コミット 172:『「ありがとう、ニーナ君!君のおかげで、俺は再び創る喜びを知った!」フィリップ、最高の笑顔!?』
ついに完成した、高性能かつコンパクトな「魔導演算ユニット」。それは、ニーナの論理魔導の能力を飛躍的に向上させ、そして、自律型魔道具誕生への道を切り開く、画期的な発明だった。
その完成を祝して、ニーナたちは、フィリップの工房で、ささやかな祝宴を開いていた。ヴァローナが腕を振るった肉料理中心の豪勢な食事が並び、セレスティが珍しい薬草で作ったお茶が振る舞われ、そしてゼフィラは、どこからともなく持ち出してきた年代物のワインで、場を盛り上げている。
主役であるフィリップは、最初は戸惑っていたものの、仲間たちの温かい祝福と、そして何よりも、自分の手で生み出した革新的なデバイスが、目の前でニーナによって生き生きと活用されている姿を見て、これまでにないほどの幸福感と達成感に包まれていた。
「(まさか、私が、こんなにも晴れやかな気持ちで、自分の作品の完成を祝う日が来るなどとはな……これも全て、あの風変わりなダークエルフの小娘……いや、ニーナ君と出会ったおかげか……)」
フィリップは、ワイングラスを片手に、感慨深げにニーナを見つめた。彼女は、完成したばかりの魔導演算ユニットを、自分のエレメンタル・ガードナーに接続し、様々な論理魔導のテストを、目を輝かせながら行っている。その姿は、まさに「水を得た魚」のようであり、彼女の才能が、この新しいデバイスによって、さらに大きく開花しようとしているのが、誰の目にも明らかだった。
やがて、フィリップは、意を決したように立ち上がり、ニーナの前に進み出た。そして、少し照れくさそうに、しかし、心の底からの感謝を込めて、こう言った。
「……ニーナ君。君に、礼を言わせてくれ。君と出会い、そして、君のその奇抜な発想と、途方もない目標に触れたおかげで、私は、自分が長年失いかけていた、大切なものを取り戻すことができた。それは、新しいものを創り出すことへの純粋な喜びであり、そして、自分の技術が、まだ誰かの役に立てるのかもしれないという、希望だ」
フィリップのその言葉には、彼が自身の過去の経験からくる頑なさや、新しいものへの抵抗感を完全に乗り越え、他者との協調性や柔軟性といった新たな側面を開花させたことの証が、確かに込められていた。彼の表情は、これまでのどの時よりも晴れやかで、そこには、真の創造者としての自信と、そして仲間への感謝の念が、溢れんばかりに満ちていた。
「フィリップさん……」私は、フィリップのその心からの言葉に、胸が熱くなるのを感じた。
「ありがとう、ニーナ君。君は、私の凝り固まっていた魂を、見事に修正してくれたようだ。これからは、私も、過去に囚われることなく、君たちと共に、新しい未来を創り上げていきたいと、そう思っている」
フィリップは、そう言うと、これまでに一度も見せたことのないような、最高の笑顔を、ニーナに向けた。その笑顔は、まるで少年のように純粋で、そして、彼の職人としての魂が、完全に解放されたことを物語っているかのようだった。
この瞬間、ニーナとフィリップの間には、師弟でもなく、単なる協力者でもない、互いの才能を認め合い、そして共に未来を切り開いていく、かけがえのない「仲間」としての、強い絆が、確かに結ばれたのだった。




