コミット 168:『記憶デバイスの量産化計画!?フィリップ工房、まさかの事業拡大の予感!』
フィリップが過去のトラウマから解放され、ニーナとの間に確かな信頼関係が築かれたことで、記憶デバイスの開発は、さらに加速していくことになった。そして、私は、この革新的なデバイスを、自分だけでなく、もっと多くの人々に役立ててもらいたいと考えるようになっていた。
「ねえ、フィリップさん。この記憶デバイス、本当に素晴らしいじゃないですか。これって、私だけが使うんじゃなくて、もっとたくさんの魔法使いの人たちが使えるようになったら、この世界の魔法技術、めちゃくちゃ進歩すると思うんですよね!」
ニーナのその提案に、フィリップは、少し驚いたような顔をしたが、すぐに真剣な表情で頷いた。
「……確かに、そうかもしれんな。このデバイスが普及すれば、これまで一部の才能ある者しか扱えなかった高度な魔法も、訓練次第では、多くの者が扱えるようになる可能性がある。それは、魔法の民主化とでも言うべき、大きな変革をもたらすかもしれん」
「でしょでしょ!だから、この記憶デバイス、まずは少しずつでもいいから、他の人にも提供できるようにしませんか?フィリップさんのこの工房を、そのための小さな拠点にするんです!いずれは、もっと大きなことができるようになるかもしれないし……!」
私は、目を輝かせながら、ささやかながらも夢のある計画を語る。いきなり「フィリップ・アウロス・イノベーションズ」なんて大風呂敷を広げるのはまだ早いだろうが、この技術の可能性を広げたいという気持ちは本物だった。
フィリップは、その提案に、最初は戸惑っていたものの、次第にその可能性に惹かれていくのを感じていた。
「(量産化、か。確かに、私のこの技術が、世に広まり、多くの人々の役に立つというのなら、それもまた、職人冥利に尽きるというものかもしれん……。だが、そのためには、安定した生産体制の確保、品質管理、そして、何よりも、この複雑なデバイスを製造できるだけの、信頼できる協力者が必要になる。それは、容易なことではないぞ……)」
フィリップが、現実的な課題について考え込んでいると、ゼフィラが、いつものように、面白そうに口を挟んできた。
「あらあら、ニーナちゃん、また何か面白いこと考えてるのねぇ。でも、フィリップちゃん一人じゃ、いくら天才でも、そんなこと、手が回らないんじゃないかしら?もっと、こう……優秀な仲間とか、頼れる協力者とかが、必要になってくるわよぉ?」
ゼフィラのその言葉は、的を射ていた。たとえ小規模であっても、記憶デバイスを他の人に提供するとなれば、フィリップの技術力だけでは不十分であり、組織的な運営や、ある程度の商業的な視点も必要になるだろう。
ヴァローナも、珍しくその話に興味を示した。「……ふむ。もし、その記憶デバイスが、我がオーレリア王国の騎士団に正式採用されるようなことになれば、国防力の強化にも繋がり、ひいては、民の平和を守ることにも貢献できるかもしれんな。まずは試作品をいくつか提供し、その有効性を検証してみる価値はあるだろう」
セレスティもまた、興奮した面持ちで言った。「そ、そんな素晴らしい魔道具が、世界中に広まるなんて……!それは、まるで、古代の失われた叡智が、現代に蘇るようなものですわ!私も、そのお手伝いができるなら、何でも協力させていただきます!」
仲間たちのその前向きな反応に、フィリップの心も、大きく動き始めていた。彼は、これまで、孤高の研究者として、一人で黙々と作業を続けてきた。しかし、今は、信頼できる仲間たちがいる。そして、自分の技術が、世界をより良くする可能性があるのだとしたら……。
「……分かった。考えてみよう。この記憶デバイスを、まずは少数でも、他の必要とする人々に提供することについて。だが、そのためには、お前たちの力も、必要になるだろう。手伝ってくれるか?」
フィリップのその言葉に、ニーナたちは、満面の笑みで頷いた。
この瞬間、フィリップ・アウロスの小さな工房は、世界の魔法技術の未来を左右するかもしれない、小さな、しかし確かな一歩を踏み出す可能性を秘め始めたのだ。それは、彼にとって、そしてニーナたちにとっても、予想だにしなかった、大きな挑戦の始まりを意味していた。




