コミット 20:『小さな村の「信仰」と「奇跡」!祠の謎と教会の噂!?』
村の外れ、小高い丘の上に、古びた石造りの小さな祠があった。村人たちは、月に数度、この祠に集まっては静かに祈りを捧げるのが習わしだった。何を祀っているのか、いつからあるのか、詳しいことを知る者はもういないらしい。ただ、昔から「村の守り神様」として、大切にされてきたのだという。 ニーナも何度か、その祈りの場に居合わせたことがある。特に祭壇があるわけでもなく、村人たちはただ祠に向かって手を合わせ、目を閉じているだけだ。それでも、その空間にはどこか厳かな、清浄な空気が漂っているように感じられた。
ある時、村は日照り続きで作物の不作に見舞われた。井戸の水も枯れかかり、村人たちの顔には不安の色が濃く浮かんでいた。そんな中、村長のゴードンさんが、一人で何日も祠に籠り、特別な祈りを捧げたのだという。 すると、どうだろう。数日後、まるで恵みの雨のように、しとしとと雨が降り始めたのだ。そして、枯れかけていた作物が、少しずつ元気を取り戻していった。 村人たちは「守り神様のおかげだ!」「村長様の祈りが通じたんじゃ!」と口々に喜び、祠への信仰を一層深めた。
ニーナはその様子を冷静に観察していた。
「(……単なる偶然か?それとも、本当に祈りに何か力が……?長期間の日照りの後、雨が降る確率と、作物が一時的に回復する現象を考慮すると……データでハッキリと証明できるほどの違いはないかもしれないが……)」
しかし、魔力の流れを感じ取れるニーナには、少し気になる点があった。ゴードンさんが祈りを捧げている間、そして雨が降った後、祠の周辺の魔力が、普段よりも僅かに活性化し、温かい光を帯びているように見えたのだ。まるで、何かがその場所に魔力を集め、そして解放したかのように。
「(特定の状況下で、魔力が集まりやすい場所があるのか……あるいは、人の『祈り』のような強い想いが、魔力の流れに何らかの変化をもたらすことって、あるんだろうか……?)」
前世の科学的思考では説明のつかない現象。しかし、この世界ではそれが「奇跡」として受け入れられている。 ニーナは試しに祠の周囲の魔力の流れを詳細に観測してみた。しかし、その時は特に明確な異常は見つけられなかった。ただ、一瞬だけ、祠の真下、地下深くに何かがあるような、微弱な光の反応が瞳の奥に映った気がしたが、すぐにそれは掻き消えてしまった。
「(気のせいか……?)」
そんな折、村人たちが噂話をしているのを耳にした。 「やっぱり、困った時の神頼みだねぇ」 「そういえば、昔、大きな町にはもっと立派な教会があってな。そこの神父様がもっと凄い奇跡をいくつも起こして、病気を治したり、商売を繁盛させたりして、信者もたくさんいたそうだぞ」 「へぇー、そんな凄い神父様がいたのかい。一度お目にかかりたいもんだねぇ」
「(教会……奇跡……ね)」
ニーナはその言葉を記憶の片隅に留めた。この世界の「信仰」や「奇跡」と呼ばれる現象の裏には、まだ自分の知らない魔力の法則や、あるいは何らかの「仕組み」が隠されているのかもしれない。そして、それは必ずしも、純粋な善意だけで成り立っているとは限らないのではないか、と。漠然とした予感が、ニーナの胸をよぎった。
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
「面白かった!」「続きが気になる!」と感じていただけたら、ぜひブックマーク登録と、【★★★★★】評価で応援よろしくお願いします!
あなたの応援が、次のコミットに繋がります!




