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コミット 138:『森の脅威、グリフォン襲来!ゼフィラのエンカレッジ覚醒!?』

魔石加工都市ジオフォートへの旅の途中、ニーナたちは深い森の中を進んでいた。比較的安全と思われたその森も、世界のシステム全体の不具合の影響か、凶暴な魔物たちの活動が活発になっているようだった。魔獣とは、通常の動物と比較して多量の魔力をその身に宿し、その影響で特異な能力や高い戦闘能力を持つに至った生き物の総称である。多くは人里離れた場所に生息するが、世界の魔力流の乱れは、彼らの生息域や行動パターンにも影響を及ぼし、時に人里近くに出現して被害をもたらすこともあった。


「(なんだか、嫌な気配がするな…魔物の気配が、複数…しかも、かなり強力そうだ…)」


ニーナは、エレメンタル・ガードナーで周囲の魔力の乱れを感知し、警戒を強めた。


その時、森の木々を薙ぎ倒すような凄まじい羽音と共に、巨大な影が空から舞い降りてきた。それは、鷲の上半身と獅子の下半身を持つ、気高き魔獣「グリフォン」だった。しかも、一頭ではない。三頭のグリフォンが、鋭い爪と嘴を剥き出しにして、ニーナたちに襲い掛かってきたのだ。グリフォンは高ランクの魔獣に分類され、その高い知能と飛行能力、そして風を操る力は、多くの冒険者にとって脅威とされてきた。


「グリフォンだと!?しかも三頭も…!総員、戦闘態勢!」


ヴァローナが叫び、即座に剣を抜く。


セレスティは、恐怖に顔を引きつらせながらも、古代文献で読んだグリフォンの情報を必死に思い出そうとしていた。「グ、グリフォンは、非常に縄張り意識が強く、高度な飛行能力と、風の魔法を操る、と…!弱点は…確か…」


ゼフィラも、臨戦態勢を取りながら、その美しい顔をわずかに歪めた。「厄介な相手ね…空を飛ばれると、こちらの攻撃が届きにくいわ…」


戦闘開始!


グリフォンたちは、空からの急降下攻撃や、鋭い爪での薙ぎ払い、そして風の刃を放つなど、多彩な攻撃でニーナたちを翻弄する。ヴァローナは、その卓越した剣技で一体のグリフォンの攻撃を捌き、地上戦に持ち込もうとするが、残りの二頭が空から援護射撃を行い、なかなか有利な状況を作れない。


ニーナは、論理魔導(ロジカルマジック)で炎の矢を放ち、グリフォンの翼を狙うが、その素早い動きに翻弄され、決定打を与えられない。セレスティも、後方から補助魔法で援護しようとするが、恐怖と焦りから、なかなか魔法が安定しない。


「くっ…!このままじゃ、ジリ貧だ…!」


ニーナが歯噛みする。


その時、追い詰められた状況の中で、ゼフィラが何かを決意したように、目を閉じた。彼女の脳裏に蘇ったのは、以前、アルカンシェルで人々の負の感情を取り除き、心を落ち着かせた時の経験だった。


「(あの時…私は、人々の心に寄り添い、その痛みを和らげようとした…。そして、私の力が、少しだけ、良い方向に作用した…。もしかしたら、この力は、他人を操るためだけじゃなく…仲間を助けるためにも、使えるのかもしれない…!)」


ゼフィラは、目の前で必死に戦う仲間たちの姿を見つめ、心の底から、彼女たちを助けたい、勝利に導きたいと強く願った。その純粋な想いが、彼女の内に眠る天使の力を、新たな形で呼び覚ます。


「みんな…!私の声を聞いて…!恐れないで…自分を信じて…!あなたたちなら、絶対に勝てるわ…!」


ゼフィラのその声には、不思議な力が込められていた。それは、聞く者の心に勇気と自信を与え、精神力を高め、そして潜在能力を一時的に引き出す、「鼓舞エンカレッジ」とでも呼ぶべき力だった。この世界では、術者の意志や感情が魔力に大きく作用するため、仲間を勇気づけ、その意志力を高めることは、実質的にその能力を向上させる効果があるのだ。


ニーナ、ヴァローナ、セレスティは、ゼフィラのその声と、彼女から放たれる温かい光のオーラに包まれ、身体の奥底から力が湧き上がってくるのを感じた。恐怖や焦りは消え去り、代わりに、冷静な判断力と、勝利への確信が芽生えてくる。


「(すごい…!ゼフィラさんのこの力…身体が軽くなって、魔力の流れもスムーズになった気がする…!これなら、いける!)」


ゼフィラのエンカレッジによって、パーティ全体の戦闘能力が、明らかに向上した。ニーナのロジカルマジックは精度を増し、ヴァローナの剣技はさらに鋭さを増し、セレスティの魔法も安定して発動できるようになった。


そして、ついに、三人の連携攻撃が、一体のグリフォンの翼を捉え、地上へと叩き落とした。その隙を逃さず、ヴァローナが渾身の一撃を叩き込み、グリフォンを仕留める。残りの二頭も、強化されたニーナたちの連携の前に、次々と打ち破られていった。


激しい戦闘の後、ゼフィラは、大きな達成感と、そして仲間たちの役に立てたという喜びに包まれていた。


「やったわ…!私の力で、みんなを助けられた…!」


ニーナは、そんなゼフィラに駆け寄り、その肩を叩いた。「すごいじゃないか、ゼフィラさん!今の力、マジで半端なかったよ!あれが、あんたの新しい力なんだな!」


「ええ…!これからは、この力で、みんなを勝利に導いてあげるわ!」


ゼフィラは、自信に満ちた笑顔で答えた。


このグリフォンとの戦いは、ゼフィラにとって、エンカレッジという新たな能力に完全に目覚めるきっかけとなり、そして、パーティ全体の戦術の幅を大きく広げる、重要な転機となるのだった。


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