コミット 12: 『論理魔導《ロジカルマジック》基礎訓練!魔力制御と「IF THEN ELSE」の壁!?』
簡易揚水装置の成功は、私に大きな自信を与えてくれた。自分の論理魔導が、単なる自己満足ではなく、実際に誰かの役に立つ可能性があることを証明できたのだから。しかし、同時に、より複雑で高度な魔法を実装するためには、今の私の魔力制御技術ではまだまだ力不足であることも痛感させられた。
「(揚水装置程度の単純なON/OFF、連続出力ならともかく……もっと複雑な条件分岐や、複数の魔石を連携させるような処理となると、今のままじゃ無理だな)」
例えば、特定の条件下でのみ発動する魔法。敵の攻撃を感知したら自動で防御壁を展開する、といった処理。「IF(もし敵が攻撃してきたら) THEN(防御壁を展開する) ELSE(何もしない)」といった、プログラミングにおける基本的な条件分岐。これを魔法で再現できれば、戦闘や危機回避の際に絶大な効果を発揮するはずだ。
私は再び村はずれの森に籠り、論理魔導の基礎訓練に励むことにした。今回のテーマは、ずばり「条件分岐の実装」だ。
手元には、いくつかの異なる性質を持つと思われる魔石(村の子供たちが面白がって集めてきてくれたガラクタ同然のものだが)を用意した。赤い石、青い石、緑の石。それぞれに、異なる種類の魔力を流し込み、その反応を試す。
「(まずは、この赤い石に『火の矢』を生成するロジックを、青い石には『水の盾』を生成するロジックをそれぞれイメージして……。そして、『もし俺の右手が動いたら火の矢を発射』、『もし左手が動いたら水の盾を展開』という条件で、魔力の流れをスイッチングする……!)」
言うは易し、行うは難し。頭の中で完璧な論理回路を描き、それに基づいて魔力を操作しようとするのだが、これが全くうまくいかない。魔力の流れが途中で混線したり、意図しない方の魔石が反応してしまったり。時には、両方の魔石が同時に中途半端に反応し、小さな爆発や水蒸気を発生させてしまう始末だ。
「くっ、思考と魔力の同期がこんなに難しいとは……! 頭の中の処理が追い付かない!」
額に汗を浮かべ、歯噛みする。前世では、複雑な並列処理も難なくこなしていたはずなのに、この身体では、たった二つの条件分岐すらまともに制御できない。
「(集中力が足りないのか? それとも、この身体の魔力伝導回路そのものに、まだ俺が気づいていない特性があるのか……?)」
焦りが募る。しかし、今は目の前の課題に集中するしかない。私は一度深呼吸をし、心を落ち着ける。そして、もう一度、今度はより精密に、より明確に、魔力の流れをイメージする。
「(IF、THEN、ELSE……。この三つの命令を、魔力の流れとして具現化するんだ……!)」
極限まで集中力を高めた、その瞬間。
私の脳裏に、いつもとは少し違う感覚が走った。それは、複雑な論理回路図のような思考のイメージと共に、もっと純粋な、「こうなってほしい」という強い「意志」の力のようなものが、直接魔力に作用するような、そんな不思議な感覚だった。
そして、次の瞬間。
私が右手を軽く振ると、赤い魔石から小さな火の玉が、確かに前方に射出された。そして、続けて左手をかざすと、青い魔石の表面に、薄い水の膜のようなものが一瞬だけ現れた。
「……! やった……のか!?」
まだ不完全で、威力も効果範囲も微々たるものだが、確かに「条件に応じた魔法の発動」が成功した。あの、純粋な意志の力のようなものが、何かきっかけになったのだろうか?
しかし、その不思議な感覚はすぐに霧散してしまい、再現しようとしても上手くいかなかった。
「(今の感覚……いったい何だったんだ……? 論理魔導とは、また別の何か……?)」
新たな謎。だが、今は一歩前進したことを素直に喜ぼう。条件分岐の壁は、まだ完全に越えたわけではないが、確かな突破口は見えたはずだ。
不思議な意志の力の感覚。それが、今後の論理魔導開発の鍵になるのかもしれない。そんな予感を胸に、私は再び訓練に没頭するのだった。
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