コミット 119:『堅物騎士と純粋学者、妖艶天使にタジタジ!?ヴァローナとセレスティの「不具合報告」が止まらない!』
ゼフィラという、あまりにも規格外で、そして予測不可能な「新メンバー(?)」の加入は、ニーナたちのパーティに、新たな化学反応(という名の混乱)をもたらしていた。特に、堅物で真面目なヴァローナと、内向的で純粋なセレスティにとっては、ゼフィラの奔放な言動は、理解不能な「異常動作」の連続であり、日々、その対応に苦慮させられていた。
「(ヴァローナさんとセレスティさん、完全にゼフィラさんのペースに振り回されてるな……まあ、私も人のこと言えないけど。あの人、本当に何考えてるのか、さっぱり分からんし……)」
例えば、ある日の朝。ヴァローナが日課の剣術訓練を行っていると、そこに、寝起きでまだ薄着のままのゼフィラが、ふらりと現れた。
「あら、ヴァローナちゃん、朝から精が出るわねぇ。でも、そんなに力んでばかりじゃ、筋肉がカチコチになっちゃうわよ?もっとこう、しなやかに、相手を誘うように……うふふっ♡」
そう言うと、ゼフィラは、ヴァローナの剣の動きを真似るように、妖艶なダンスを踊り始めたのだ。その姿は、およそ戦闘訓練とは思えないほど扇情的で、ヴァローナは、顔を真っ赤にして硬直してしまった。
「き、貴様!何を破廉恥な真似を!訓練の邪魔だ、あっちへ行け!」
「あらあら、照れちゃって可愛いのねぇ、ヴァローナちゃんも♡」
またある時は、セレスティが古代文献の解読に集中していると、ゼフィラが背後から忍び寄り、その猫耳にそっと息を吹きかけた。
「ひゃっ!?ぜ、ゼフィラさん!?な、何を……!?」
「うふふっ、セレスティちゃんの耳、本当に可愛らしいわねぇ。ピクピク動くところが、たまらないわ♡ ねぇ、その尻尾も触らせてくれないかしら?」
セレスティは、ゼフィラのその悪戯っぽいスキンシップに、完全にパニック状態に陥り、研究室の隅で小さく丸まって震えてしまう始末。
そんな二人の様子を見て、ニーナは、内心でため息をつきながらも、どこか面白がっている自分もいた。
「(まあ、ヴァローナさんにとっては『規律違反の警告』で、セレスティさんにとっては『処理不能な例外エラー』って感じなんだろうな。でも、こうやって、異なる価値観を持つ人間同士がぶつかり合うことで、何か新しいものが生まれるかもしれないし……SE的にも、多様性は大事だからな!)」
しかし、ニーナの元には、ヴァローナとセレスティからの「不具合報告」(という名の愚痴や相談)が、ひっきりなしに寄せられるようになっていた。
「ニーナ、あの女の行動は、あまりにも目に余る!パーティの風紀を乱し、我々の任務遂行に支障をきたしかねん!何とかしろ!」
「に、ニーナさん……ぜ、ゼフィラさんが、その……私の研究資料を、勝手に枕にして寝てしまって……どうすれば……うぅ……」
ニーナは、その度に、二人の話を聞き、ゼフィラの行動の(おそらく存在するであろう)裏の意図を推測し、そして、どうにかして三者の間に円滑なコミュニケーションが生まれるように、仲裁役を務めるのだった。
「(はぁ……なんで私が、こんな人間関係のデバッグまでしなきゃならないんだ……前世じゃ、サーバーの監視とソースコードの修正だけで精一杯だったのに……!でも、まあ、これも、世界のシステム全体の不具合を修正するための一環、なのかもしれないな……うん、きっとそうだ……そうに違いない……!)」
この個性豊かすぎる女性メンバー間の化学反応は、ニーナに新たな頭痛の種をもたらすと同時に、彼女のコミュニケーション能力と、そして忍耐力を、否応なく鍛え上げていくのだった。




