コミット 111:『商業都市で天使(?)に遭遇!……って、その露出度、バグってるとしか思えないんですけど!』
数日間の休息を終え、ニーナ、ヴァローナ、セレスティの三人は、ついに大陸でも有数の商業都市「アルカンシェル」へと到着した。その名の通り、様々な文化と種族が虹のように混じり合う、活気に満ちた自由都市だ。珍しい品物を扱う露店が軒を連ね、大道芸人や吟遊詩人たちが陽気な音楽を奏で、街全体が祝祭のような賑わいを見せている。
「(うわー、すごい活気だな、この街!アウレア・シティとはまた違った、自由な雰囲気がいい感じ!こういう場所なら、何か面白い情報が手に入るかもしれないぞ!)」
ニーナは、久しぶりの都会の空気に、少しだけ心が浮き立つような気分だった。ヴァローナも、珍しく周囲の賑わいに興味深そうな視線を向けている。セレスティは、人の多さに少し気圧されながらも、ニーナの後ろをついて歩いていた。
そんな時、街の中央広場で、ひときわ大きな人だかりができているのが目に入った。何かの見世物か、あるいは騒ぎでも起きているのだろうか。ニーナたちが興味本位で近づいてみると、人だかりの中心にいたのは、一人の息を呑むほど美しい女性だった。
その女性は、艶やかな漆黒のロングストレートの髪を風になびかせ、アメジストのような神秘的な輝きを放つ瞳を持っていた。抜群のプロポーションを誇るスレンダービューティーで、肌の露出が極めて高い、セクシーなドレス風の戦闘服を軽やかに着こなし、胸には美しい魔石のペンダントが輝いている。そして何よりも目を引くのは、その背中に生えた、艶やかな漆黒と清らかな純白の羽根が美しく入り混じった、大きな双翼だった。彼女の周囲には、常に微かなピンク色の、甘く危険な香りを伴う光の粒子が漂っているように見えた。
「あらあら、こんなところに可愛い子猫ちゃんたちが。もしかして、私に会いに来てくれたのかしら?うふふっ、光栄だわぁ」
その女性――ゼフィラと名乗った――は、ニーナたちに気づくと、妖艶な笑みを浮かべ、ゆったりとした動作で近づいてきた。その声は、まるで蜜のように甘く、聞く者の心を蕩かすような響きを持っている。
「(な、なんだこの人……!?天使……?いや、でも、あの翼、なんか禍々しい感じもするし……それに、この露出度!完全に倫理規定違反レベルじゃないか!この世界の美的感覚、どうなってんだ!?)」
ニーナは、内心で激しくツッコミを入れる。
ヴァローナは、ゼフィラのその常軌を逸した姿と、周囲の男たちの異様な熱狂ぶりに、眉をひそめ、警戒を強めている。「……何者だ、貴様。その翼、ただの飾りではあるまい」
セレスティは、ゼフィラの放つ強烈なオーラと、周囲の男たちの殺気立った視線に怯え、完全にニーナの背後に隠れてしまっている。
ゼフィラは、そんな三人の反応を楽しむかのように、クスクスと笑いながら、特にニーナに対して、馴れ馴れしく体を寄せてきた。
「私はゼフィラ。しがない天使の末裔よ。ま、ちょっとだけ訳アリの血も混じっちゃってるかもしれないけど、そこはご愛嬌ってことで♪ それより、あなた、なんだか、とっても美味しそうな匂いがするわぁ……うふふっ」
ゼフィラは、ニーナの耳元で囁き、その豊満な胸を、さりげなくニーナの腕に押し付けてくる。
「(ひぃぃぃ!近い!近いって!この人、パーソナルスペースって概念、持ってないのか!?しかも、なんか、甘い匂いに混じって、頭がクラクラするような……これって、もしかして、何かの魔力的な干渉……!?)」
ニーナは、ゼフィラという、これまでに遭遇したことのないタイプの「存在」との遭遇に、背筋が凍るような、それでいてどこか抗いがたい魅力を感じてしまうのだった。この妖艶な天使 (?)との出会いが、ニーナたちの旅に、新たな波乱を巻き起こすことは、もはや避けられない運命なのかもしれない。




