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コミット 105:『古代神殿の深部!守護ゴーレムと「魔導回路パズル」』

連携炎弾チェインフレア」という新たな攻撃手段を手に入れたニーナたちは、以前よりもスムーズに古代神殿の探索を進めることができるようになった。しかし、神殿の奥深くに進むにつれて、遭遇する脅威もまた、より複雑で巧妙なものへと変化していく。


一行は、隠し通路の先にあった広大な回廊を進み、ついに神殿の最深部と思われる場所にたどり着いた。そこは、ドーム状の高い天井を持つ円形の広間で、壁一面には解読不能な古代文字がびっしりと刻まれている。そして、広間の中央には、巨大な石の台座があり、その上には、一体の異様な姿をしたゴーレムが鎮座していた。


そのゴーレムは、一般的な土や石で作られたゴーレムとは異なり、まるで黒曜石のような艶やかな黒い金属質の素材で構成され、その表面には無数の微細な魔導回路が複雑に絡み合っているのが見て取れた。両腕は巨大な刃となっており、その体躯からは、周囲の魔力を絶えず吸収し、自らの力に変換しているかのような、圧倒的な圧力が放たれていた。


「こ、このゴーレム……今まで遭遇したどの魔物とも違う……!まるで、生きているみたいに魔力を循環させている……!」


セレスティが、驚愕の声を上げる。


ヴァローナも、剣の柄に手をかけ、緊張を隠せない。「……セレスティの言う通りだ。これは、我々が知るゴーレムとは根本的に構造が異なる。おそらく、古代文明の遺物……それも、極めて高度な技術で作られたものだろう。」


ニーナも、そのゴーレムの異常な魔力パターンに気づいていた。「(確かに、こいつ、普通のゴーレムみたいに、内蔵された魔石の魔力だけで動いてる感じじゃないな。周囲の空間から、常に魔力を補給してる……厄介な相手だ)」


ゴーレムは、ニーナたちが広間に足を踏み入れると、ゆっくりと立ち上がり、その黒曜石の瞳(?)を彼らに向けた。しかし、すぐには攻撃を仕掛けてこず、代わりに、ゴーレムの足元にある、円形の石盤が淡い光を放ち始めた。石盤の上には、複数の窪みがあり、その周囲には、いくつかの異なる種類の小さな魔石が散らばっている。


「ま、待ってください!あのゴーレム、私たちを試しているのかもしれません……!」


セレスティが、石盤に浮かび上がった古代文字を指さしながら言った。「あそこに書かれているのは……『調和の理を示せ。さすれば道は開かれん』と……!これは、おそらく、あの魔石を正しく配置し、石盤の上に特定の魔道回路を形成させろということかもしれません!」


「魔導回路パズル……か。力だけじゃなく、知恵と魔術の技量も試されるってわけね。面白いじゃない!」


ニーナは、SEとしての血が騒ぐのを感じた。


石盤のパズルは、散らばった魔石を正しい窪みに配置し、さらに、それぞれの魔石の間に、術者の魔力で精密な魔力のラインを繋ぎ、特定の効果を持つ魔導回路を形成させる、というものだった。形成すべき魔導回路のパターンは、ゴーレムの胸部に刻まれた紋様として示されており、それを正確に再現しなければならない。しかも、魔力のラインは、太さや純度、流れる速度まで厳密に制御する必要があり、少しでもずれれば回路は暴発し、ゴーレムが攻撃してくるという、極めて難易度の高いパズルだった。


「(これは、ただ頭を使うだけじゃダメだな。精密な魔力コントロールと魔導回路の構造に対する深い理解が求められる。まさに、魔法使いとしての実力が問われるわけか!)」


ニーナは、セレスティの古代魔導回路に関する知識を借りながら、ゴーレムが示すパターンを分析し、必要な魔石の種類と配置、そして魔力のラインの繋ぎ方を猛スピードで思考する。ヴァローナは、万が一パズルに失敗した場合に備え、ゴーレムの動きを警戒し、いつでも戦闘に入れるように身構えている。


「セレスティさん、あの胸の紋様、何の魔道回路か分かりますか?」


「は、はい!あれは、古代の『調和の印章』と呼ばれるもので、複数の異なる属性の魔力を安定的に融合させ、より高次の魔力を生み出すための回路です!おそらく、あの窪みに配置する魔石も、それぞれ異なる属性を持つもので、それらを正しく繋ぐことで……」


セレスティの解説を元に、ニーナは、自分の論理魔導(ロジカルマジック)の知識を総動員し、魔道回路の構築手順を組み立てていく。そして、自らの魔力を精密にコントロールし、石盤の上の魔石の間に、青白い光のラインを慎重に描いていく。それは、まるで複雑な集積回路を設計し、配線していく作業のようだった。


何度か、魔力のラインが不安定になり、ゴーレムが威嚇するような動きを見せる場面もあったが、ニーナは冷静に修正を加え、ついに、ゴーレムの胸の紋様と寸分違わぬ、美しい魔道回路を石盤の上に完成させた。


その瞬間、石盤全体が眩い七色の光を放ち、ゴーレムの黒曜石の体もまた、共鳴するように穏やかな光を灯した。


ゴゴゴゴゴ……


広間の奥にあった、これまで気づかなかった隠し通路の入り口が、ゆっくりと開き始めた。ゴーレムは、役目を終えたかのように、再び元の位置に静かに戻っていく。


「やった……!扉が開いたぞ!」


「素晴らしいです……!ニーナさんの精密な魔力制御と、私の知識……そして、ヴァローナ様の援護があったからこそ、この試練を乗り越えられたのですね……!」


セレスティは、感動した様子で言った。


ヴァローナも、ニーナのその規格外の魔術の技量に、改めて感嘆の表情を浮かべていた。「……お前のその力は、もはや単なる『術』の域を超えているな。我々の旅にとって、最大の武器となるだろう」


この「魔導回路パズル」のクリアは、ニーナたちに、それぞれの能力を最大限に活かすことの重要性を再認識させるものとなった。そして、開かれた通路の奥には、この古代神殿の、さらなる秘密が眠っているのかもしれない。

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