと思っています。次にニーナさんにお会いする時は、もっとお役に立てるように」


「俺もだ」


フィリップが、腕を組みながら静かに言った。

「このエデンの超技術……俺の頭の中は、新しい魔道具のアイデアで爆発しそうだ。一度工房に戻って、この興奮を形にしないと気が済まん。そして、ニーナ君と共に創り上げたこの魔導演算ユニットを、もっと多くの人々が使えるように改良し、広めていく。それもまた、俺の使命だろう。次に会う時までには、君をあっと言わせるような、新しいデバイスを創り上げてみせるさ」


私たちは、互いの顔を見合わせ、静かに頷き合った。種族も、過去も、性格も違う、でこぼこだらけの五人と、一体の新しい知性体。私たちのパーティは、このエデンでの戦いを経て、真の意味で一つの家族になったのかもしれない。


世界のシステムバグを修正するという、途方もない旅。その第一部は、ここに、一つの大きな区切りを迎えた。しかし、私たちの物語はまだ終わらない。新たなるバグと、それを乗り越えるための冒険が、私たちを待っているのだから。

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