表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
208/216

コミット 208:『決断の時!?世界のシステムをデバッグせよ!』

古代文明が遺した、あまりにも重い真実。私たちは、言葉を失い、ただ静まり返った制御室の中で、それぞれの想いを巡らせていた。


「……身勝手な連中だ。自分たちの欲望のために世界を壊し、その尻拭いを未来の我々に押し付けるとはな」


最初に沈黙を破ったのは、ヴァローナだった。その声には、古代文明への静かな怒りが込められていた。


「でも……彼らもまた、自分たちの過ちに気づき、苦しんでいたのかもしれません……。これだけの知識と技術を持ちながら、滅びるしかなかった無念は、どれほどのものだったか……」


セレスティは、瞳に涙を浮かべ、失われた文明に想いを馳せていた。


「うふふっ、なんだか、他人事とは思えないわねぇ。神の領域に手を伸ばす、なんて。私も、気をつけなくっちゃ」


ゼフィラは、自嘲するような笑みを浮かべた。彼女もまた、その身に強大すぎる力を宿す者として、アーキテクトたちの傲慢さに、何か通じるものを感じていたのかもしれない。


「……これほどのシステムを構築し、そして破綻させたか。技術者として、畏怖と、そして一種の憐憫を禁じ得ないな」


フィリップは、腕を組み、複雑な表情で巨大な水晶体を見上げていた。


仲間たちがそれぞれの感慨に耽る中、私は一人、SEとしての冷静な思考を巡らせていた。


「(確かに、古代人のやったことはヤバすぎる。テストもせずに本番環境にいきなりヤバい機能をリリースして、案の定、全サーバーダウンさせた、みたいなもんだ。でも、過去を嘆いていても、何も始まらない)」


『――警告。世界の魔力(ハーモニー・サイクル)の自己修復機能、限界値に到達。今後、バグの増殖速度は指数関数的に増大する可能性大。予測される完全崩壊まで、残存時間――』


モニカが、ログデータと現在の世界の魔力状況を照合し、冷徹な分析結果を報告する。その内容は、私たちの絶望をさらに深いものにした。このまま放置すれば、数年のうちに、この世界の生命活動は完全に停止する。


重苦しい沈黙が、再び制御室を支配した。為す術はないのか。私たちは、ただ世界の終わりを待つしかないのか。


「――デバッグするしかないっしょ」


その沈黙を破ったのは、私の、場違いなほど明るい声だった。


仲間たちが、驚いたように私の顔を見る。私は、不敵な笑みを浮かべて、宣言した。


「確かに、古代人がやらかしたバグは、マジで最悪だ。でもさ、システムにバグがあるなら、それを修正するのがSEの仕事でしょ? 目の前に、制御可能なサーバーがあって、ログデータも残ってる。だったら、やることは一つしかないじゃん!」


私の計画は、あまりにも大胆で、そして無謀なものだった。このエデンの制御システムを、私たちの手で完全に再起動させ、世界の魔力(ハーモニー・サイクル)に直接介入し、バグを強制的に修正する。いわば、世界そのものを対象とした、大規模なデバッグ作業だ。


「無茶だ、ニーナ君!」フィリップが叫ぶ。「我々には、このシステムの全容を理解するための、十分な情報がない! 下手にいじれば、それこそ取り返しのつかないことになるぞ!」


「そうよ、ニーナちゃん! いくらあなたでも、一人で世界の運命を背負うなんて……!」


ゼフィラも、心配そうな表情を浮かべる。


「一人じゃない」


私は、仲間たちの顔を一人一人、真っ直ぐに見つめ返した。


「私には、みんながいる。ヴァローナさんの、どんな困難にも屈しない剣とリーダーシップがある。セレスティの、失われた知識で道を照らしてくれる、最高の頭脳がある。ゼフィラの、私たちの心を繋ぎ、守ってくれる、愛の力がある。そして、フィリップさんの、不可能を可能にする、最高の技術がある。そして、私の最高の相棒、モニカもいる」


私の言葉に、仲間たちの瞳に、再び光が宿り始める。


「確かに、無茶な計画かもしれない。失敗する確率の方が高いかもしれない。でも、何もしなければ、待っているのは確実な『ゲームオーバー』だ。だったら、私は、最後の1バイトまで足掻き続ける方を選ぶ。それが、私のSEとしての、そして、ギャルとしてのプライドだから!」


私の瞳の奥で、ルビーレッドの光と、青白いコード紋様が、かつてないほど強く輝いていた。その決意は、もはや誰にも揺らすことはできない。


ヴァローナが、ふっと息を吐くように笑い、剣の柄を握りしめた。


「……フッ。言ってくれる。よかろう。お前のその無謀な賭け、乗ってやろう。私の剣は、お前と共にある」


「はいっ! 私の知識の全てを、この世界のデバッグのために捧げます、ニーナさん!」セレスティが、力強く頷く。


「うふふっ、仕方ないわねぇ。世界を救うギャルSEなんて、最高にイケてるじゃないの。この私が、最高の舞台を用意してあげるわ」ゼフィラが、妖艶に微笑む。


「……やれやれ。君という人間は、本当に……。だが、これほど巨大なシステムの修復に立ち会える機会など、二度とないだろうな。いいだろう、私の技術の全てを、君のロジックのために使おう」


フィリップが、呆れたように、しかしどこか嬉しそうに言った。


五人の心は、再び一つになった。私たちは、エデンの心臓部である巨大な水晶体を、決意に満ちた表情で見据える。


世界の運命を賭けた、史上最大規模のデバッグ作業が、今、始まろうとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ