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『ギャルエルフ』になった社畜SEの俺、転生先が『バグだらけの世界』だったので『デバッグ』することになりました!――ギャルSEの異世界デバッグ!  作者: AKINA
フィーチャー1:『異世界転生、ギャル爆誕!~SEの常識は異世界の非常識!?~』

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コミット 15: 『薪割りの最適化?いや、生活魔法のアルゴリズム改善提案なんですけど!』

子供たちとの交流で少しだけリフレッシュした私は、再び論理魔導(ロジカルマジック)の改良と、村の生活インフラの「デバッグ」に取り組み始めていた。大きな町への旅立ちの日は近い。それまでに、少しでも自分のスキルを上げておきたいし、世話になったこの村に何か恩返しができれば、という気持ちもあった。


そんな時、私が目をつけたのは、村の男たちが毎日行っている薪割り作業だった。


彼らは、村の共有林から切り出してきた丸太を、大きな斧で力任せに叩き割っている。それは見るからに重労働で、効率も悪そうだった。斧を振り下ろす場所が悪ければ、丸太はなかなか割れず、何度も何度も叩きつけなければならない。


「(あの薪割り……もっと楽にできないかな? 例えば、丸太の内部で一番弱いところを狙って、ピンポイントで壊すとか……)」


私のSE脳が、またしても最適化のアルゴリズムを検索し始める。そうだ、衝撃波だ。魔石に魔力を込めて、それを指向性の高い衝撃波に変換し、丸太の繊維の最も弱い一点に集中させる。そうすれば、最小限の力で、効率的に薪を割ることができるのではないか?


早速、私は手頃な薪割り用の斧と、頑丈そうな魔石(また子供たちから譲り受けたものだ)を用意し、実験に取り掛かった。


斧の刃の近くに魔石を固定し、そこに意識を集中して魔力を流し込む。イメージするのは、薪の内部構造をスキャンし、最も破壊に適した「クラックポイント」を特定する処理。そして、その一点に向けて、魔力で生成した極小の衝撃波を叩き込むアルゴリズム。


「(薪全体をスキャンして、弱点を見つける。見つけたら、魔石の魔力を衝撃波に変えて、そこにビシッとぶつける……って、こんな複雑な作業、今の俺にちゃんとできるかな……?)」


内心で少し不安になりながらも、私は斧を構え、目の前の丸太に狙いを定める。


「えいっ!」


気合と共に斧を振り下ろす。と同時に、魔石に込めた「思考コマンド」が発動するイメージ。


しかし、丸太はびくともしない。魔石から放たれたはずの衝撃波は、まるで処理が途中で中断されたかのように途絶え、微かな熱として消えていく。


「くっ……! これって、魔法の仕組みそのものに問題があるのかな……? それとも、それぞれの作業がうまく繋がってないのかな……?」


私は一度斧を置くと、深く息を吐いた。頭の中で、さっき実行した「思考コマンド」のロジックを最初から見直す。


薪の内部構造をスキャンして弱点を見つける「スキャン処理」。見つけた弱点に衝撃波を生成・照射する「アタック処理」。この二つの処理の連携がスムーズじゃなかった。特に「衝撃波の生成」の部分だ。ただ「衝撃波」と漠然とイメージするだけでは、この世界の魔力は思い通りに動いてくれない。波の形や強さ、当てるタイミングといった要素を、もっと論理的なフローとして明確化しないとダメなんだ。


「(よし、次だ。『衝撃波』の動きを、もっと細かく手順として明確にしよう。具体的に、魔力をどれくらいの力で、どこに、いつ、どれくらいの速さでぶつけるか、みたいな、その作業の筋道をきっちりイメージするんだ。まるで、緻密なプログラムの設計図を描くみたいに……!)」


私はもう一度、より精密な「思考コマンド」を組み立てる。脳内で魔力のフローチャートを描き、各処理ブロックに具体的な指示を書き込んでいく。魔石を握り直し、斧の刃の近く、一点に集中して魔力を流し込む。今度は、魔力がスムーズに、そして論理的な経路を辿って流れていくのが、頭の中で鮮明にイメージできた。


「(今度こそ、仕組みは完璧……! いける……この作業の連携なら、絶対に途中で止まったりしないはず!)」


再び斧を構え、目の前の丸太に狙いを定める。


「ふんっ!」


先ほどとは違う、完全に自分の思い通りに動くかのような、淀みのない手応えが手に伝わる。そして、耳慣れない、しかし心地よい「パカン!」という乾いた、そして完璧にタイミングの合ったような音が響いた。


驚くほど軽い手応えと共に、丸太は綺麗に真っ二つに割れた。断面は、まるで鋭利な刃物で切り裂いたかのように滑らかだ。


「おお……! やった、成功だ!」


私は思わず声を上げた。周囲で薪割りをしていた村の男たちが、何事かとこちらを見ている。


「ニーナちゃん、今のは何だ? 妙に簡単に割れたようだが……」


一人の男が、訝しげに尋ねてきた。私は、得意げに説明する。


「えっとですね、この魔石にちょっとした魔法をかけて、斧が丸太の一番割りやすいところに当たるようにしたんです。いわば、薪割りのアルゴリズムを良くする提案、みたいな?」


「まきわり……あるごりずむ……?」


村の男たちは、私の言葉の意味が全く分からないといった顔で、首を傾げている。まあ、そうだろう。この世界の住人に、アルゴリズムなんて言っても通じるわけがない。


「その……つまり、魔法でちょっと手助けした、ってことです」


私が言い直すと、男たちは「ふーん、お嬢ちゃんの魔法は変わってるねぇ」と、やはりどこか腑に落ちないといった様子だった。彼らにとっては、魔法はもっと派手で、分かりやすい力なのだろう。こんな地味な「効率化」は、魔法の無駄遣いにしか見えないのかもしれない。


「(まあ、いいさ。理解されなくても、結果が全てだ)」


私は内心でそう思いながら、次々と薪を割っていく。論理魔導(ロジカルマジック)のおかげで、以前の半分以下の労力で、倍以上の薪を生産できるようになった。


その時、ふと自分の手に違和感を覚えた。薪を割る際、思った以上の力で斧の柄を握りしめてしまっていたのだが、魔石も、そして私の手も、全くの無傷なのだ。むしろ、いつもより力強く斧を握れているような感覚すらある。


「(あれ……? 俺の手、こんなに力強かったか……? 魔石も、普通の石ころのはずなのに、びくともしない……)」


以前感じた、異常な魔力回復速度。そして、この妙な力強さと頑丈さ。このダークエルフの身体には、やはり何か秘密がありそうだ。Fカップの胸が目くらましになっているだけで、実はフィジカル面でも相当な「ハイスペック」なのかもしれない。


「(……まあ、今は深く考えても仕方ないか。この力も、上手く使えば論理魔導(ロジカルマジック)の助けになるかもしれないしな)」


私は、そんなことを考えながら、黙々と薪割り作業を続けるのだった。村人たちからの「他人の評価」は相変わらず気になるが 、それでも、自分の力が誰かの役に立っているという実感は、俺にとって大きな支えになっていた。


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