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207/216

コミット 207:『世界のログデータ!?明かされる「人災」の真実!』

聖域の防人を倒し、さらに奥へと進んだ私たちは、ついにエデンの心臓部と思われる場所へとたどり着いた。そこは、巨大な球状の空間だった。ドーム状の天井には、まるでプラネタリウムのように、この世界の魔力の流れを示す星図のようなものがゆっくりと回転している。そして、その空間の中心には、巨大な浮遊する水晶体が、淡い光を放ちながら鎮座していた。


「あそこが……おそらく、このエデンの心臓部ね」


ゼフィラが、息を呑みながら言った。


その水晶体の手前には、操作盤のようなものが設置されている。私は、まるで何かに引き寄せられるかのように、その操作盤へと近づいた。表面に手をかざすと、私の魔力に呼応するように操作盤が起動し、目の前の巨大な水晶体に、膨大な量の情報が光の奔流となって流れ込み始めた。


「(これは……! 世界のログデータ……!)」


水晶体は巨大なスクリーンと化し、そこに、古代文明「アーキテクト」の、栄光と、そして滅びの歴史が、ホログラム映像として再生され始めたのだ。


そこに映し出されたのは、私たちの想像を絶するほど高度に発達した文明の姿だった。荒れ地を一瞬で緑豊かな農地に変える技術、自在に天候を操る技術、そして、エデンという巨大なシステムを用いて、世界の魔力(ハーモニー・サイクル)から無限のエネルギーを引き出し、永遠の繁栄を謳歌する人々の姿。彼らは、まさに神にも等しい力を手にしていた。


しかし、物語は一転する。


『警告:世界の魔力(ハーモニー・サイクル)に許容値を超える負荷。世界の理の一部に、計り知れぬ歪みが発生』


無機質なシステム音声と共に、映像にノイズが走り始める。彼らは、世界の魔力循環という、あまりにも複雑で壮大な自然の摂理を、完全にコントロールできると思い上がっていた。さらなる繁栄を求め、エデンに過剰な負荷をかけ続けた結果、システムの至る所に「バグ」が生じ始めたのだ。


映像に映し出される世界の魔力(ハーモニー・サイクル)は、かつての美しく調和の取れた光の交響曲から、不協和音が鳴り響く、狂ったノイズの集合体へと変貌していく。そのバグは、異常気象、巨大地震、そして生物の凶暴化といった形で、現実世界に牙を剥き始めた。天変地異が、彼らの築き上げた栄華を、いとも容易く飲み込んでいく。


「あぁ……なんて、愚かな……」


セレスティが、悲痛な声を漏らした。


アーキテクトたちも、必死にシステムのデバッグを試みたようだ。ログには、無数の修正を適用しようとした痕跡が残されている。しかし、一度崩壊し始めた複雑な生態系を、人の手で元に戻すことはできなかった。彼らの傲慢さが招いたバグは、もはや誰にも止められない、破滅へのカウントダウンと化していた。


そして、最後のログデータが再生される。


『……我々の過ちだ。我々は、神の領域に手を伸ばしすぎた。もはや、この世界の崩壊は止められない。残された最後の希望は、エデンを長き眠りにつかせ、世界の自己修復能力に賭けることのみ……未来の、我々よりも賢き者たちが、この過ちを正してくれることを、祈る……』


映像は、そこで途切れた。


私たちは、ただ呆然と立ち尽くすしかなかった。今、この世界を蝕む「大いなる世界のシステムバグ」。それは、自然発生したものでも、神の怒りでもない。かつてこの地に生きた人間たちが、自らの欲望のために引き起こした、紛れもない「人災」だったのだ。そして、その時のバグの後遺症が、数千年の時を超えて、今なお定期的な災害として、この世界を苦しめ続けている。


重すぎる真実。それは、私たちの肩に、世界の運命そのものを委ねられたかのような、計り知れない重圧となってのしかかってきた。

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