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コミット 206:『力の試練:聖域の防人《ガーディアン》』

古の理の門を突破し、さらにエデンの奥深くへと進む私たち。次にたどり着いたのは、巨大な円形の闘技場のような広間だった。そして、その中央で私たちを待ち受けていたのは、一体の異様な姿をした存在だった。


それは、従来のゴーレムとは一線を画す、流線型で金属のような艶を持つ、特殊な魔力伝導体で構成された人型の機械兵士だった。その身体の至る所に青い光のラインが走り、まるで血管のように魔力が脈打っている。物理的な攻撃能力もさることながら、その存在そのものから放たれる圧力は、尋常ではなかった。


「聖域の防人ガーディアン……古代文献にあった、エデンを守護するために創られた自律型防衛魔道具……!」 セレスティが、戦慄の声を上げる。


ガーディアンは、私たちを認識すると、音もなく滑るように動き出し、その腕を鋭い刃へと変形させて襲い掛かってきた。


「来るぞ!」 ヴァローナが先陣を切り、ガーディアンの刃をその長剣で受け止める。キィン!という甲高い金属音が響き渡り、火花が散った。「ぐっ……重い!」 ヴァローナの顔に驚愕の色が浮かぶ。ただ硬いだけではない。刃がぶつかる瞬間、ガーディアンの腕を走る光のラインが輝きを増し、衝撃を増幅させているかのようだ。卓越した剣技で受け流そうとしても、その一撃はヴァローナを数歩後退させるほどの威力を持っていた。


フィリップも後方からライフルを放つが、風の弾丸はガーディアンの滑らかな装甲に当たると、青い光の薄い膜に阻まれ、いともたやすく弾かれてしまう。


しかし、このガーディアンの真の脅威は、その物理的な戦闘能力だけではなかった。


「(くっ……!? ロジックが……通じない!?)」


私が論理魔導ロジカルマジックでガーディアンの動きを封じようと魔法を放った瞬間、術式はガーディアンに届く前に光の粒子となって霧散し、逆に私の頭の中に強烈なエラー信号が流れ込んできたのだ。


『警告。敵性ユニットより、対魔法干渉波を検知。論理構造に深刻なダメージ』


「こいつ……! 私たちの魔法そのものに干渉して、無力化する能力を持ってるの!?」 ゼフィラも、光の魔法を放つが、同様に掻き消されてしまう。


これは、物理攻撃と対魔法能力を併せ持つ、まさに私たちのパーティにとって天敵とも言える存在だった。ヴァローナとフィリップが物理的な足止めをしている間に、私とモニカが、この対魔法干渉のロジックを解明し、無力化しなければならない。


「モニカ! 敵の干渉波のパターンを解析! リアルタイムで私の魔法の脆弱性を修正して!」

『了解。対干渉波プロトコル、再構築開始!』


ここから、私たちの総力戦が始まった。前衛に躍り出たヴァローナに対し、ガーディアンは一切の予備動作なく踏み込み、その金属製の腕を瞬時にして白銀の長剣へと変形させた。繰り出された一閃は、音もなく空を切り、ヴァローナの喉元へと吸い込まれるかのように迫る。常人であれば反応すらできぬ神速の突き。


「――甘い!」


だが、ヴァローナは百戦錬磨の騎士。その剣閃を紙一重で見切り、自らの長剣で弾き返す。キィィン!と甲高い音が広間に響き渡り、二つの刃が火花を散らした。それは、壮絶な剣戟の始まりを告げるファンファーレだった。


ガーディアンの剣技は、機械的な正確さと、達人のそれのような洗練さを併せ持っていた。右からの薙ぎ払いをヴァローナが受け流せば、間髪入れずに左からの斬り上げが襲う。上段、中段、下段と、休む間もなく繰り出される連撃は、まるで激流のようであり、ヴァローナはそれを捌き、受け流し、時に弾き返すことで必死に凌ぐ。二人の剣が交錯するたびに、凄まじい衝撃波が生まれ、周囲の床を砕いた。


さらに厄介なことに、ガーディアンは背中から無数の光の触手を伸ばし、第二、第三の攻撃を仕掛けてきた。それはまるで、剣士が同時に複数の鞭を操るかのような、予測不能な攻撃だった。ヴァローナが剣戟に集中すれば触手が死角を狙い、触手を警戒すれば剣の猛攻が激しさを増す。


「くっ……!」


その連携攻撃に、さすがのヴァローナも防戦一方となり、じりじりと後退を余儀なくされる。


「セレスティ! 奴の構造上の弱点はないか!?」 ヴァローナが叫ぶ。「はいっ! あの青い光のライン……おそらく魔力の伝導路です! 特に、関節部分のラインは、動きを司る重要な部分のはず!」


フィリップはセレスティの指示を受け、弾かれることを覚悟の上で、ガーディアンの膝や肘の関節部を狙い、執拗に狙撃を続ける。


後衛では私とモニカが、目に見えない論理の戦いを繰り広げる。私は単純な魔力の矢を何度も放ち、それが掻き消される際のパターンをモニカに観測させ、膨大なデータを蓄積していく。ゼフィラはエンカレッジの力でヴァローナとフィリップの消耗を抑え、彼らの集中力を極限まで高めていた。


そして、ついにモニカが、ガーディアンの対魔法干渉の、ある法則性を見つけ出した。『ニーナ! 敵の干渉波には、0.7秒の周期で、ごく僅かな『凪』の瞬間が存在します! そのタイミングでなら、あなたの魔法が届くはずです!』


「0.7秒……! やってやる!」


私は、モニカが算出した完璧なタイミングに合わせ、全ての魔力を込めた一撃を放つ。


「――『論理崩壊ロジック・ブレイク』ッ!!」


私の魔法は、見事に対魔法干渉をすり抜け、ガーディアンの魔力循環システムに直接叩き込まれた。内部の論理構造を破壊されたガーディアンは、全身から火花を散らし、大きく痙攣すると、やがてその動きを完全に停止した。


「はぁ……はぁ……やった……!」


私たちは、疲労困憊ながらも、再び手を取り合い、勝利を分かち合った。このエデンの試練は、私たちの絆と総合力を極限まで試してくる。しかし、私たちは、それを乗り越えるたびに、より強く、そして一つになっていくのだった。

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