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「取りあえず、スーパーに寄りましょうね。何でも好きなお菓子買ってあげますよ」
「子供ですか、俺は」
「そうですよ。私の赤ちゃん」
「そういうのはいいです」
「あら、そうですか」
スーパーに着くと彼女は買い物篭をカートに乗せた。
良かった、ちゃんと社会常識はあるみたいだ。
「いつも何食ってんですか?」
「お寿司とか、お寿司とか、お寿司ですかねぇ」
「寿司しか食ってないんですか?身体に悪いっすよ」
「人間じゃあるまいし何を言ってるんですか。ほら、何でもいいですから籠に入れて下さいな」
まあ買ってくれるって言うのでお言葉に甘えるとしよう。
「天使殿。何ですか。チョコばっかりじゃないですか」
「そうっすか?」
「チョコパイ、キットカット、アーーモンドチョコレート、チョコチップクッキー、アルフォート、ブランチュール、つぶつぶ苺ポッキー、たけのこの里、アポロ、チョコばっかりです」
「チョコ好きなんですよ。つーか、チョコチップクッキーはクッキーじゃないですか?」
「チョコ系です。味はチョコでしょう?チョコばっかりです。しょっぱいものも買ってください」
「お煎餅とかですかぁ?」
「そうですね」
「じゃあばかうけ、ハッピーターン、雪の宿。ぽたぽた焼き、ポテトチップスは何味がいいですか?」
「お好きなように。それにしても何でも買ってあげると言いましたけど買いすぎですよ。どれだけ食べる気ですか?」
「すんません。一回思いっきりお菓子買ってみたくて」
「あらあら、天使殿は清貧ですか?」
「いえいえ、でもお世話になっているお家に余りに損害を与えるのは心苦しいので」
「そうですか。流石天使殿。ご立派です」
「おだてても駄目ですよぉ」
「そうですか。私とこうして買い物をしている時点でもう貴方は堕天への一歩を着実に踏み出していますけどね」
「嫌、制服引きちぎられると思ったんで」
「そんなことしませんよ。今の私はただの非力な女の子ですよ」
「そうですか。すっげー力を感じたんですけど。上級悪魔さんですか?」
「ご想像にお任せします。お夕飯は何にしますか?」
「夕飯?」
「食べていかれるでしょう?明日土曜日ですし。泊まっていってくださいな」
「嫌、家帰りますよ。家族がいるんで」
「えー」
「えーって。当たり前でしょうが」
「タイプじゃなかったんですかぁ?」
「嫌。タイプですけど、それ以前の問題なんで」
「まあ、いいです。今日のところは唯仲良くなりましょう。人間以外とお喋りするのは久しぶりでしょう?」
「まあ、そうっすねぇ」
「じゃあ帰りますよ。飲み物はお茶でいいですか?」
「あー、いいっすよぉ。で、ポテトチップスは?」
「幸せバター」
「意外なチョイスっすね」
「そうですか?」
「かりんとうも買っていいっすか?」
「はいはい。ベイビー」
「嫌。普通に呼んでください」
「天使殿」
「嫌。ここでは伊藤、伊藤忍なんで、それで」