コミット 186:『ゼフィラの休日!美の探求と、仲間への意外な気遣い!?』
クロノスの森へと向かう旅の途中、私たちは、珍しく穏やかな気候の、美しい湖畔で一日休息を取ることになった。連日の過酷な移動と、世界の異変による緊張感から解放され、それぞれが思い思いの時間を過ごしていた。
ヴァローナは剣の手入れに余念がなく、セレスティは収集した植物の分類と記録に没頭し、フィリップは携帯用の魔道具の調整に集中している。そして私といえば、モニカの基礎設計について、頭の中で構想を練っていた。
そんな中、ゼフィラだけは、いつもと変わらず、どこか優雅な雰囲気を漂わせながら、湖畔に咲く珍しい花を摘んだり、水面に映る自分の姿に見とれたりしていた。
「(ゼフィラさんって、本当にマイペースだよな……。周りがどんな状況でも、自分の『美学』を貫き通すっていうか……。ある意味、最強のメンタルかもしれないな……)」
私がそんなことを考えていると、ゼフィラが、摘んだばかりの美しい花を手に、私の元へとやってきた。
「ニーナちゃん、ちょっといいかしら?このお花、あなたの髪に飾ったら、きっと素敵だと思うのよぉ」
そう言うと、ゼフィラは、私の髪に、その花を優しく挿してくれた。花の甘い香りが、ふわりと鼻をくすぐる。
「わぁ、ありがとうございます、ゼフィラさん!すごく綺麗ですね!」
「うふふっ、やっぱり、ニーナちゃんには、こういう華やかなものがよく似合うわ。もっとも、このゼフィラ様の美しさには、どんな花も霞んでしまうのだけれど」
ゼフィラは、いつものように自信満々な笑みを浮かべた。しかし、その瞳の奥には、どこか優しい光が宿っているように感じられた。
その後も、ゼフィラは、ヴァローナの鎧の汚れを魔法で綺麗にしたり、セレスティのために、安眠効果のあるハーブをブレンドしてあげたり、そして、フィリップの無骨な作業着に、さりげなく美しい刺繍を施そうとして(フィリップには全力で拒否されていたが)、仲間たちに対して、彼女なりの気遣いを見せていた。
それは、普段の奔放で掴みどころのない彼女からは、少し意外な一面だった。しかし、よく考えてみれば、彼女は、いつも私たちのムードメーカーであり、そして、そのエンカレッジ能力で、私たちの心を癒し、支えてくれていたのだ。
「(ゼフィラさんって、ただの美意識過剰なナルシストかと思ってたけど、実は、すごく仲間思いで、優しい人なのかもしれないな……。まあ、それを素直に表現するのが、ちょっと苦手なだけなのかも……)」
この日のゼフィラの行動は、私に、彼女の新たな魅力を発見させてくれるものとなった。そして、それは、過酷な旅の中で、互いを理解し、支え合うことの大切さを、改めて教えてくれる、温かい時間でもあった。




