コミット 121:『ゼフィラとの共同生活(?)。天使の気まぐれに振り回される日々!』
ゼフィラがニーナたちのパーティに強引に合流してからというもの、彼女たちのパーティは、良くも悪くも賑やかさを増していた。ゼフィラは、その天使のような(あるいは堕天使のような)美貌と、誰をも魅了するオーラを振りまきながら、自由気ままに行動し、ニーナたちを振り回し続ける。
早朝、まだ皆が寝静まっている時間に、どこからともなく美しい歌声が響き渡る。それはゼフィラの歌声で、聞く者を夢見心地にさせるが、いかんせん時間が早すぎる。
「ゼフィラさん、もうちょっと静かに……まだ夜明け前ですよ……」
ニーナが眠い目をこすりながら抗議すると、ゼフィラは悪戯っぽく微笑む。「あら、ごめんなさいねぇ。でも、美しい朝には、美しい歌が必要でしょ?」
またある時は、ニーナが大切にしまっていた市場で買ったばかりの新しい服を、ゼフィラが勝手に着て街を練り歩き、男性たちの視線を独り占めしているのを発見する。
「ちょっ!ゼフィラさん!それ、私の服!なんで勝手に着てるんですか!」
「あら、ニーナちゃん、ごめんなさーい♡ あまりにも可愛らしいデザインだったから、つい借りちゃったわ。でも、やっぱり私の方が似合ってるみたいねぇ、うふふっ」
食事の際も、ゼフィラは「天使の末裔たるもの、粗末なものは口にできないわ」と言い放ち、高級な食材やワインばかりを要求する。その度に、パーティの食費は跳ね上がり、ニーナは頭を抱えることになる。
「(この人、本当にマイペースすぎるだろ……!協調性とか、そういう概念、備わってないのか!?)」
しかし、そんな奔放な振る舞いの一方で、ゼフィラは、ふとした瞬間に、驚くほどの洞察力の鋭さや、仲間を気遣う優しさを見せることもあった。
例えば、ニーナが論理魔導の新しい魔道具の設計に行き詰まっていると、ゼフィラは、どこからともなく現れて、的確な助言を与える。
「ニーナちゃん、そこの魔力の流れ、もう少し滑らかにできるんじゃないかしら?そうすれば、余計な負荷も減らせるし、全体の効率も上がると思うわよ」
「え……?なんで、ゼフィラさんがそんなこと……」
「うふふっ、天使は、美しいものが好きなの。美しい魔力の流れも、その一つよぉ」
また、セレスティが人前で話すことに緊張して固まっていると、ゼフィラは、そっと彼女の背中を支え、優しい言葉をかける。
「大丈夫よ、セレスティちゃん。あなたの知識は、誰よりも素晴らしい宝物なんだから、もっと自信を持って。私がついているわ」
その言葉には、不思議な説得力があり、セレスティは少しだけ勇気づけられるのだった。
ゼフィラのその気まぐれで、掴みどころのない性格は、ニーナたちを困惑させることも多かったが、同時に、彼女の持つ不思議な魅力と、時折見せる優しさに、徐々に惹きつけられていくのも事実だった。ゼフィラは基本マイペースで人に合わせないので周りは振り回されるが、その行動の裏には、彼女なりの「美学」や、あるいは仲間に対する不器用な「配慮」が隠されているのかもしれないと、ニーナは感じ始めていた。
ニーナは、ゼフィラという複雑な「存在」を、少しずつ理解しようと努め始めていた。それは、一筋縄ではいかない、極めて難解なデバッグ作業になるだろうが、その先には、きっと、彼女の本当の姿が隠されているはずだと、ニーナは信じていた。




