if ○○○しないと出られない部屋
○○〇しないと出られない部屋スキルを持つモブ(そんな人はいない)に襲われた◆時空のシャロン達、ブチ切れのアベルが全力で扉を破ろうとするも破れなくて呆然とする
青ざめたアベル「お前にそんな行為を働くくらいなら死ぬ」
シャロン「(確かにどうぞとも言えないけれど…でも、そんなに…)」
落ち着いたアベル「状況を整理する」
シャロン「はい」
アベル「物理・魔法ともに効果がなく、条件を達成して本当に出られるという保証もない。ならば魔法を発動させた本人の魔力切れを狙うべきだと思う。」
シャロン「そうね。貴方に破れない程だから、そんなにはもたないかも」
アベル「(あくまで、これが持続的に魔力を消費するスキルなら、だが……。)幸い、妙に生活環境は整っている。持久戦はできるが、相手側の用意である以上、飲食物に毒がないかは要検証だな。」
シャロン「本も沢山あるし、長く過ごすのは大丈夫そうね。ベッドは一つだけど、私はソファを使えばいいもの。」
アベル「……?」
アベル「何を言ってる?ソファは俺が使う。お前はベッドだ。」
シャロン「え?ここは王子殿下が優先ではないのかしら。」
「「………。」」
どこからか現れたゴング「カーン!」
「ここ(ソファ)は私が使います。」
「どかせばいい話だな。」
「まぁ、力ずくという事?では貴方がベッドで寝ない限り、私は睡眠をとりません。」
「なぜそうなる。ふざけるな」
「聞いているわよ。昨日、一昨日と一時間の仮眠で済ませたんですってね?」
「………。」
「寝てはいるんだからいいだろう、じゃないのよ。」
「(まだ言ってないが…)」
「ね、貴方が休むべきだわ。心配しなくても、私はソファで寝たくらいで体調を崩したりしないもの。」
「譲るつもりはない。お前より俺の方が丈夫だ」
「んん…」
--
「……これだけ広いベッドなのだから、端と端で寝る?」
「しかし」
「良案が?言っておくけれど、私も譲らないわよ。ある種せっかくの自由時間だもの、貴方には休んでほしい。」
「……お前、恐ろしくはないのか。この状況だぞ。」
「死ぬとまで言うほど、安全なのでしょう?」
「…お前をそういう目で見ようとした事が無いのは確かだが……」
「私も、貴方を見境のない人だなんて思ってないわ。だから大丈夫。それとも、貴方にとって私は……共に寝ていられないほど、嫌な相手、とか」
「は?何を言ってる、そんなはずがあるか。」
「では解決という事で」
「解決はしてない。」
「次に食事のことを考えましょうか。材料さえ問題なければ、簡単なものなら私が作るわ。」
「カレンに教わったんだったな。」
「少しだけね。毒に関する見極めは自信がないけれど。」
「それは俺がやっておくからいい。」
「…念の為に言うけど、自分を実験台にしちゃ駄目よ……?」
「流石にこの状況ではやらない。死にでもしたらお前が(遺体の処理や開放された後の事情聴取で)困るだろう。」
「そういう問題ではないわ。この状況じゃなくても駄目でしょう?」
「…わかったから止まれ。詰め寄るな。」
--
シャロンが湯浴みする間に部屋を物色し怪しい本や玩具を焼却処理しているアベル「……………………。」(虚無)
アベルが湯浴みする間に料理を進めるシャロン「(絶対に失敗できないわね…これで大丈夫かしら?味は普通に思えるけれど……あぁ、もう普通の定義を疑ってしまいそう…)」
---
一旦考える事をやめたアベル「うまい」
「よかった…!きちんと味見はしたのだけど、もし口に合わなかったらどうしようかと思ったわ。」
「?どうもしなくていい。お前が懸命に作ったものを無駄にしたりはしない。」
「そ、そう…(頑張らなくては……おいしくなくても言ってくれなさそうだわ…)」
(食後の会議タイム)
「――では、これについては次の議会で承認を。ここを出たらサディアスにも話を通しておくわね。」
「あぁ。それと、シミオンが調査していた件だが…(中略)…の処分を言い渡す予定だ。」
「妥当だと思うわ。今後同じ事がないよう対策を練らなくてはね…案として今思い付くのは――…」
---
先に寝たら絶対ソファを使われると察しているシャロン「………」(読書しながら優雅にハーブティーを飲んでいる)
こいつ見張るつもりだと察しながらも「(一緒に)寝るぞ」とも声をかけられないがシャロンにはきちんと睡眠をとってほしいアベル「……寝ないのか」
「もちろん寝るわ、貴方が寝る時に。」
諦めたアベル「……わかった、もう寝る。」
勝者シャロン「はい」
「衝立の材料は調度品を破壊して作るしかないな…安定させるには工夫もいるか。木製と金属製どちらがいい?」
「アベル…薬で強制的に眠るのと自分で眠るの、どちらが良いかしら?」
「…いきなりどうした。」
--
翌朝
ベッドの端ですやすや眠るシャロン「………」
目を閉じるだけのつもりだったのにぐっすり寝てしまったアベル「………。」(膝に肘をついて項垂れている)
「(寝ても覚めない…知覚も、傷に対する治癒の速度も日頃と変わらない……こんな馬鹿げた事が現実だと……?)」
---
「使ったはずの食材が補充されていたわ。どうなっているのか…」
「……外部と連絡さえ取れれば、緊急時に役立つスキルかもしれないな。」
「一日経って解けないとなると…魔力消費は継続時間ではなく、発動した時のみね。」
「だろうな。維持には消費しないか、ごく僅かか……」
「出られなかったらどうしましょう?貴方がいないと皆困るわ。」
「…俺がいなければいないで、次の王はサディアスか……宰相の息子のどちらか、あるいは成長を待ってお前の弟だ。」
「……(皆、貴方が王になる日を待っているけれど……貴方は、ウィルを王にしたかったのよね…。)」
「早く出たいか?解決策を出せなくてすまない。」
「いいえ、私は大丈夫よ。貴方とこうしてのんびり過ごす時間、大好きだもの。」
「……そうか。確かに…悪くはないな。」
「皆があの方を捕まえてくれるかもしれないし、少しくらいゆっくりしましょうか。」
---
一方その頃、王立学園
モブ「あの…助けてください…(泣)」
サディアス「何ですか貴方は。今他の案件に構っている暇はな――」
モブ「自分のスキルで作った空間から、アベル殿下達が出てこないんです!!」
サディアス「…なんて言いました?」
モブ「それが…ほっとけば勝手に出てくるから、解除の仕方がわからなくて」
サディアス「はい????」
モブ「どうしたらいいでしょうか……」
サディアス「そんな状態でふざけたスキルをあの二人に使ったのですか!相手が誰かわかっているのか、学生の遊びでは済まない!!」
モブ「(´・ω・`)」
モブ「荒療治がいるタイプの二人だと思ったんです…でも二ヶ月半もあって手を出さないと思わないじゃないですか……」
サディアス「…二ヶ月半とは?」
モブ「あぁ…あっちは時間の流れが違うみたいで、こっちの一日で大体1ヶ月経つんです」
サディアス「(頭を抱えている)」
モブ「つまり三ヶ月近い!普通、しません!?試しますよね良い口実があるんだから!こんな長く出てこないの初めてで、なんか、もし死んじゃってたらどうしようって」
サディアス「わかりました、強制解除します。」
モブ「それはどうやって…」
サディアス「手加減はしません、貴方は加害者なので。」
---
料理中だったシャロン(装備:おたま)「………」
手伝っていたアベル(装備:包丁)「………」
モブを丁寧に気絶させたサディアス「よかった…お戻りになりましたか、アベル様!シャロン、貴女も。救出が遅くなり申し訳ありませんでした。」
シャロン「出られた、の…?」
アベル「そのようだな。」
サディアス「お二人がいなくなってから、こちらでは三日経っております。」
シャロン「まぁ…本当に不思議なスキルね。私達、結構な日数あの部屋にいたけれど。」
アベル「手間をかけた。サディアス」
サディアス「いえ。取り急ぎ、シミオン達に伝えて参ります。この者の投獄も。」
アベル「あぁ。」
---
「…出られたわね?」
「たった三日とはな……」
「私、かなり料理の腕を上げたと思うわ。」
「俺もだ。」
「貴方の飾り切りは凄かったわね…もう見られないかと思うと残念。」
「あれくらい、いつでもやってやる。」
「ふふ、ありがとう」
---
出られない部屋if、
なにせ二ヶ月半あったのでシャロンは途中つい、アベルが浴室行ってる間にベッドのアベルが使う側にそっと寝転んでみて、僅か数秒で限界が来て飛び起き部屋の隅に逃げるくらいの事を一回はしてると思います。
そして風呂上がりのアベルにじっと顔を見られて「暑いのか」って聞かれる
はしたない事をしたと思いアベルの顔を見られないシャロン「料理に熱が入ってしまって…火加減を見すぎたかも……」
暑いなら水分を摂ってほしいアベル「大丈夫か」(善意でコップに水を入れてやろうとする)
今あまり近付かないでほしいシャロン「だだだ大丈夫です、ありがとう」
シャロンはアベルがちょっと癖毛なのを可愛いと思ってるので(不機嫌になりそうなので本人には言わない)、寝起きや風呂上がりなどを見ると(既にある程度梳かしてあっても)心の中で「梳かしてあげたい…!」になります。
---
※二人の会話について
「死ぬとまで言うほど、安全なのでしょう?」
「…お前をそういう目で見ようとした事が無いのは確かだが……」
2年近く経ったので言ってしまうと、シャロンは気付いてませんが、
この時のアベル「そういう目で見た事がない」とは言ってないです。