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土曜日は美術部の友人達とハリウッド超大作映画を見に行った。
爆発するビルの最上階から飛び出て来た主人公が無傷で着地し元気いっぱいなところがとても良かった。
映画とは全部こうでなくてはいけない。
日曜日は惰眠を貪り月曜日になったので学校へ行くと美しい彼女が微笑みを携え優雅に頬杖をついていて、昼休みにラインで図書室に呼び出された。
どうやって俺のラインをと思ったが、悪魔なのでどうにでもなるだろうわざわざ質問するのはやめた。
「忍、遅いですよ」
「すみません」
「放課後付き合ってくださいな。お時間はそんなに取らせませんよ」
「部活があるんですけど」
「美術部は火曜日と木曜日だけとお聞きしましたが」
「何するんですか?」
「そうですね、あえて言うなら運動ですか」
「運動?」
「たまには思い切り身体を動かさないと」
「思い切り動かすと社会生活に支障をきたすんですけど」
「まあまあ、いいじゃないですか。お付き合いしてください」
「やかん買いました?」
「まだです」
「放課後お付き合いしないとどうなります?」
「さあ、どうなるでしょうね」
「まあ付き合いますけど、怖いことじゃないですよね?」
「当たり前じゃないですか。学校ですることですよ」
「あ、校舎でするんですか」
「はい」
「わかりました」
「まあ、あえてヒントを出すなら田村君です」
「田村君って俺らの隣の席の田村君ですか?」
「はい」
「えっと、彼も悪魔なんすか?」
「まさか」
田村君。
二学期から隣の席だがほとんど会話した覚えがない。
小柄で如何にも大人しい生徒って感じで正直あまり印象にない。
その田村君が悪魔の彼女に目を付けられるなんて一体なんだ?
実は裏の顔があって、まさか国家直属の特殊部隊の一員だったりする?
嫌まさか。
「田村君の人生に深く関与ってことにはなりませんよね?」
「なりませんよ。大丈夫です」
「わかりました。付き合いますよ」
「はい。じゃあ放課後よろしくお願いしますね。忍」
滅茶苦茶かわいい百点満点の笑顔ですが、怖いです。
でもほっといてとんでもないことになったら困るしな。
せめてこの学校の平和くらいは貢献しないと。
天使なんだから。