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職業は、暗殺者専属の運転手です  作者: 円寺える


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第41話

 海の上に架かるその橋は二車線なので追い越しは可能、隣にも並べる。橋の形状などを思い出し、脳内でカーチェイスを行うが残党の車種も何も分からないので、妄想しかできない。


「そろそろだな」


 画面を見ると、そろそろ合流できる頃だ。

 この信号を左折すれば、見えるはずだ。


「あれだな、あの汚ぇシルバー」

「はい」


 間に車が一つあるので追い越し、残党の後ろにつける。

 数メートルも進めば橋に着く。

 マルクはライフルを取り出そうとしているが、そうなると上を開けなければならない。車から発砲するとなると目立ちすぎる。


「マルクさん、今回はもう少し待ってくれませんか」

「あ?」

「この橋でなんとかしてみます」

「なんとかって、なんだ」

「なんとかです。狙撃は橋を渡った後にしてください」


 狙撃するには車から顔を出さなければならない。

 逃げ場のない橋の上よりも、人気のない場所でしてほしい。

 サツキの思いが伝わったのか、マルクは口角を上げて「やってみろ」と言い放った。

 マルクの挑発的な声色に、サツキは元気よく「はい」と答えた。


 残党の進む速度に合わせ、メーターと目の前の車を交互に確認する。

 大体の速度を把握すると、既に橋の上だった。

 左側にある欄干は細く低い。

 一つ右の車線は前方も後方も車がなかったので、右側車線に移動して残党に悟られないよう並行して走る。

 マルクは左側にいる残党の車内に視線をやり、情報部から聞いていた人数に間違いがないことと、画面に出ている赤い光が左の車に間違いがないことを確認した。


 前方に車両はなく、サツキは薄ら笑いを浮かべた。


「マルクさん、衝撃に備えてください。窓が割れることはないと思いますが、念のため」


 体当たりでもするつもりか。取り敢えずその言葉通り注意だけしておこうと残党の運転手の顔を見ながら「あぁ」と答えた。


 サツキは一度車線ぎりぎりまで右側に寄り、その後すぐに残党の車へ愛車をぶつけ、アクセルを思い切り踏むと、残党の車は欄干に擦り付けられた。

 久しぶりの抗争に興奮し、乾燥した唇を舐めて少しだけ車体を離す。


「どう見てもあっちが重量あるだろ。押し負けるんじゃねえのか?」

「はい。普通にぶつけただけでは、そうなりますね」


 この愛車を見くびってもらっては困る。

 残党に速度を合わせ、小さなレバーを押し、その下にある光が点滅したのを確認すると、レバーの角度を変えて再度押した。

 すると、連続して銃声が聞こえ残党の車に多数の弾丸が食い込んだ。

 残党の車内を見ると、慌てふためいている。弾は車体を貫通して人体にも傷をつけたようで、運転手は必死に片手でハンドルを動かしながら、もう片方で膝を抑えている。


「あ?」


 マルクが座っているシートが小刻みに揺れる。

 窓は閉まっているので覗き込むことはできないが、きっと自分の下に銃があり、そこから撃ち込んでいるのだろうと予測したマルクは笑い声を上げた。

 ここまで改良された車は初めて乗った。恐らく他の運転手はここまでのことはしていないだろう。だから運転席にはスイッチやレバーがたくさんあるのかと、納得した。

 ただの安っぽい軽自動車ではない。


「ふふ」


 興奮が冷めないサツキは、残党の車両がふらつくと同時にまた愛車を勢いよくぶつけた。

 力のない車両は欄干にぶつかった衝撃で右側のタイヤが二つ地面から離れ、浮いた。それを見逃すことなくサツキは何度も体当たりを繰り返す。


「死ね死ね死ね!」


 そのうち、残党を乗せた車は欄干を超え、海へ転落した。


「ふふ、ふふふ」


 転落を確認したマルクは、愉快そうに笑うサツキに視線を移す。

 これ以上ないくらいに口角を上げ、眉を八の字に下げながら三白眼を輝かせるサツキの表情を見て「悪魔だな」と褒め称えた。


 周囲には他の車両もあり、目撃されてしまったサツキは急いで橋を渡った。

 出しっぱなしにしていた銃を収めるためレバーを押し、興奮した状態で運転を続ける。


「お前、結構やばい奴だな」

「ふふふ、楽しかったです」

「顔、すげえことになってんぞ」

「だって久しぶりだったんですよ、ふふ」


 ハンドルを持つと性格が変わる人間はいるが、こいつは車で抗争すると性格が変わるのかと、マルクは冷静に分析した。

 以前も車から爆弾を出して後方車を吹っ飛ばしていたが、あれはただ爆弾を落としただけなので興奮しなかったのだろう。


「海の中にぽちゃん、って、ふふ。私の車より大きいのに、ふふ」


 マルクは、ぶつぶつと独り言をやめないサツキに、狂っている女だなと少し引きながら、普段のサツキに戻るのを待った。

 我に返ったサツキは羞恥を隠しながら、キリっとした表情を作ったが、その変わりようにマルクは爆笑し帰宅後も煽り続けた。


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