コミット 178:『フィリップ工房、再始動!「魔導演算ユニット」のさらなる可能性を求めて!』
フィリップの提案通り、クロノスの森の脅威に対抗すべく、私たちは数ヶ月をかけて専用装備の開発に取り組んでいた。彼の工房もまた、新たな活気に満ち溢れていた。それは、単に新しい仲間が増えたというだけでなく、彼自身が「記憶デバイス」――今や「魔導演算ユニット」と呼ぶべきその革新的な魔道具の、さらなる可能性を追求し始めたからだった。
「ニーナ君。我々が開発したこの魔導演算ユニットだが、まだ改良の余地は多く残されている。特に、その応用範囲については、もっと広げられるはずだ。」
フィリップは、工房の作業台に、最新型の魔導演算ユニットの設計図を広げながら、真剣な表情で私に語りかけた。彼のその瞳には、もはや以前のような頑なさはなく、代わりに、純粋な探究心と、そして創造への情熱が燃え盛っている。
「確かにそうですね、フィリップさん。今のユニットは、主に私の論理魔導の実行や、フィリップさんのライフルの制御に使われていますけど、もっと色々なことに応用できるはずです。例えば……」
私は、前世のコンピュータ技術の知識を総動員しながら、魔導演算ユニットの新たな活用法について、次々とアイデアを提案していく。
「例えば、セレスティさんの研究支援とかどうでしょう?大量の文献データや、魔物の生態記録なんかをユニットに保存しておけば、必要な情報を瞬時に検索したり、あるいは、未知のパターンを分析したりすることも可能になるかもしれません。それから、ヴァローナさんの戦闘にも役立つはずです。過去の戦闘データを記録・分析して、より効率的な戦術を編み出したり、あるいは、魔物の特定の動きを予測したりすることも……」
私のその言葉に、フィリップは、目を輝かせながら頷いた。
「ほう……それは面白い発想だ。確かに、このユニットの素早い計算能力と、多くの情報を蓄えられる仕組みを活用すれば、これまで不可能だったような、複雑な情報の整理や、高度な状況判断の手助けも、現実のものとなるかもしれん。よし、早速、そのための特別な接続口や、それぞれの目的に合わせた動きをさせるための仕組みの開発に取り掛かってみよう」
フィリップは、まるで新しい玩具を与えられた子供のように、生き生きとした表情で、新たな開発作業へと没頭し始めた。それは、彼が、自分の技術が、誰かの役に立ち、そして世界の発展に貢献できるという喜びを、改めて実感しているかのようだった。
工房の雰囲気も、以前とは比較にならないほど明るく、そして活気に満ちている。ゼフィラが持ち込んだ美しい調度品や、柔らかな間接照明が、工房全体を洗練された空間へと演出し、そして何よりも、そこに集う私たち五人の間には、共通の目標に向かって協力し合う、温かい連帯感が生まれていた。
時折、フィリップは、私が口にする「システム」や「インターフェース」といった言葉の具体的な魔道具としての構造を熱心に聞き、その本質的な意味合いを的確に理解し、それを魔道具の設計へと巧みに落とし込んでいく。その姿は、まさに「伝統と革新の融合」を体現しているかのようだった。
このフィリップ工房の再始動は、単に新しい魔道具を開発するというだけでなく、私たちのパーティ全体の能力を底上げし、そして、エデンへの道のりをより確かなものにするための、重要なステップとなる。そして、それは、フィリップ自身が、真の「技術革新の先駆者」としての道を、力強く歩み始めたことの証でもあった。




