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圧倒的強者

 スーは悪気は全くないのだが2人の事を振り回し、ずんずんと大股で歩いて行くが元々が小さい為、歩く速度は6歳児位だった。ガクとウィリアムはそんなスーの姿を見て苦笑いしながらもスーの事を追い越さないように後ろをついて行った。


「ここは私が贔屓にしている装飾店【蛙の尻尾】だ。私のこのブレスレットもオーダーメイドで作って貰ったんだぞ!」


 そう言って自慢げに腕をガクに見せびらかしてきた。


「へー、こんな細かい彫刻も刻めるなんてかなり腕がいいんじゃねーか?ブレスレット自体も派手すぎないし、色もスーの身体の色にあってるな。」


「乙女の身体をジロジロと見るな!この破廉恥がッ!!・・・まぁよい。文句の1つも言いたいところだが、私はお姉さんだからな。我慢してやろう。そんな事より、中に入るぞ!」


 ガクはスーの圧倒的理不尽な言葉をまるで気にせずに蛙の尻尾に入って行った。ガクが少し大人に近づいた瞬間だった。


「あら。店の外が騒がしいと思ったらスーじゃない。それとウィルも久しぶりね。こんな所に来るなんて珍しいじゃない。それと、店の外にいる人間もお客様かしら?」


「おい!何をしているんだ?突っ立ってないで早く店の中に入れよ!」


 ガクは2人の後に続き店の中に入って行こうとしたが、入れなかった。いや、入ることを身体が拒絶していた。


 何だこの女・・・身体が動かない?!


 身体が何かに縛られたように、指先さえも動かせなかった。


「悪戯もほどほどにな、ミーフィアよ。威圧をしておったらガクが入れんだろう。」


「ふふっ。この町で感じたことのない気配がしていたからね。ごめんなさいね?中に入ってらっしゃい。」


 ミーフィアが威圧を解いた瞬間、ガクの身体は動けるようになった。自分の身体に異常がない事を確認すると、警戒しながら店の中に入って行った。


「すごい警戒のしようね。改めまして、私は蛙の尻尾の店主のミーフィアよ。ガク君・・・だったかしら?さっきは怖がらせてしまってごめんなさいね。」


「こちらこそよろしくな。というか人間・・・じゃないよな?」


 ミーフィアは透き通るような水色の髪をした気品溢れる美しい人間の女性に見える。歳はおそらく20半ば位だろう。しかしガクは、あのような威圧を放てる者が人間の女性とは思えなかった。


 スパルタクスの殺気がそよ風に感じてしまう程に、ミーフィアが放っていた威圧は凄まじかった。もし、ミーフィアが威圧ではなく殺気を放っていたら恐らくガクは気絶をしていたことだろう。



「あら?初対面でいきなり乙女の秘密を探ってくるなんて、少し強引なんじゃないかしら?」


「別に隠してるわけじゃあるまいし、教えてやればいいじゃろうが。」


「駄目よ。男の子っていうのはね?強いだけじゃなくて、女性に対して紳士でなければならないのよ?私の悪戯で気絶しなかったのは及第点だけれど、女性の扱い方に関しては減点ね。ガク君が女性に紳士に接することが出来たら、その時は私の秘密を教えてあげるわ。」


 スッと目を細めてミーフィアはガクを見た。その瞬間ガクは蛇に睨まれた蛙のように身体が硬直してしまった。



「ミーフィア!!今日はお願いがあってきたんだ!!この魔石を指輪に付けれるようにしたいんだけど、お願いできる?」


 流れをぶった切るように話題を変えてくれた事によってガクは動けるようになり、この時ばかりは内心でスーに感謝をしていた。



「全く・・・スーも女の子なんだからもう少し落ち着きを持たなきゃ駄目よ?魔石を指輪にね・・・魔石には魔法が込められているみたいだから、魔力の伝導率を阻害しないようにミスリルでリングを作るわね。これ位ならすぐ終わるからそこに座って待ってなさい。」


「あー・・・もし良かったらさ、見ててもいいか?どんな感じで作るのか気になってさ。」


「いいわよ。じゃあ奥の作業部屋に行きましょう。ウィル、少しガク君を借りてくわね。」


 先程まで警戒していた事も忘れてミーフィアに付いていってしまう。ガクは装飾品を作る瞬間を見てみたいという好奇心を抑える事が出来なかった。


 作業部屋の扉を開けると中は10畳程の部屋に棚とテーブルがあり、棚の中には様々な鉱石があり、鉄を始めとした鉱石からガクも見たことのない鉱石まで数十種類の鉱石が棚に飾ってあった。


「それじゃあこのミスリルの鉱石からまずは不純物を取り除いていくからね?」


 そう言うとミーフィアは棚から薄く銀色に光る鉱石を取り出しテーブルの上に置くと、手を鉱石の上に置いたかと思うと鉱石が光り出し、光が収まった時には鉱石に含まれていた不純物と先程よりも綺麗に光るミスリルのインゴットにわかれていた。


「へー、初めて見たけどこんな風に魔法でできるんだな。」


「ふふ。じゃあ次はこのミスリルでリングを作っていくわよ。」


 ミーフィアは10円玉サイズのミスリルのインゴットに自身の魔力を送り込み、指先をクルクルと動かすと次第にミスリルは形を変えていき、指輪の形になった。


「後はこの魔石を指輪にはめ込んで定着させればいいわね。ところでこの魔石はガク君が魔法を込めたのかしら?」


 指輪に魔石を定着させたのを確認すると、ミーフィアはガクに近づき聞いてきた。


「そうだけど・・・なんか問題でもあるか?というか近い!!」


「あら?意外と可愛らしい所もあるのね。あのね?魔石に魔法を込めることは高等技術よ?魔石に元々ある魔力と魔法が反発しあって上手く魔法が魔石に定着させるのが難しいのよ。でもこの魔法石は私が今まで見た中で1番無駄がなく綺麗だわ。なんの魔法かは分からないけど、魔法陣に綻びが見当たらないことから、少し魔力を流せば発動もするでしょうし。ちなみにこれはなんの魔法が込められてるの?」


「そうなのか?やっぱりこれってすごい事だったんだな。この魔法石は翻訳の魔法が入ってるよ。」


 この魔法石を作るに至った経緯をミーフィアに説明した。


「そんな魔法があるのね・・・魔石に魔法を組み込むのは熟練の魔道具士でも数時間はかかるのよ?それを一瞬の内に出来てしまうなんて・・・ガク君は今魔石持ってる?私にもその魔法石作って見せてほしいの。」


 隠すような事でもないのでガクは先程と同じように魔石に魔法を込めた。


「やっぱり私が知っているやり方ではないわね。ところでガク君・・・・あなた本当に人間なのかしら?」


 ガクは驚いた。なぜなら自分でも本当に人間なのか分からなかったからだ。


 自分を鑑定した時も種族が人間?になってたし、やっぱり俺は人間じゃないのか?それとも、地球の人間とこの世界の人間は似ているようで全くの別物なのか?考えても答えはでないからこの事は無視してたけど・・・。


「なんでそう思ったか知らないけど、初対面の男に聞く質問か?」


「ふふ。やり返されてしまったわね。答えたくなければ答えなくていいわよ。匂いよ・・・あなた人間の匂いがしないもの。」


「あなたに興味が湧いてきちゃったわ。」舌なめずりしながら小さく呟き、妖艶な雰囲気を出しているミーフィアにガクは目を奪われていた。


 具体的にはミーフィアの”瞳”にくぎ付けだった。



 黒だった瞳は真紅に染まり、その瞳は人間の物ではなく爬虫類のように変わっていた。


 ガクが一番最初に思い浮かべたのは龍種。”竜”のような紛い物ではなく”龍”。瞳を変えただけで一気に部屋の空気が重苦しくなり、ガクは立っていることすらできなくなっていた。


「魔法石の作り方を見せてくれたお礼よ。それでは戻りましょうか。」そうミーフィアが言うと先程までの空気が嘘のように消え去り、瞳も元に戻っていた。

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