コミット 104:『「連携炎弾《チェインフレア》」!ニーナのロジカルマジックとヴァローナの戦術眼、セレスティの補助魔法、三位一体攻撃!』
古代神殿の探索は、日を追うごとに厳しさを増していった。神殿の奥深くに進むにつれて、遭遇する魔物もより強力で、狡猾なものになっていく。単独の能力だけでは対処しきれない状況も増え、三人は自然と、互いの能力を活かした連携攻撃を模索するようになっていた。
「(やっぱり、この世界の戦闘は、リアルタイムストラテジーに近いものがあるな。個々のユニットの性能も大事だけど、それ以上に、いかに効率的に連携し、状況に応じて最適な戦術を選択できるかが重要だ。SE的には、マイクロサービスアーキテクチャみたいなもんか……?いや、違うか)」
ニーナは、戦闘の合間に、そんなことを考えながら、新たな連携技のアイデアを練っていた。
ある時、一行は、巨大な猪のような姿をした、硬い甲殻を持つ魔物「アーマーボア」の群れに遭遇した。アーマーボアは、直線的な突進攻撃を得意とし、その突進力と防御力は、ヴァローナの剣撃ですら、簡単には怯ませることができないほどだった。
「くっ……!こいつら、動きは単調だが、一撃が重い!まともに食らえば、ただでは済まんぞ!」
ヴァローナは、巧みな剣捌きでアーマーボアの突進を避けながら、苦戦を強いられていた。
セレスティも、後方から援護魔法を放とうとするが、アーマーボアの動きが素早く、なかなか的確なタイミングで魔法を当てることができない。彼女が使える魔法はまだ基礎的なものが多く、強力な魔物相手には決定打になりにくい。
「(このままじゃ、ジリ貧だ……!何か、一気に形勢を逆転できるような、決定打が必要だ……!)」
ニーナは、状況を打開するため、新たな連携攻撃を提案した。
「ヴァローナさん、セレスティさん!ちょっと新しい連携技、試してみてもいいですか!?名付けて、『連携炎弾』!」
「連携炎弾……だと?」
「はい!まず、ヴァローナさんが、一体のアーマーボアの動きを止めてください!その隙に、セレスティさんが、そのアーマーボアに対して、風の魔力を集中させて、動きをさらに鈍らせる風の渦を発生させます!風は炎の勢いを増す効果もあるので、一石二鳥です!そして最後に、私が、その風の渦の中心に向かって、高圧縮した炎の論理魔導を叩き込む!風の渦で炎の威力を増幅させ、一点集中で大ダメージを与えるっていう算段です!」
それは、三人の能力を最大限に活かした、まさに三位一体の攻撃だった。
ヴァローナは、一瞬躊躇したが、ニーナの自信に満ちた表情を見て、頷いた。「……分かった、やってみよう。だが、失敗は許されんぞ!」
「任せてください!」
作戦開始!まず、ヴァローナが、群れの中から一体のアーマーボアを選び出し、その突進をギリギリで見切り、剣の柄で側面を強打し、一瞬だけ動きを止めた。
「今だ、セレスティ!」
「は、はいっ!」
セレスティは、ヴァローナが動きを止めたアーマーボアに向かって、集中した風の魔力を放つ。それは、まだ完璧な制御とは言えなかったが、確かにアーマーボアの周囲に小さな風の渦を発生させ、その動きを鈍らせ、炎の威力を高めるための準備を整えた。
「ナイスアシスト、セレスティさん!とどめは、私だ!」
ニーナは、エレメンタル・ガードナーから、圧縮された炎の魔力を、風の渦の中心へと正確に撃ち込んだ。風の力を得た炎弾は、螺旋を描きながら加速し、その威力を増幅させながら、アーマーボアの硬い甲殻の一点へと突き刺さった!
ドゴォォォン!!!
凄まじい爆音と共に、アーマーボアは断末魔の叫びを上げ、その場で黒焦げになって倒れ伏した。その威力は、ニーナの想像を遥かに超えるものだった。
「や、やった……!大成功だ!」
三色の光が美しく連携し、強敵を打ち破った瞬間だった。この「連携炎弾」の成功は、ニーナたちに大きな自信を与え、そしてパーティとしての連携の重要性を再認識させるものとなった。
戦闘後、ニーナは興奮冷めやらぬ様子だったが、アーマーボアの最後の抵抗で、腕に軽い切り傷を負っていたことに気づいた。
「ちっ、ちょっと油断したか……」
セレスティが、心配そうに駆け寄ってくる。「ニーナさん、大丈夫ですか!?すぐに治療を……!」
「へーきへーき、こんなのかすり傷だって!ダークエルフの治癒力なめんなよー!」
ニーナは、いつものように強がってみせた。
しかし、翌朝になると、ニーナの腕の傷は、ほとんど跡形もなく治癒していた。その驚異的な回復力に、セレスティは改めて驚きを隠せない。
「ニーナさんの回復力、やっぱりすごいですね……ダークエルフの特性なんですか……?」
「んー、まあ、そんなとこじゃない?気にすんなって!」
ニーナは、曖昧に誤魔化しながらも、自分の身体に秘められた未知の力について、ほんの少しだけ意識するのだった。




