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職業は、暗殺者専属の運転手です  作者: 円寺える


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第52話

 新人を助手席に乗せ、薄暗い道路の上を走る。

 外が明るい間に本屋で「拳銃の扱い方について」を買い、仕事の合間に読んだのだが、実践してみなければ分からないのでさほど参考にならなかった。

 一応、構えはなんとなく頭の中に入っているが今までのマルクを思い出し、そんな構えをしていたか、と疑問に思う。

 手練れと自分を同じに考えてはいけないが、それにしてもなんというか、本に記載されていた構えはダサく見えたので実践をしたくないのが本音だ。

 男はこういうのが好きなのだろうが、サツキは恰好いいとは思わなかった。

 マルクが銃を撃つ姿は恰好いいと言わざるを得ない。普段から恰好いいので、仕方あるまい。


「ずっと車の中にいて疲れません?」

「すぐに慣れるよ」

「尻が痛くなります」

「そんなに座り心地悪い?」


 じろっと不信感を出しながら言うサツキに否定の言葉を述べる。


「こ、この車、凄いですよね。銃まで仕込んであるし、こんなことしないといけないんです?」

「本人次第でしょ。やりたかったらやればいい」

「ふうん。まあ、何かあったときに便利ですよね。昨日みたいな」

「万が一の備えだからね。死にたくないし」

「そりゃそうですよね」


 新人の中でサツキに対する印象が最初と比べ、大きく変わった。

 最初は無表情で敬語を遣う姿は模範な優等生だと思っていた。言われた通りだけをこなす、ロボットのような人かと。しかし殺人者のトップであるマルクと話す場面や、車の改造具合を見て、割と頭のネジが飛んでいるのだなと思った。


 真っ直ぐ道を進んで行くと仕事相手が立っていたので、減速して停車させ、後部座席に乗せる。

 無口な男は言葉を発することはなかった。それを受け、サツキも新人も喋ることはなかった。

 目標の居場所は繁華街から離れた場所にある静かなバー。

 そこの数メートル手前で降ろし、サツキと新人は車内で待機する。

 反対側の歩道に一人歩く姿が見える。人の通りは、まったくないわけではなかった。


「この時間、暇ですね。普段はこういう時何してるんです?」

「周囲の様子を見ながら待機」


 光が差していない分、周囲に気を配るのは当然だった。

 いつ攻撃されるのか分からない。


「そういえば、あの人結局どうして負傷してたんです?」


 新人の言うあの人、とはマルクのことだ。

 サツキは昼間、新人を残してたった一人で情報部へ行き、マルクの負傷原因を知った。

 事前に得ていた情報は役に立たず、相手が一枚上だった。相手は情報収集に長けているのか、うちがその分野で負けるとは、と意外に思ったものだ。

 情報を信じていたマルクはあっさりと撃たれ、瀕死になっていたらしい。

 その話を聞いて、情報部に苛立ったが失態ではないので責められない。

 しかし態度には出てしまうもので、情報部にいる人間に向かって「クソが!」と吐き捨ててしまった。謝罪する気にもなれなかった。

 会社に忠誠心はないが、マルクに対しては持ち合わせているらしい。立派な飼い犬になったなと自分でも思う。


「さぁ、なんでだろうね」


 その話を、新人にはしない。言う必要はないし、説明も面倒だ。


「サツキさん、運転手に必要なものって何です?」

「なんで?」

「早く昇格するための秘訣を知りたいんで」

「死に物狂いで頑張る」

「それだけです?」

「それ以外に何があるの。失敗したら死ぬ、って気持ちで取り組むといいよ」

「やば」

「あと、無難な受け答え。殺人鬼の機嫌損ねても死ぬ、って気持ちで取り組むことかな」

「やばい。けど、それだけでいいなら前の職場よりマシです」

「そうなのよ。割とホワイトな部分あるから、安心して」


 犯罪組織であるのにホワイトな部分がある、と聞いて新人は笑った。

 確かに、公務員として勤務していた時と比べて裏表のない人が多い。仕事は難しくはないのに給料が高い。命を落とすかもしれないが、飄々と仕事をこなせばいいだけだ。

 まだ名前すらもらえていないが、一人で仕事ができるようになったらある程度手を抜いて楽をしよう。機嫌さえ損ねなければ大丈夫だろう。

 楽観的に考えて、取り敢えずメインになることを目標とした。



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