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ギャルSEの異世界デバッグ!~社畜SEが美少女ギャルエルフに転生して、前世の知識とギャルな見た目で最強の魔法使いに成り上がって世界を救う~  作者: AKINA
フィーチャー5:『天才職人と「ハードウェアデバッグ」!~モニカ誕生へのプレリュード~』

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160/162

コミット 160:『「新しい素材、新しい技法……この探求心、忘れていた……!」フィリップ、創造の喜びに目覚める。』

ヴァローナによる生活指導(という名の強制介入)と、セレスティの栄養学的なサポート、そしてニーナとの技術的な議論を通じて、フィリップ・アウロスは、少しずつではあるが、その心境に変化を見せ始めていた。彼の工房は、以前のような雑然とした雰囲気から、少しずつ整理整頓され、そして何よりも、彼自身の表情に、以前にはなかった穏やかさや、前向きな光が宿り始めていた。


そして、その変化は、彼の研究にも、明確な形で現れ始めていた。ニーナが提案した「記憶デバイス」の小型化と、より洗練されたデザインの実現という、一見無茶振りとも思える要求に応えるため、フィリップは、これまで試したことのない、新しい素材や、革新的な加工技術に、果敢に挑戦し始めたのだ。


「(ニーナの言う通りなら……従来の魔石の組み合わせだけでは、あの小娘が要求するような、手のひらに収まる記憶デバイスなど、到底実現できん。何か、全く新しいやり方が必要だ……)」


フィリップは、古代の文献を読み漁り、あるいは、他の職人たちが見向きもしないような、特殊な性質を持つ希少な鉱石を取り寄せ、それらを組み合わせることで、新たな可能性を模索し始めた。それは、失敗の連続だった。新しい素材は、従来の加工技術では上手く扱えず、革新的な技法は、安定した結果を生み出すまでに、膨大な時間と試行錯誤を要した。


しかし、その過程で、フィリップは、自分が長年忘れていた、ある大切な感情を、再び取り戻しつつあった。それは、「創り出すこと」への純粋な喜びと、未知なるものへの飽くなき探究心だった。


かつての彼は、偉大な父親の影に怯え、その技術を超えることだけを目標とし、どこか追い詰められたように研究に没頭していた。しかし、ニーナという異質な才能との出会いと、彼女が提示する未来のビジョンは、フィリップに、もっと自由で、もっと創造的なアプローチがあることを気づかせたのだ。彼の職人としての固定観念や、新しいことへの抵抗感は、少しずつ薄れ始めていた。


「(この感覚……まるで、子供の頃、初めて魔石に触れ、その神秘的な輝きに心を奪われた、あの時のようだ……。失敗を恐れず、ただ純粋に、何か新しいものを生み出したいという、この衝動……。私は、いつの間にか、こんなにも大切なものを、見失っていたのかもしれんな……)」


フィリップが、新しい種類の魔石を、これまでにない方法で加工しようと試みている時、彼の指先から放たれる魔力の光が、徐々に多彩な色と、そして生き生きとした輝きを帯び始めているのに、ニーナは気づいた。それは、彼の職人としての魂が、再び燃え上がり、新たな創造のステージへと足を踏み入れたことの証のようだった。


ニーナは、そんなフィリップの姿を、目を輝かせながら見守っていた。彼が生み出そうとしているのは、単なる「記憶デバイス」ではない。それは、従来の魔導回路を魔力の流れを制御する中心的な役割(CPUのようなもの)とし、魔石の魔力を溜め込む性質を一時的な魔力保持領域メモリのようなものとして活用し、そして、これから生み出されるであろう小型化された記憶デバイスを、複雑な魔法処理を速めるための特別な回路アクセラレータのようなものと、多くの魔法パターンを蓄えておく場所(不揮発性記憶領域のようなもの)として機能させる、全く新しい概念の、汎用的かつ高度な魔導演算ユニットの基礎となるものだった。


この試行錯誤の期間は、フィリップにとって、過去のトラウマから解放され、真の創造者としての喜びを取り戻すための、重要なプロセスとなる。そして、それは、ニーナが夢見る自律型魔道具「モニカ」の誕生へと繋がる、確かな一歩でもあった。


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