コミット 14: 『子供たちの遊びを「最適化」!?SE的発想が意外に大人気!』
市場でのカルチャーショックから数日。私は相変わらず論理魔導の訓練に明け暮れていたが、たまには息抜きも必要だ。そんな時、格好の気晴らし相手となってくれるのが、村の子供たちだった。
あの日、原因不明の力(?)で子供たちに異常に懐かれて以来、彼らはやけに私に懐いていた。 私が広場に姿を見せると、どこからともなく集まってきて、「ニーナお姉ちゃん、遊ぼー!」と声をかけてくる。最初は戸惑ったが、彼らの屈託のない笑顔に接していると、不思議と心が和むのも事実だった。
その日、子供たちは広場で「石蹴りゲーム」に興じていた。地面に引かれた円の中に石を置き、それを足で蹴り出して、円の外に弾き出すという、ごく単純な遊びだ。だが、ルールも戦略性も曖昧で、ただ力任せに石を蹴り合っているだけに見えた。
「(うーん、この遊び、もっと面白くできるんじゃないかな?)」
またしても、私のSE魂が疼き出す。どんなシステムも、ユーザーエクスペリエンス(UX)が重要だ。このゲームの「ユーザー」である子供たちが、もっと楽しめるように「改良」を加えることはできないだろうか?
「ねえみんな、ちょっといい?」
私が声をかけると、子供たちはきょとんとした顔でこちらを見る。
「この石蹴りゲーム、もうちょっとルールを面白くしてみない? 例えばさ、蹴る回数に制限を設けたり、円の中に特定の場所を作って、そこに石を止められたら高得点、とか」
私は、前世で少しだけかじったことのあるカーリングやビリヤードのルールを参考に、いくつかの新しいルールを提案してみた。さらに、フィールドとなる円の形を変えたり、障害物を置いたりして、戦略性を高めることも提案した。
最初は戸惑っていた子供たちも、私の説明を聞いているうちに、次第に目を輝かせ始めた。
「なんだか難しそうだけど……面白そう!」
「やってみたい!」
私の提案は、意外にもすんなりと受け入れられた。早速、新しいルールとフィールドでゲームを開始すると、子供たちは以前よりもずっと熱中して遊び始めた。どこに石を蹴れば有利になるか、どうすれば相手の邪魔をできるか。それぞれが頭を使い、工夫を凝らしている。
「(ふふん、どんな遊びも、適切なルール設計とバランス調整が大事なんだよね。みんながもっと楽しんでくれるように、工夫しないとね)」
私は、子供たちの歓声を聞きながら、一人悦に入っていた。前世では、自分が設計したシステムがユーザーに受け入れられず、辛い思いをすることも多かった。だが、今、目の前の子供たちは、私の「改良」を心から楽しんでくれている。それは、何物にも代えがたい達成感だった。
「ニーナお姉ちゃん、すごい! この遊び、前よりずっと面白いよ!」
トビー少年が、汗を拭いながら興奮した様子で言った。他の子供たちも、口々に同意の声を上げる。その純粋な称賛の言葉は、私の心の奥に温かく響いた。
「(……ああ、やっぱり、誰かに喜んでもらえるのって、いいもんだな)」
あの時の不思議な魅力(?)のせいなのか、それとも私の提案が本当に彼らの心に響いたのか。それは分からない。だが、この瞬間、私は確かに子供たちと心を通わせることができたような気がした。
SEとしての知識や発想が、こんな形で異世界の子供たちを笑顔にできるなんて、思ってもみなかった。それは私にとって、新たな発見であり、大きな喜びでもあった。
もしかしたら、私の持つ「力」は、単に世界のバグを修正するだけでなく、誰かを幸せにするためにも使えるのかもしれない。そんなことを考えながら、私は子供たちの歓声に包まれていた。
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