コミット 13: 『異世界の「常識」にカルチャーショック!ギャル、初めてのおつかいで混乱!?』
論理魔導の基礎訓練と並行して、私は少しずつ村の外の世界への準備も進めていた。いつまでもこの小さな村に厄介になっているわけにはいかない。もっと多くの情報を、そして論理魔導を発展させるための知識や素材を求めるなら、やはり大きな町へ行く必要がある。
そんなある日、マーサさんに頼まれて、私は初めて一人で村の小さな市場へおつかいに行くことになった。食料や日用品を売る露店が数軒並んでいるだけの、本当にささやかな市場だ。だが、それでも私にとっては、異世界での初めての「買い物」体験。少し緊張しながら、私は市場へと足を踏み入れた。
そこで私を待ち受けていたのは、想像以上のカルチャーショックだった。
まず、通貨。この村で使われているのは、手のひらサイズの銅貨と、それより少し大きな銀貨、そして稀に見かける金貨の三種類らしい。だが、それぞれの価値が全く分からない。マーサさんから預かった銅貨数枚で、一体何が買えるというのだろうか。
「(うーん、この野菜一つが銅貨一枚……って、これ、どう見てもゲームのバグったポリゴンモデルにしか見えないんだけど……。本当に食べられるのかな?)」
露店に並べられた野菜は、形も色も、私の知っているものとは微妙に違う。まるで、ローポリゴンで作られたゲームのアイテムのようだ。隣で売られている干し肉に至っては、何の動物の肉なのか、想像もつかない。
「(そしてこの干し肉、何のモンスター肉なんだろう!? まさかゴブリンとかじゃないよね……? いや、それはそれでちょっと興味あるけど……食べるのはちょっと遠慮したいな!)」
内心でツッコミを入れながら、私は恐る恐る店主に声をかける。
「あ、あの……これ、いくらですか……?」
私のぎこちない問いかけに、強面の店主は一瞬いぶかしげな顔をしたが、やがてニヤリと笑って値段を告げた。そのやり取り一つとっても、前世のコンビニでの買い物とは勝手が違いすぎる。
そして何より困ったのが、周囲からの視線だ。市場にいる村人たちのほとんどが、私のことをジロジロと見ている。特に、私の派手なギャルファッションは、この素朴な村では悪目立ちするらしく、好奇と、若干の警戒が入り混じった視線が絶え間なく突き刺さる。
「(やっぱり、この格好は浮くよなあ……。他人の評価が気になっちゃう……この致命的なバグ、どうにかならないかな……!)」
SEとしての合理的な思考は、「郷に入っては郷に従え」と囁く。だが、この身体に染み付いた(?)ギャルとしてのアイデンティティ(のようなもの)が、それを拒否する。結果、私は市場の中で、ひどく居心地の悪い思いをすることになった。
そんな中、市場の片隅で、一人の旅の行商人が奇妙なものを売っているのを見つけた。小さな瓶に入った、透明な液体。「奇跡の泉の聖水」と書かれた、怪しげな看板が立てられている。
「(うわ、出たよ、典型的なインチキ商品……。こんなもの買う奴いるのかな?)」
私が冷ややかに見ていると、一人の老婆がその行商人に近づき、有り金をはたいて聖水を買っていくのを目撃した。老婆は「これで孫の病気が治るかもしれん……」と涙ながらに語っている。
「(……プラシーボ効果かな、それとも……何か本当に効果があるのかな?)」
内心で分析しつつも、私はその光景から目が離せなかった。もし本当に効果があるとしたら、それは魔法の一種なのだろうか? それとも、この世界には、私の知らない「奇跡」を起こす力が存在するのだろうか?
ふと、以前村の老婆が話していたことを思い出した。「昔、大きな街の教会が流行り病を祈りで鎮めたことがあるらしい」。 あの時は聞き流していたが、もしかしたら、この世界の「信仰」や「祈り」には、何か特別な意味があるのかもしれない。
「(教会……か。大きな町に行ったら、そういう場所も調べてみる価値はあるかもしれないな)」
結局、私はマーサさんに頼まれた食料をなんとか買い揃え、フラフラになりながら村長の家へと戻った。たった数時間のおつかいだったが、精神的な疲労は、論理魔導の訓練数日分に匹敵するほどだった。
異世界の「常識」は、まだまだ私にとって未知の領域だらけだ。
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