コミット 122： 『ゼフィラの「聖地巡礼」の目的！失われた天使の遺物を探して？』
ゼフィラがニーナたちのパーティに同行するようになってから、彼女の行動には一つの奇妙なパターンがあることに、ニーナは気づいていた。それは、ゼフィラが、各地の古い教会や、聖地と呼ばれるような場所、そして「奇跡」や「聖遺物」の噂がある場所に、異常なほどの執着を見せることだった。以前オークヘイブンの酒場で聞いた「黒き翼の女が、何かを探している」という噂が、ニーナの脳裏をよぎる。
「ねぇ、ゼフィラさん。さっきから、あの古びた教会の周りをウロウロしてるけど、何か気になるものでもあるの？」
ある日、一行が立ち寄った郊外の小さな村で、ゼフィラが廃墟同然の古い教会の跡地を熱心に調べているのを見て、ニーナは直接尋ねてみることにした。
ゼフィラは、振り返ると、いつものように妖艶な笑みを浮かべて答えた。
「あら、ニーナちゃん、見てたの？うふふっ、ちょっとした趣味よ。天使の末裔として、ご先祖様の足跡を辿ったり、失われた聖遺物を探したりするのも、悪くないでしょ？」
「聖遺物……ねぇ。具体的に、何を探してるの？以前、情報屋から聞いたんだけど、黒い翼の女が、天使の遺物とか、聖なる力の源泉とかを探してるって話だったけど……それって、ゼフィラさんのこと？」
ゼフィラの表情が、一瞬だけ微かに曇ったように見えたが、すぐにいつもの笑顔に戻った。
「さあ、どうかしら？噂なんて、当てにならないものよぉ。でも、もし私が何かを探しているとしたら……それは、きっと、世界がもっと面白くなるような、素敵なものに決まっているわ」
ゼフィラは、そう言って意味深に微笑むだけで、具体的な目的を語ろうとはしなかった。しかし、その瞳の奥には、単なる趣味や好奇心だけではない、もっと切実で、そしてどこか追い詰められたような光が宿っているのを、ニーナは見逃さなかった。
「（この人、やっぱり何か隠してるな……聖遺物とか、聖なる力の源泉とか……もし、それがアウレア・シティで聞いた聖光教会のような、何か危うい力と結びついているのだとしたら……）」
ニーナは、ゼフィラが探しているものが、世界のシステムに、さらなる混乱をもたらす可能性があるのではないかという疑念を抱き始めていた。
「ゼフィラさん、もし、何か困ってることとか、誰かに言えないような悩みがあるなら、私でよかったら話を聞くよ？一人で抱え込んでると、ろくなことにならないって、SEの常識だから」
ニーナは、少しだけ踏み込んで、ゼフィラに語りかけた。それは、彼女を詮索するというよりは、純粋な心配から出た言葉だった。
ゼフィラは、ニーナのその言葉に、一瞬驚いたような顔をしたが、すぐにいつもの調子に戻り、ふわりとニーナの頬にキスをした。
「あら、ニーナちゃん、優しいのねぇ。でも、大丈夫よ。私は、そんなにヤワじゃないから。それに、もし本当に困った時は、ちゃんとあなたに助けを求めるわ。だから、今は、私のこの『聖地巡礼』に、もう少しだけ付き合ってちょうだいな？」
そう言って、ゼフィラは再び、廃墟の教会へと向き直り、何かを探すように、その周囲を探索し始めた。
ニーナは、それ以上追及することはできなかったが、ゼフィラのその行動の裏にある「目的」と、それが世界のシステムに与えるかもしれない影響について、深く考え込まずにはいられなかった。
この謎めいた天使の末裔は、果たして何を求め、どこへ向かおうとしているのだろうか。その答えは、まだ霧の中に隠されたままだ。
