コミット 144:『ゼフィラのエンカレッジ強化訓練!仲間を「信じる力」が鍵!?』
魔石加工都市ジオフォートへの旅の途中、ニーナたちは、以前にも増して厳しい魔物の襲撃や、予期せぬトラブルに遭遇することが多くなっていた。世界のシステム全体の不具合が、徐々にその影響範囲を広げているのかもしれない。そんな状況に対応するため、パーティ全体の戦力向上は急務だった。
特にゼフィラは、グリフォンとの戦いでその片鱗を見せた「鼓舞」の能力を、さらに高めようと、ニーナたちに協力を仰ぎ、自主的な訓練に励んでいた。
彼女のエンカレッジは、仲間の精神力を高め、潜在能力を引き出すという、極めて強力な支援能力だったが、まだ不安定で、効果の持続時間も短く、そして何よりも、ゼフィラ自身の精神的な負担が大きいという課題があった。
「(私のこの力……もっと上手くコントロールできるようになれば、きっと、ニーナちゃんたちの大きな助けになれるはず……。でも、どうすれば……?ただ魔力を込めるだけじゃ、あの時のような効果は出ないのよね……)」
ゼフィラが一人で悩んでいると、ニーナが声をかけてきた。
「ゼフィラさん、ちょっといい?あんたのあの『エンカレッジ』、すごい可能性を秘めてると思うんだけど、なんか、まだ上手く力を引き出せてない感じがするんだよね。もしかしたら、コツがあるんじゃないかと思ってさ」
「コツ……?」
「うん。あの力ってさ、多分、ただ魔力を流し込めばいいってもんじゃないと思うんだ。もっとこう……仲間を『信じる力』みたいなものが、重要なんじゃないかなって。あのグリフォン戦の時、ゼフィラさん、私たちのこと、心の底から信じてくれてたでしょ?あの時の気持ちが、鍵だと思うんだ」
ニーナのその言葉に、ゼフィラはハッとした。
「(仲間を……信じる力……?確かに、これまでの私は、心のどこかで、他人を完全に信じ切ることができていなかったのかもしれない。だから、私の力も、どこか中途半端で、不安定だったのかも……)」
「……ニーナちゃんの言う通りかもしれないわね。私、まだ、本当の意味で、誰かを信じるってことが、よく分かってないのかもしれない」
ゼフィラは、少し寂しげに微笑んだ。
「だったら、訓練あるのみっしょ!私たちが、あんたの『信頼』の対象になってあげるからさ!思いっきり、私たちを信じて、その力をぶつけてみてよ!」
ニーナの提案で、ゼフィラのエンカレッジ強化訓練が始まった。ヴァローナとセレスティも、その訓練に協力する。
訓練は、まず、ゼフィラが、ニーナ、ヴァローナ、セレスティのそれぞれに対して、個別にエンカレッジを試みることから始まった。彼女は、相手の瞳を真っ直ぐに見つめ、その人の長所や、可能性を心から信じ、そして、それを言葉と魔力に乗せて伝えようと努力する。
「ヴァローナちゃん!あなたのその剣技と、揺るぎない信念は、誰よりも強く、そして美しいわ!だから、もっと自信を持って、その力を解放して!」
「セレスティちゃん!あなたのその知識と、優しい心は、世界を救うための、かけがえのない宝物よ!だから、恐れないで、その力を、もっともっとみんなのために使ってあげて!」
「ニーナちゃん!あなたのその知恵と、どんな困難にも立ち向かう勇気は、私たちみんなの希望よ!だから、絶対に諦めないで、その力で、未来を切り開いて!」
ゼフィラのその言葉は、最初はぎこちなく、そして魔力の流れも不安定だったが、訓練を重ねるうちに、徐々に力強さを増し、そして、その言葉に込められた「信頼」の想いが、ニーナたちの心に、確かに届き始めた。
そして、ニーナたちもまた、ゼフィラのその想いに応えるように、彼女を心から信じ、その力を受け入れようと努めた。
すると、不思議なことに、ゼフィラのエンカレッジの効果は、以前とは比較にならないほど増大し、そして安定していったのだ。彼女から放たれるオーラは、より清らかで、力強いものへと変わり、それを受けたニーナたちの身体には、実際に力がみなぎってくるのが感じられた。
「(すごい……!これが、本当の『エンカレッジ』……!仲間を信じる力が、こんなにも大きなパワーを生み出すなんて……!)」
ゼフィラ自身も、その変化に驚きを隠せない。
この訓練を通じて、ゼフィラは、エンカレッジの能力を飛躍的に向上させることに成功した。それは、単なる技術的な進歩ではなく、彼女が「仲間を信じる」という、人間として最も大切な感情の一つを、真に理解し始めたことの証でもあった。
そして、ニーナたちもまた、ゼフィラのその成長を喜び、彼女への信頼をより一層深めるのだった。この「信じる力」こそが、彼女たちのパーティを、さらに強固なものへと進化させていくのだろう。