コミット 143: 『「クロノスの森《エデン》への道は、古代の試練が守護している……」謎の老婆からの警告!』
グリーンウィロウ村での心温まる祝宴を終え、ニーナたちは、再び魔石加工都市ジオフォートを目指す旅を再開した。その道中、一行は、山間の小さな集落に立ち寄った。そこは、古くはクロノスの森の麓に住み、森の恵みと共に生きてきた人々が暮らす場所だった。
ニーナたちは、その集落で、エデンに関する情報を得るために、最も年長であるという老婆を訪ねた。老婆は、深い皺が刻まれた顔に、全てを見透かすような鋭い瞳を持ち、どこか神秘的な雰囲気を漂わせている。
ニーナたちが、エデンについて尋ねると、老婆は、しばらくの間、意味ありげな沈黙を守っていたが、やがて、重々しい口調で語り始めた。
「……クロノスの森……エデン……か。お前さんたち、よほど命が惜しくないと見えるな。あの森は、生半可な覚悟で足を踏み入れて良い場所ではないぞ」
老婆の瞳には、深い知恵と、そしてどこか警告の色が浮かんでいた。
「クロノスの森の最奥、エデンへと至る道は、ただ険しいだけではない。そこには、古代の強力な『試練』が、いくつも待ち受けている。それは、力だけでは決して乗り越えられない、知恵と、勇気と、そして何よりも、仲間との絆が試される、過酷な試練じゃ……」
「古代の試練……ですか?」
セレスティが、緊張した面持ちで尋ねる。
「うむ。エデンは、かつてこの世界を創造したと言われる『古き者たち』が、その叡智と力を封じ込めた聖域。じゃから、そこに到達できるのは、真に資格を持つ者だけなのじゃ。多くの冒険者たちが、エデンを目指してクロノスの森に挑んだが、その試練を乗り越えられず、命を落としたか、あるいは、二度と戻ってこなかった……」
老婆の話は、エデンへの道のりが、想像以上に困難であることを示唆していた。
そして、老婆は、さらに不穏な言葉を付け加えた。
「……そしてな、クロノスの森の近くには、かつて、そのエデンを守護し、そして世界の調和を司るための、強大な力を持つ『戒律の教会』と呼ばれる組織があったそうじゃ。じゃが、その教会も、いつしかその力を失い、今ではもう、その存在を知る者もほとんどおらん……ただ、その教会の廃墟には、今もなお、何か不吉なものが蠢いているという噂もある……。森の近くには、かつて強大な力を持つ『戒律の教会』があったが、今はもう……その力は、正しく使われておらんのかもしれんのう……」
老婆はそう言って言葉を濁した。
「戒律の教会……?」
ニーナは、その名前に、どこか引っかかるものを感じた。それは、アウレア・シティで聞いた、聖光教会に関する不穏な噂とは、また異なる、もっと古く、そして根源的な何かを連想させる響きだった。
「(戒律の教会……エデンの守護者……そして、不吉なもの……か。これも、世界のシステム全体の不具合と、何か関係があるのかもしれないな。マークしておく必要がありそうだ)」
老婆からの警告と、謎めいた情報は、ニーナたちに、エデンへの挑戦が、単なる冒険ではなく、世界の運命を左右するかもしれない、重大な意味を持つことを、改めて認識させるものとなった。