学生時代のレイクスとグレン
学生時代のレイクスとグレン
グレン「星もない曇り空、深夜。ふふ、天も私に味方しているようです。」
レイクス「こうも暗いと何も見えないな。」
グレン「えぇ。ではさっそく職員室に忍び込――ん?」
レイクス「よっと」(腕挫腕固)
グレン「あだだだだだ!!!」
グレン「防音の魔法を使えば学園長室の窓を割ってもこの通り!いやぁ私天才ではないですか?今日は隠し部屋の一つでも見つけ」
レイクス「弁償だな!高いぞ」(腕挫十字固)
グレン「いだだだだだ!!!」
グレン「姿を消して音も消す、これが最適解でしたね。さすがの私も同時発動の習得まで時間かかりましたが、これでやっと」
レイクス「発動を解除してくれるな?」(袖車締)
グレン「…ッ!……!!」
グレン「というわけで必ず邪魔が入るんですけど、何か良い案ありませんか。」
イザベル「平民風情が気安く話しかけないでくださる?少し《魔法学》ができるくらいで調子に乗らない事ね。」
グレン「最近はもう、生徒会長って警備責任者兼任でしたっけ?と考え始めたくらいです。私はただ女神と六騎士の謎に迫りたいだけだと言うのにああ嘆かわしい、先生がたもレイクスも私に構う暇があったら他の事をすればいいと思いませんか?それがないならいっそ手伝って欲しいくらいなのにそうしないという事は疚しい事、隠したい事があるんじゃないですかね~私何も全世界にバラすと言ってる訳では無いのですよ?なのに彼らときたら」
イザベル「長い!なぜ私の横で喋り続けるのっ!」
グレン「愚痴を言いたいところにたまたま貴女がお独りでポツネンとお勉強なさっていたものですから、まぁただ聞いてもらうだけなら石よりは貴女でいいか、と思った次第なのですが」
イザベル「石よりは!?こ、この無礼者!」
グレン「ところでさっき隠したの何です?手紙に見えましたがもしや、先に卒業した婚約者からですか…読み返すという事は何か重大な内容が?公爵家の秘密……興味がありますねぇ。是非私にも読ま」
イザベル「生徒会長っ!ユージーン・レイクス!どこにいるの、早くこの男を連れていきなさい!!」
グレン「あはは、彼は野良試合の連戦を受けて立ってましたから、来ないと思いますよ。ここから訓練場までは声も届かないでしょうし。」
イザベル「貴方もうどこかへ行きなさい!彼が来ないならそれこそ、今勝手をやればいいでしょうっ!」
グレン「………確かに。」
イザベル「え?」
グレン「まだ日が出ている内に決行する!確かに盲点でした、私もまだまだ先入観に支配された若輩者だったというわけで。いざ行きましょう夕日をバックに」
レイクス「今とは珍しいな!」(バックドロップ)
グレン「あ゛あ゛あ゛あ゛ッ!!」
グレン「骨が折れました。プフッ、いえこれ比喩ではなく。《治癒術》って興味なかったんですが、大事ですね。」
イザベル「本当に邪魔だから話しかけないでくださる?貴方疲れるのよ。」
グレン「医務室でも叱られました。せっかくなので神話語りをと思ったのですが、いいから寝なさいと薬を……薬?」
グレン「レイクスに薬を盛ればいい!もっと早く気付きたかったですねぇ本当に。人の好意は無碍にしない男ですから、女子からの差し入れならたぶん食べたでしょう。今夜こそゆっくり学園探索と」
レイクス「非常に眠い」(地獄絞)
グレン「それは起きてください!絞まッ、ぐ…起き……!」
グレン「下手な薬は自分の首を締めると学びました。フッ、フフフ…物理的な意味で。」
イザベル「本当にやったの…なんて男……」
グレン「まぁ睡眠薬程度ならツテもあったので。だいぶ絞られましたが、怪我と停学と反省文で済みました。」
イザベル「停学でなぜここにいるのよ」
グレン「……彼、伯爵家ですよね?父親にでも言えば、私みたいな平民牢屋に放り込めるでしょうに。なぜいちいち捕まえるのでしょう。」
イザベル「私に聞かないで。仮に知ったとて、あのような男の思考など私や貴方が共感できるものではないわ。」
グレン「まぁ、そうですね。」
グレン「いつも取り巻きと一緒の貴女が、こんな所でちまちま自習されてる意味もわかりませんし。」
イザベル「わからなくて結構よ。人は水辺に浮かぶ白鳥の美しさだけを見ていればいいの。」
グレン「白鳥。どこに?」
イザベル「予言して差し上げるけど、貴方には顔目当ての女しか寄って来ないわ。」
グレン「別に構いやしませんが…なら貴女は、何を目当てに貰われるんです?」
イザベル「……決まっているわ。生まれと見た目と能力。それが公爵夫人に相応しいものだからよ。」
グレン「へぇ……まぁ、どうだっていいのですが。」
イザベル「そうでしょうね。……もう行きなさい。私は忙しいの。」
反省文作成中のグレン「手を組みませんか?」
見張り兼自習中のレイクス「どうした、いきなり。何の話だ」
グレン「貴方が見張る前で私が学園内を探せばいい。どうです?」
レイクス「ははは、楽しそうではあるが――俺がいた所で、立入禁止は変わらないぞ。」
グレン「使えない男ですねぇ〜〜〜」
レイクス「ルールを破るより、誰なら入れてもらえるかを考えたらどうだ?」
グレン「あ〜《成り代わり》せよと。」
レイクス「それは重罪だな。お前はせっかく神話に詳しいのだから、いっそ神殿都市で司教なり司祭なりの資格を得るとか。学外にも縁の地はあるし、今よりは許可を貰えるかもしれないぞ」
グレン「今サトモスにはクソ論者がいるんですよ……会いたくないなぁ。口論の末にやっちゃったらどうしましょう?貴方に唆されたと正直に言うか。」
レイクス「誰が信じるんだ、それを。言っておくが、これまでの事はきちんと生徒会の記録に残しているからな?」
グレン(卒業前に燃やす物が増えた…)
グレン「ところで、貴方なぜ私と笑って話せるんです?どちらかと言えば敵では。」
レイクス「ではなぜ、さんざんお前の邪魔をした俺と平気で話せるんだ?」
グレン「質問を質問で返す!貴方にしては意外ですが……なるほど、私も似た事をしていると。」
レイクス「同じ理由とは限らないだろうがな。」
グレン「卒業したら騎士団へ行かれるんでしたか。らしいですねぇ」
レイクス「ああ。既に打診は受けているし、俺もそのつもりだ。」
グレン「ではいつか、真相に辿り着いた私を……他ならぬ貴方が、国の命令で消すかもしれませんね。」
レイクス「はは、お前が重罪を犯す前に捕えられるといいが。」
グレン「殺す時はぜひ、即死で頼みます。」
レイクス「それは判決を待って執行官がする事だ。捕まえる時に抵抗されたら、そりゃあ俺はお前を痛めつけるさ。」
グレン「貴方に捕まったら潔く諦めますよ。それか、説得されて見逃してくれませんかねぇ。」
レイクス「それは難しいな」
レイクス「お前が思うより、俺は優しくないぞ。」
グレン「……そうですか。」
レイクス「話は終わりだ、書き終わりそうか?もう日が暮れる。」
グレン「ああ〜間に合わないですねぇ。これは諦めた方が」
レイクス「終わらなかったら寮でも見張るからな。」
グレン「あはははは、五分で終えます。」
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グレンは魔法学の実力と神話学のオタクさこそ確かですが、悪い事して捕まったり罰を受けても「ですよね(笑)」のスタンスな犯罪素人なので、完全犯罪は向いてないです。
これをやったら必ず絶対に神話の謎がわかるという犯罪があったら本気で計画立てるかもですが、騎士団側の警戒予測などはできません
多少強引な事をやってのける力はあるものの、やった後に騎士団に捕まるなり追われ続ける(自由に探究できない)人生と引き換えにしてまで、と考えるとそこまでの事はしないです。軽い事はめちゃくちゃやるので、学園ではレイクス、魔塔では騎士、また学園に戻ってシビルからそこそこしばかれてます。
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※グレン「まぁ睡眠薬程度ならツテもあったので。だいぶ絞られましたが、怪我と停学と反省文で済みました。」について
ここでグレンが言っている「睡眠薬のツテ」は当時の《薬学》《植物学》担当、ジョディ・パーキンズ先生の話をしています。
渋ったりどもったり悲鳴を上げたりしながら譲ってくれたようです。




