コミット 153:『AI搭載自律魔法デバイス構想プレゼン!「私の相棒(バディ)、創ってほしいんだ!」』
フィリップ・アウロスの頑なな態度は、私の予想を遥かに超えるものだった。伝統を重んじるあまり、新しい技術や発想を「邪道」と一蹴し、私の論理魔導や「記憶デバイス」の構想にも、全く耳を貸そうとしない。
「(くっそー、どうすれば、この偏屈職人の心を動かせるんだ……?言葉だけじゃダメだ。もっと、こう……彼の創造意欲を刺激するような、具体的なビジョンを見せないと……!)」
私は、一計を案じた。それは、私が密かに構想している、AI搭載型の自律型魔道具――いずれ「モニカ」と名付けることになる、私の最高の相棒の設計思想を、フィリップにプレゼンテーションすることだった。
「フィリップさん!少しだけ、私の夢物語に付き合ってもらえませんか?」
私は、そう言うと、以前セレスティの研究補助のために作った、魔石の内部構造を可視化できる特殊な解析装置を取り出した。そして、その装置に設計図をイメージしながら魔力を込め、論理魔導を起動させ、工房の空間に、青白い光の線で、私が思い描く自律型魔道具の設計図を、立体的に投影し始めたのだ。
それは、まだ荒削りなアイデアスケッチのようなものだったが、そこには、術者の思考を理解し、戦術分析を行い、状況に応じて最適な魔法を選択・実行するという、まさに「万能の相棒」と呼ぶにふさわしい機能が、詳細に記述されていた。その中核となるのは、術者の思考パターンや魔法のロジックを学習・記憶し、自律的に判断を下すための、高度な「エキスパートシステム」だった。
「これは……!?」
フィリップは、目の前に展開された、光の設計図に、思わず息を呑んだ。それは、彼がこれまでに見たこともない、あまりにも斬新で、そして複雑な構造を持っていた。
「これは、私が考えている、未来の魔道具の形です。術者の意志と完全に同調し、まるで自分の分身のように、あるいは、最高の相棒のように、共に戦い、共に成長していく……そんな、夢のようなデバイスです。でも、これを実現するためには、どうしても、術者の思考や、複雑な魔法のロジックを、正確に記録し、そして高速に処理できる『記憶デバイス』が不可欠なんです!」
私の言葉と共に、空間に投影された設計図の中心部分が、一際強く輝き始めた。それは、まさに「記憶デバイス」が搭載されるべき場所を示していた。
「フィリップさん、あなたのその卓越した魔石加工技術と、私の論理魔導を組み合わせれば、きっと、この夢のデバイスを、現実にすることができると、私は信じています!どうか、私に、あなたの力を貸してください!私の最高の相棒を、創ってほしいんです!」
私の熱のこもった訴えと、目の前に広がる革新的なデバイスの構想は、フィリップの固く閉ざされた心に、確実に揺さぶりをかけていた。彼の瞳には、これまでの猜疑心とは異なる、技術者としての純粋な好奇心と、そして、どこか挑戦的な光が宿り始めていた。
「(よし……!少しは、響いたみたいだな……!あとは、もう一押し……!)」
私は、フィリップの反応に、確かな手応えを感じていた。このプレゼンテーションが、彼との共同開発への、大きな一歩となることを願って。




