コミット 21:『この世界、まるでベータ版!私、デバッガーとして雇われたってことでOK?』
村での日々は、ニーナにとって異世界への適応期間であると同時に、自身の能力とこの世界の奇妙さについて深く考える時間でもあった。論理魔導は、明らかに既存の魔法体系とは一線を画す可能性を秘めている。そして、世界のあちこちで観測される魔力の淀みや異常現象は、まるで大規模システムが抱える無数のバグのように思えてならなかった。
「(考えてみれば、俺が異世界転生して、しかもこんな都合の良いギャルボディ(ただしFカップは余計)と、前世のSE知識を保持してるって状況自体が、何かの『計画』だとしたら……?)」
最初は単なる偶然、あるいは何かの気まぐれだと思っていた。しかし、畑の魔力流の調整、家畜小屋の魔力汚染、そして祠での不可解な魔力活性。それらの出来事を通して、ニーナの中で一つの仮説が形を成しつつあった。
「(もしかして俺、この世界を修正するために転生させられたんじゃ……?)」
そう考えると、いくつかの辻褄が合ってくる。ダークエルフという種族は、一般的に魔法適性が高いらしいと聞く。その中でも、ニーナが持つ魔力感知能力や、論理魔導という新たな概念を生み出せたのは、単なる才能だけではない、何か特別な「役割」を与えられているからではないか。
「(もしそうだとしたら、この世界は壮大なテスト環境で、俺はそのテスター兼修正担当ってわけか。……だとしたら、報酬はなんだ?まさか『やりがい』だけとか言わないよな?)」
冗談めかして考えてはみるものの、あながち笑い飛ばせないリアリティがその仮説にはあった。最近、旅の商人や村を訪れる者たちから、各地で原因不明の天災や魔物の凶暴化が頻発しているという噂を耳にする機会も増えていた。それらは全て、世界のシステムが不安定になっている兆候としか思えなかった。
「(放置すれば、いずれは致命的なシステムエラー……つまり世界の機能停止、なんてことにもなりかねない、か?)」
そこまで考えると、さすがに楽観的にはなれない。一介のSEだった自分が、いきなり世界の命運を左右するような立場に立たされるなど、想像もしていなかった。しかし、目の前に「問題」があるのなら、それを解決しようとするのがSEの性というものだ。
「(まあ、本当に修正担当として雇われたのかどうかは知らんが……少なくとも、この世界の不具合を見過ごすのは、俺の主義に反するな)」
ニーナは空を見上げた。どこまでも広がる青い空。しかし、その向こう側には、まだ見えない複雑なシステムと、それを蝕む無数のエラーが隠されているような気がした。
「(さて、どこから手をつけるか……まずは情報収集と、自分の能力のさらなる検証だな)」
自分の転生の理由や世界の真実がどうであれ、やるべきことは変わらない。目の前の問題点を解析し、解決策を模索し、そして実行する。それだけだ。ギャルSEニーナの、壮大な修正作業は、まだ始まったばかりなのだ。
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