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職業は、暗殺者専属の運転手です  作者: 円寺える


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第48話

 専属になってからというもの、入るメールは九割がマルクからだ。

 仕事を終え、マルクを乗せて帰路につくとケータイから通知音がした。マルクは横にいるので、誰からだろう。素早くメールを開くと、上からの連絡だった。内容を斜め読みすると、嫌いな仕事内容だったのでうげっと顔を顰める。

 専属になってから一度もなかったので、そういう仕事はメインかサブがやるものだと思っていたが専属であっても行うのか。


 途端に嫌そうに顔を顰めたサツキを不思議に思い、マルクはサツキからケータイを奪い取った。


「あ?」


 内容を読むとマルクもサツキ同様に顔を顰める。

 サツキは、マルクがその内容を歓迎するとは露ほども思っていなかったので、苦笑した。


「すみません、明日からのようです」

「はー、うっぜ」

「殺さないでくださいね」

「腹が立ったら殺す」


 奪ったケータイをサツキに放り投げ、足を組みなおして大きく息を吐く。


「明日から数日間だけですので、なんとか我慢してください」

「誰に言ってんだ殺すぞ」


 きっと我慢をする前に殺してしまうのだろう。

 それでも念のため、釘を刺す。


 明日からはほんの少しだけ大きな仕事だ。

 他部署をまわったりと、犬のように動く。それを見越しての、この嫌な仕事か。


 帰宅後は憂鬱な気分で就寝した。

 仕事に好き嫌いを持ち込むのはよくない。よくないのだが、仕方ない。これも給料のためだと思って頑張るしかない。

 起床して支度をし、待ち合わせ場所に向かうとスーツ姿の男が合っていた。

 見覚えのある顔だ。へらへらと貼り付けた笑顔は、クリスに頼まれ面接をした時のものだ。あの日三人を面接する予定だったが、男一人を除き死んでしまった。その男一人が後部座席に乗り込んだ。

 採用されたのか。悪くはなかったので、採用するのも当然か。


「よろしくお願いします」


 笑顔を崩さずに挨拶する男は礼儀正しいが、胡散臭さが拭えない。礼儀があるだけマシだと思い、サツキも「よろしく」と返した。

 平凡な容貌でその辺にいそうな若者。派手でなく地味でもなく、印象に残りにくい。今まで人生に波風立たせず生きてきた感じだ。

 サツキは車を出し、まだ明るい道を走る。

 太陽の下を走るだけでも嫌であるのに、見習いを乗せての仕事は最悪だ。

 そもそも後輩は好かない。教えることはもっと好かない。


 いつもなら話しかけてくるマルクだが、今日はもう一人乗っているからか一言も話さず、路肩に停車させてマルクを降ろした。

 終始無言のマルクは降りる際も無言で、サツキは専属になった初日を思い出す。

 まさか人見知りなのでは、と疑うがそんなはずはない。


 マルクが車内から消えると新人は、ふうと息を吐いた。


「凄く怖い人ですねー。圧が凄かったです」

「普段はもう少し抑えめだよ」


 下手したら殺されるぞ、と言いそうになったが脅しはよくない。

 教育班に知り合いはいないし、前職でも後輩に教える場面は少なかったのでどうすればいいか分からない。

 これからラボに行くが、ラボの説明もしなければならない。面倒だ。見て自分で覚えろ、という精神でいこう。


「新人くん、今日は研修何回目?」

「四回目です。三回とも違う人のところで勉強させてもらいましたけど、今日から三日はサツキさんの下で学べと言われたんで」

「三日なんだ」


 数日と言われていたが、三日に決まったのか。短いようで長い三日だ。その間にマルクの機嫌を損なうような行いをするなよと念を送る。


「サブとメインと専属があるんですよね、サツキさんは全部やってきたんです?」

「昇格して今に至るから、そうだね」

「どれが一番マシでした?」

「マシなのはメイン。良いのは専属」

「給料って結構違います?」

「全然違う。割が良いのはメインだけど、給料だけだと専属がずば抜けてる」


 やはり聞きたいところはそこだろう。

 給料以外を求めて入社するわけがない。やばそうな仕事だと知っていても給料が良いから選ぶ。同業のほとんどはそうではないかと、サツキは密かに思っていた。


「メインが割の良い仕事っていうのは、仕事量と給料のバランスが良いってことですか?」

「そうだね。そこそこの金でいいならサブでもいいけど。そんなに危険な仕事でもなく、給料が良いのはメイン」

「専属は危険ですか?」

「まあ、そうだね」


 こればかりはやってみないと分からないだろう。

 命の危機を感じたのは運転の仕事ではなく、マルクからの理不尽に向けられる銃口だ。


「ふうん、じゃあ俺メイン狙いで仕事します」

「メインは数が少ないから、狭き門だけどね」

「どのくらい狭いんですか?」

「ちくわの穴くらい」

「じゃあ、専属はどのくらい狭いんです?」

「ピアスの穴くらい」

「いや狭すぎです」


 確かに狭すぎたかも。

 しかしそれくらいの狭き門ではないだろうか。

 何せ幹部はたったの五人だ。その専属なのだからあながち間違いではない。


 その後も給料や仕事内容について質問攻めにあったのですべてに回答した。

 向上心はなさそうだが、いかに低燃費に仕事をこなすか、と考えているのが伝わった。



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