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「天使殿はいつからこちらに?」


「今年の四月からですね。だから高校には入学式からいますよ」


「そうですか」


「悪魔殿は?」


「奈々でいいですよ」


「まだそこまで仲良くありません」


「あら頑な」


「下級天使を見つけて慌てて飛んできたんですかぁ?」


「どうでしょうね。ご想像にお任せしますよ」


「悪魔は天使を堕天させればさせるほど位が上がっていくんですよねぇ?」


「そうですね。そのように思っていただいてよろしいですよ」


「俺なら簡単に落とせると思ってます?」


「そんなことないですよ」


「謙遜しなくていいですよ」


「堕天したらとっても楽しいですよ」


「そうでしょうねぇ」


「お仲間もいっぱいいますよ」


「でしょうねぇ」


「それにしてもこんなに天使を派遣して大丈夫なんですか?天国は」


「まあ天使はいくらでも作れますので」


「最終戦争は起こると思います?」


「どうでしょうね。下っ端なんでわかりません。興味もないです」


「そうですね」


「悪魔陣営はやる気満々ですか?」


「そうでもありませんよ。争いごとは人間だけがやればいいんですよ。私も興味ないです」


「堕天使ばっか増やしてどうしようっていうんですか?地獄は」


「味方はどれだけいてもいいものでしょう?」


「まあそうっすね」


「こちらの生活はどうですか?」


「楽しいですよ。気に入ってます。食いもん美味いし、家族も優しいです」


「それは何よりですね」


「まあ寒いのと暑いのはしんどいですけどね。あんた夏の暑さはもう体験しましたか?」


「いえ」


「え?地上初めてっすか?」


「まさか」


「夏はホント死ぬかと思いましたよ。まあ死ぬわけないんですけど天使だから」


「そうですねぇ」


「しかしあんたもテレビとか見るんですねぇ」


「あれは買ってもらったものです。私が買ったものではありません」


「こちらの家族ですか?」


「まあそんなところです、それよりも」


彼女は立ち上がり俺の隣に座る。

美しい顔が見れなくなって俺は寂しい。

彼女は俺に身体をぴたりとくっつけ俺の膝に手を置き身を乗り出して俺の耳元に唇を近づける。

それにしてもこの炬燵でかいな、最低六人は入れるぞ、どう考えても一人暮らしの炬燵じゃない。



「そんなに近づかなくても聞こえますよ」


「天使殿は余程私の顔がお気に召したようですね」


「そりゃそんだけ綺麗な顔ですからね」


「堕天していただけましたらずっと見ていられますよ」


「堕天しなくても見ていたいですけどねぇ」


「天使殿」


「何ですか?」


「今の生活にご不満はございませんか?」


「特にないですよぉ」


「嘘」


「ホントですよぉ」


「退屈ではありませんか?」


「退屈?」


「だって天使は人類に干渉してはならないんでしょう?その点悪魔は自由なんですよ。人間に何をしても大丈夫です」


「特に人間としたいこともないので大丈夫です。ご心配なく」


「自分の本当の力を発揮できないのお辛くないですか?」


「別にないですよぉ」


「そうでしょうか?だって思いませんか?こちらに来てみたら人間という生き物は思ってた以上に何もできないのに非常に威張っていて傲慢でくだらない生き物ではないですか?」


「思ってたよりそうでもないですよ。来る前はもっと心配してましたけど、飯も美味いし、街も綺麗ですし、大体皆優しいですよ」


「でも能力のないものが幅を利かせて、暴力、暴力、暴力。ひどい世の中だと思いませんか?」


「まあ、可哀想だとは思いますけど、何もできないので」


「したいと思いませんか?」


「思いませんねぇ」


「せっかく能力があるのに大人しくしているなんて馬鹿げていますよ。その気になれば世界を動かすことだってできるのに」


「できませんよ。下級天使風情じゃ」


俺達天使は人間に深く関わってはいけないし、天使として当たり前に備わっている能力も制限されている。

ただ仲間が近くにいると天使力が跳ね上がる仕組みになっているので、急に速く走れるようになったり、手にした林檎を握りつぶしてしまったら、それは仲間が近くに来た合図となる。

体育の授業の時とかはとても困るので俺は運動部に入るのは諦め、美術部に入り、いるだけで加護の天使としての職務を全うするため地味に目立たないように生きている。

これは大多数の地上に降りて来た天使がそうであるのだが、そういう生活に不満を感じ、堕天してしまう天使も多い。

天使は神様のご趣味なのか容色に恵まれているので、ついつい必要以上に目立ってしまい、誘惑も多いことだろうが、頑張らねばならない。

そう、頑張っているのだ俺達天使は。

何のために?

人類のほんの少しばかりの平安のために?ですか?


「天使殿は何にために自分を律しておられるのですか?」


「律してなんかいませんよ。これが天使の普通です」


「そうでしょうか?私には天使殿は大分無理をしておいでなんじゃないかと思いますね」


「してませんよ、無理なんか。俺は天使の役目、何もしない、いるだけを実行しているだけです。それでいいと思っていますし。それでいいに決まってるし」


「そうですか?時々暴れてみたくなりませんか?こんな世の中ひっくりかえしてみたくなりませんか?愚かな無能どもを踏みつけてやりたくなりませんか?一国くらいなら簡単に落とせるでしょう?」


「壮大ですね。そういうのは悪魔殿にお任せしますよ。あ、駄目だ任せちゃ。地球終わる」


「悪魔だってそんなことしませんよ。人間のことは人間で」


「そうなんですか?」


「そうですよ。人間の問題は人間が全て引き起こしています。何でも悪魔のせいにされちゃたまりません。

人間のロクデナシを奴は悪魔だとか言いますが、悪魔に失礼ですよ。それに悪魔は皆美形です。あんなに醜い生き物たちと一緒にしないでもらいたいですね」


「そうですねぇ」












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