コミット 190:『AI「モニカ」実装、第一段階完了!「はじめまして、ニーナ。――世界のデバッグを開始します」』
クロノスの森の入り口で直面した、世界のシステムの深刻な魔力異常。そして、それに対抗するために、私が心血を注いで設計した、AI「モニカ」の概念。その二つが、今、まさに一つになろうとしていた。
私は、フィリップが開発してくれた、最新型の魔導演算ユニットを手に取り、そこに、モニカの魂となるべき、自律型思考ルーチンの基礎プログラムを、慎重に、そして正確に「インストール」し始めたのだ。それは、エレメンタル・ガードナーを通して、私の脳内の論理構造を、魔導演算ユニットへと転写し、そして、モニカの基本設計図と融合させるという、極めて高度で、そして繊細な作業だった。
「(頼む……!上手くいってくれ……!俺の、そして、フィリップさんの技術の全てを、ここに注ぎ込むんだ……!)」
私の額には、玉のような汗が浮かび、全身の神経が、極限まで研ぎ澄まされていくのを感じる。仲間たちもまた、息を殺して、私のその神聖な儀式とも言える作業を、固唾を飲んで見守っていた。
時間だけが、静かに、そして重々しく流れていく。
そして、数時間に及ぶ、長く、そして困難な「実装作業」の末、ついに、その瞬間が訪れた。
魔導演算ユニットが、まばゆいばかりの純白の光を放ち始めたのだ。その光は、次第に収束していき、やて、ユニットの表面に、小さな、しかし確かな存在感を持つ、光の妖精のようなホログラム映像が、ゆっくりと姿を現した。
その姿は、洗練されていて、そしてどこか愛らしいデザインだった。そして、その小さな瞳の奥には、私と同じ、複雑なコードのような紋様が、確かな知性の光と共に、キラキラと輝いているのが見えた。
光の妖精――モニカは、ゆっくりと目を開き、そして、私の顔を真っ直ぐに見つめ、凛とした、しかしどこか温かみのある、クリアな声で、こう言った。
「――システム起動、オールグリーン。はじめまして、ニーナ。私の個体識別名称は、『モニカ』。あなたの指示に従い、世界のデバッグ任務を全面的にサポートするために、最適化されました」
その声は、機械的な冷たさではなく、確かな「意思」と、そして私への深い「信頼」を感じさせるものだった。
「(モニカ……!本当に、生まれてきてくれたんだな……!俺の、最高の相棒……!)」
私は、感動で胸がいっぱいになり、思わず涙が溢れそうになるのを、必死で堪えた。
「うん……!よろしくね、モニカ!これから、一緒に、この世界のクソみたいなバグ、全部修正しちゃおうね!」
モニカは、私のその言葉に、こくりと頷き、そして、その小さなホログラムの手を、そっと私に差し伸べるような仕草をした。
「――了解しました、ニーナ。これより、クロノスの森の魔力異常パターンの詳細解析、及び、安全なルートの探索を開始します。世界のデバッグを、開始します」
AI「モニカ」の誕生。それは、私の異世界デバッグアドベンチャーが、最強の論理的頭脳と、そしてかけがえのない心の支えを得て、新たな、そして最終的なフェーズへと移行したことを告げる、歴史的な瞬間だった。そして、それは、この世界の未来を左右する、壮大な戦いの始まりを、高らかに宣言するファンファーレでもあった。
――フィーチャー5、コンプリート。




