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陽気なお茶会などでは全くなかった。

ドアを開けると、田村君が男達に囲まれて、床に転がされていた。

男子の数は六人。

手にはスマートフォン。

さて何があったのでしょう?

まあ想像は付く。

俺もそれなりに人間を理解しておりますので。


「何だよ?誰だよ、こいつら」


確か隣のクラスの、名前はわからない。


「例の転校生じゃねぇか。超美人っていう」


「ホントだ。マジ可愛いな。スタイルいいし」


「何だよ。お前ら。混ぜて欲しいってか?」


「いいぜー。可愛い女の子は大歓迎。男は消えな」


「つーか、後ろのこいつでかくね?」


「でかいだけだろ。まあいいや。取りあえずせっかく来てくれたんだから楽しませてやらねぇとな」


楽しくなりそうもないので結構です。

こいつら確かサッカー部の、部活はいいんですかい?


「混ざりませんよ。私達は適度な運動をしにきました」


「はぁ?何言ってんのコイツ」


「いるよな。こういう正義感丸出しの馬鹿丸出し女子って。学級委員に多い奴」


「大抵ブスなんだけどな、まあ可愛いからいいよ。こっちこいよ」


多分リーダー格の男子が彼女に近づいて来た。

あーあ、やめときなって、人間が。


ここからのことは簡単に想像が出来ましたが彼女の圧勝でした。

まずは近づいて来たリーダー格の男子を美しい脚で思い切り蹴り飛ばし左拳で頬を軽く押し床に叩きつけました。

この時点で賢い人間ならば平身低頭で泣いて許しを乞うたはずですが、悲しいかな彼らは自分の力量というものを微塵も理解していなかったので、三人が彼女に向かってきましたが、唯の人間が束になったって勝ち目なんかあるはずがありません。

四人があっという間に床に伏せたので、残りの二人は気を失っている田村君を起き上がらせ人質にしようとしました。

恐怖の余り何も言えないようでしたがそうでした。


「あらあら、別に私達は田村君を助けに来たんじゃありませんよ」


「ふっざけんなよ、てめえ。ぶっ殺してやっからな」


「あらあら、うるさいお口ですねぇ。チャックしてあげますね」


おお。

彼の口にファスナーが。

悪魔すげぇ。

便利っすねぇ。

天使もこういうことできたらいいのにぃ。


「私は弱いくせにさらに弱い生き物を探して来て自分を強く思いたいという貴方達みたいな人間が嫌いなだけです。貴方達の罪はまあ簡単に言うと私を不愉快にしたこと、それだけですよ」


「ふっざけんな。死ねよ」


「貴方がね」


名前は知らない男子がポケットからナイフを取り出し、彼女に向かってきた。

だからやめなって。

どうしてそんなに愚かになれるんですかねぇ。

天使悲しい。


ナイフはその持ち主の手ごとへし折られた。

痛そう。

嫌、絶対痛いって。

もうどうしようもないので田村君の陰に必死で隠れようとする男子を彼女は左手で引きずり出してきた。


「もう二度とできないように腕へし折ってあげときますね」


「・・・・・やめてくれ・・・・金なら出すから・・・・」


「田村君から巻き上げたお金でしょう?それは貴方のお金じゃありませんよ。田村君のご両親が一生懸命働いて得たものです」


「てめえ、こんなことしてただで済むと思ってんのかよ。俺の父親何してんのか知ってんのか」


「県会議員ですよね?」


「ぶっ殺してやるからな!!このクソ女!!」


「そんなこと一生思えないようにしてあげますから大丈夫です」


彼女は六人全員の腕をペットボトルのラベルを剥がすようにへし折っていった。

ゴム手袋はこのためだったのか。


「じゃあ解体しないといけないですね。運ぶのにこの大きさは不便ですし」


「は?解体?何言っちゃってるんすか?」


「だって山に運ばないと」


「えー、埋めるんすか?」


「はい」


「六人も?」


「はい」


「六人も消えたら大事件ですよ。男子高校生集団失踪事件。警察動きますって」


「そうでしょうか?」


「しかも山って、車もないのに無理っすよ」


「私達飛べるから大丈夫ですよ」


「何往復するんすか?」


「だって」


「だってじゃない。大体解体なんて無理っすよ。切れそうなもの何も持ってないっすよ」


「大丈夫ですよ。私人間の身体ぐらい素手でちぎれるので」


「まあそうでしょうけど」


「まあ面倒だから止めておきますか。時間がかかる割に楽しくなさそうですし。でも手だけじゃあれですかね。まだ足が残っているので、二度と立ち上がれないようにこちらも折っておきますか」


「手だけで充分じゃないですか?」


「スマホは叩き割りましょうね。どうせつまらない動画撮りまくってるんでしょうし」


「まあそうでしょうね」


「すみません。私だけ運動しちゃいましたね」


「それは構いませんけど」


「田村君が気絶していてくれて良かったです」


「ま、そうすね」


「でもつまらなかったですね。大した運動にもなりませんでしたし」


「そうっすね」


「まあ帰りましょうか?」


「このまま放置ですか?」


「あとは先輩方に任せます」


「へ?」


「先輩方なら私達よりずっと上手いことこの場を収めてくれますから」


「そうっすか。じゃあ悪魔先輩に任せます。田村君は?」


「置いて帰るわけにはいきませんね。寒そうですし」


「そうっすね。寒いっすよね」


「まあこれでこの学校も少しは良くなるでしょう」


「何で田村君がひどい目にあわされてるってわかったんすか?」


「それは悪魔ですから」


「そうっすか。俺なんてちっとも気が付かなかったです。隣の席だったのに」


「天使は能力を制限されてますからしょうがないですよ。でも忍が隣の席だったことで加護効果により回復力は上がっていたはずですよ。忍がいなかったらもっと酷いことになっていたかも」


「俺何にもしてませんよ」


「そう、何もしていませんね。天使だからですよ」



俺は何もできない。

人間に深く関与するなだから。

それを言い訳にして何もしてない。

この世には理不尽なことがいっぱいあるのに。

助けを求めている人が沢山いるのに。



「堕天したら何でもできますよ。人助けも自由なんですから」


「それが狙いですか?」


「まあそれだけじゃありません。正義感溢れる女の子を演じたら貴方が私を好きになってくれるかなと思っただけです。でもそう上手いこといきませんね。イベントとしてステージ、演者、演出、特殊効果、いろんな意味で弱すぎました」


「そうっすねぇ。六人じゃ大分しょぼかったっすねぇ」


「せめて千人くらいいないと話になりませんね」


「派手な火柱も欲しいっすねぇ」


俺は左腕で田村君を俵抱きにする。

力が漲っている。

近くにいるな、仲間が。


「あらあら力持ちですね」


「今ならあんたにも腕相撲で勝てそうですよぉ」


「御冗談を。私貴方の腕引きちぎれるんですよ」


「そうでしたね」


彼女がシュシュを解く。

長い黒髪が解放され音もなく揺れる。

スローモーションでもう一度見せて欲しい。

派手な回し蹴りよりこういうシーンの方がずっと嬉しい。

いかん、堕天してしまう。

気を強く持って、俺。

天使ですよ、俺。



俺が直接触れたのと多分近くに天使が大量にいるかなんかしたので田村君は無事目を覚まし、次の日には元気な姿で学校に来た。

六人組は最初からいなかったことになっていた。

悪魔恐ろしい。

そして便利。









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