城塞都市
遥か昔、この星は現代地球のように、様々な土地に様々な人種が住んでいた。
しかし、ある時空から黒い霧のようなものが星を包んだ。その黒い霧を浴びた人々や動物達の半数以上が亡くなってしまった。
人々はとても悲しんだ。しかし、悲しみに明け暮れてる時間はなかった。動物であったものは凶暴になり人々に牙をむくようになった。人々は団結し、凶暴になった動物達を討伐していった。
しかし、動物達の中に不可思議な術を使う奴らが出てきた。人々の中にも不可思議な術を使える者が出て来て状況は一時好転したかに見えたが、その時には数の暴力には勝てず、これにより人々は徐々に追い詰められて行った。凶暴になった動物達を魔物と呼び、ふかしぎな術は魔法と呼ばれるようになった。
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学がこの星に飛ばされてから約5年後、中央大陸の都市には精鋭が集っていた。現在、人類が最期の地と呼んでいる中央大陸は周りは荒れ狂う海に囲まれている為、外界からの強力な魔物が襲来することは滅多にないが、年に数回は"はぐれ"と呼ばれる魔物が襲ってくる。周りが海に囲まれている為、多くは空を飛ぶ魔物が多い。
中央大陸にいる魔物のほとんどは比較的弱いが、外界からやってくる魔物は強さが段違いである。
一匹で街を破壊尽くすほどの魔物であるため、街や都市には国に雇われた通り名持ちの冒険者や騎士達が駐在している。
通り名持ちの冒険者が居ればはぐれ数匹ほどなら瞬殺できる能力を持っている場合が多い。
「おいおい。はぐれが出たって救援要請きたから行ってみればワイバーンの子供じゃねぇか。こっから撃ち落としていいかい?」
怠そうに話した彼は、"爆撃"のゲイン。主に火炎系の魔法を得意にしており、彼の魔法を放った後には全てが消し炭になり、なにも残らないという。
「撃ち落とすならいいが、ゲイン殿の場合消し炭にするであろう?出切れば、素材が欲しいので相手の飛行能力を奪っていただきたいのだが・・・・。」
頭を掻きながら困ったように言う騎士団長。
「しゃーねーか。あいつの肉は旨いからな。ちゃんと食わせろよ?そんじゃ、炎の槍」
鋭く小さな炎の槍がワイバーンの翼を貫き落下していく。
じゃあ後はよろしくーと手を振りながら去っていくゲイン。
「腕はピカイチなんだがな・・・・・。いや、今はいいか。総員!!ワイバーンを討伐せよ!!」
「「「おおぉぉぉぉ!!!!」」」
時を同じくして、別の名持ちの冒険者が城塞都市アルーンに来ていた。
この城塞都市アルーンの地下には外界に続く地下洞窟がある。地下洞窟の先には魔物が蹂躙闊歩している大陸があり、この先に行って戻ってきた者は中央大陸の英雄ガズールしか居ない。
そんなガズールも数年前に「旨い肉食いたいからちょっくら行ってくるー」と言ってから未だに戻ってきていないことから、恐らくは魔物にやられてしまったのだろうという意見が大半だった。
そんな危険な場所でも行かなければならない理由が名持ちの冒険者のリンにはあった。
リンの通り名は"閃光"。誰の目にも止まらぬ動きで魔物を狩っていく事でその名が付けられた。そんな彼女は今年で20歳になるが、6つ離れた弟のカイがいた。
カイは数ヶ月前から、病を患っており、医者に見せた所このままでは1年持てばいい方だと告げられた。大陸の有名な医者を回ってみたが同じような事を全員に言われたが、もしかすると外界にある魔の大陸にあると言われている神草ならば治るかもしれないと言われた。
1人で行くなど自殺行為でしかなかったが、他の名持ちに断られてしまった為、もはや1人で行くしかなかった。
「リンちゃん本当にいくのかい?弟さんのことは聞いてるが、1人ではとても・・・ガズール様さえいてくれたら・・・。」
地下洞窟の門番の1人が気遣ってはくれたが、もはやリンには選択肢がなかった。
「確かに師匠さえ居てくれればと何度も思ったわ。でももう覚悟は決まっているの。心配してくれてありがとう。私がやらないとこのままじゃカイが死んでしまうもの。絶対にカイの病気を治す薬を取ってくる。必ず戻ってくるから。」
「あぁ。必ず戻ってきなよ!無事を祈ってる。」
こうしてリンは地下洞窟に入っていった。
洞窟の入り口に門番こそ居るが、洞窟から魔物が溢れてきたことは一度もないため、恐らくこの洞窟に無断で入っていく冒険者を見張っているのだと思う。
洞窟の中は仄かに明るく、道幅も大人3人が余裕を持って並んで歩けるくらいには広い。
ちなみに洞窟の中が明るいのは、特殊な鉱石が魔力に反応して光っているからだと言われている。
リンが歩く音だけが洞窟内に反響している。魔物が居ないとも限らないので、警戒しながら進んでいく。ここまで、数時間歩いてきたが、魔物も居らず真っすぐ続く道しかない。
恐らく、地下通路で隣の大陸まで渡れるとするのなら、5日位はかかるだろうという憶測はできたが、さすがに何もない道を真っすぐ警戒しながら進むだけでもかなりの疲労だ。
「さて、少し休憩でもしようかしら。」
腰につけていたポーチから、軽食の干し肉とカップを取り出す。この手のひらサイズのポーチはリンの生命線でもある。拡張ポーチという、見た目の小ささとは違い、これ一つで十畳ほどの部屋位まで物を入れることができる。
残念ながら、ポーチに入れてるからといって、中の時間が止まるといった代物ではない。もしかしたら何処かにはあるのかもしれないが、現状の技術ではこれを作り出すのが精一杯のようだった。
少し休んでからリンはまた歩き出し警戒しながら洞窟の中を歩いていく。警戒しながら歩いていると遠くのほうに扉が見えた。
「あからさまに怪しすぎるわね。さすがに無警戒に開けるわけにはいかないし。」
扉の前まで行くとわかったが、無駄に豪華な扉で逆にものすごく怪しさがでていたが、なにがあってもいいように警戒しながら開ける。
その先は、
広大な森が永遠に続いていた。
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