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精霊との出会い

「ガクならばそのような魔道具を作れても不思議はないのぅ。それさえ使えれば問題が起きた時も助かるんじゃがな。」


「多分ちゃんと出来てるとは思うけどな。それにしても、魔道具作るのに集中してたから気付かなかったけど、やっぱり人間って珍しいのか?さっきから視線を感じるんだが・・・。」


「ここに居る者達は、恐らく人間を初めて見たと思うぞ?皆、珍しいからガクの事を見ているのじゃろうな。」


 どの位の期間ヒアステリアに滞在するか分からないし、愛想は良くしておいた方が良さそうだな。ん・・・?丁度こっち見ているのがいるから俺の朝日のような笑顔をお見舞いしてやろう。


 右前方の路地の間から頭だけひょっこりと顔をだしてガクの方を見ていて者がいた。その者はまるでタンポポが花を開く前の蕾のような頭をしていて、通常ならば目がある部分には小さな瞳のようなものが2つ付いていた。


 ガクの自称朝日のような笑顔を向けられたその者は、一瞬ビクッとしたかと思うと次の瞬間、頭がまるで花が咲くように開いた。開いた頭の中は数えるのも馬鹿らしくなるほどの尖った牙が生えており中々グロテスクだ。それを見た自称朝日のような笑顔の男は突然の事に驚き固まっていた。


「変な顔をしおって、何をしておるんじゃ。ん?ドリヤード様がガクの事を気に入ったようじゃのう。姿をお見せになるなど、珍しい事もあるんじゃな。」


 あの宇宙生物みたいなのがドリヤード?!怖ッ!!ドリヤードって木の精霊とかだったよな。もっと可愛いかと勝手におもってたわ・・・。

 と、とりあえずこれ以上ドリヤードには関わらないでおこう・・・怖いから。


 そんなガクの気持ちとは対照的にドリヤードは奇声のようなものをあげながら、路地から出てガクにどんどん近づいてくる。


 げッ!!俺に近づいて来てる?!いや!きっと俺の後ろの奴に用がある・・・はず。


 最後の希望を頼りに後ろを振り返るがそこには誰もいなかった。


「えーと、なんか俺に用か?といっても言葉が通じねぇか。」


「何を言っておる。先ほどガクが作った翻訳の魔道具を使ってみればいいじゃろうが。ドリヤード様と話せる機会なぞ早々ないぞ?」


 ぐッ・・・試してはみたいけど、なんとなく使いたくはない・・・というか関わりたくない。見た目的に。


 渋々ではあるが魔道具に魔力を送りながら、会話をしてみることにした。


「あー、あー、こっちの声聞こえるか?俺はガクって言うんだ。」


『おどろき・・・きこえる・・・がく・・・ぷれぜんと・・・。』


 見た目とは違い、可憐な少女のような声でガクに話しかけると、ドリヤードの身体から出た小さな光がガクの胸に入り込んできた。


「おわッ!!なんだよこれ・・・あれ?ドリヤードは?」


 ガクはとっさに辺りを見回したがそこにドリヤードの姿はなかった。


「精霊の加護・・・じゃと・・・!?ガクが気に入られているのは見て分かったが、まさか加護まで渡すとは・・・さすが、アステリア様が選びし者ということか。」


「精霊の加護ってなんだ?というかそんな珍しい物なのか?」


「気に入られた程度なら珍しいで済むじゃろうが、加護を与えるとなるとそんな言葉では済まされないじゃろうな。しかし、今のドリヤード様にそのような力を授ける余力はないはずじゃが・・・。」



 なんでもウィル爺がまだ人間だった頃は、アステリアが神様ってことで皆は信仰してたんだけど、それとは別に精霊というのも信仰の対象になっていたらしい。


 元々精霊はアステリアの眷属って事で昔から存在していて、姿を人前に現すことはほとんどないものの、人々や動物が豊かな生活ができるように陰ながら助けてくれてたということで信仰の対象になったらしい。


 歴史上、精霊が人に加護を与える事は何度かあり、加護を貰った人間は不思議な力で世の中を豊かにしていったという伝承があるそうだ。


 じゃあ俺もなんか出来るようになってるのかと思って期待をして鑑定してみたんだけど・・・。


【木の精霊の加護 小 】


 木の精霊ドリヤードの加護。

 植物系統の魔物から敵対視されにくくなる。

 力が弱まっている為、上記の効果しかない。


 これだけだそうだ・・・。これなんか俺に得あるか?損はなさそうだからまあいいか。


 それとドリヤードが弱っているのにも理由があって、昔は人間が無駄に環境を破壊するような事をしなかったし、精霊達のお陰もあって自然溢れる大地が広がっていたけど、魔力にこの星が覆われてから状況が一変した。


 なにも魔力の影響を受けたのは人や動物達だけではなくて、精霊達も被害を受けたらしい。


 精霊達も魔力の影響で消えていったり、あるいは魔物のように狂暴になってしまったり、多くの精霊達が数を減らしていってしまった。


 数を大幅に減らしてしまった精霊達だけでは、豊かな大地を守り切れるはずもなく、徐々にこの大陸から緑が失われてしまったようだ。


 そんな精霊達でもこのヒアステリアにある湖とそれを囲む森だけは今まで守りきっていたようだった。



「やはりドリヤード様の力は弱まりつつあるのか・・・。最近は町の方に遊びに来ることも少なくなってきておったからな・・・なんとかならんもんかのぅ。」


 俺もできるならなんとかしてやりたいとは思うけど、現状打てる手が俺にはないんだよな・・・。



「待たせたな虫けら!!その魔道具の性能を試して下さるお方を連れてきてやったぞ!」


「もう虫けらって言っちゃってるじゃねーか・・・もう俺は呼び方なんて気にしないから呼びやすい方で呼んでいいぞ?」


 2人の間に流れていたしんみりした空気をぶち壊しながら現れたスーの両手には青色の物体が乗っていた。


「馬鹿にするではない!!貴様の名前位憶えておるわ!虫けらは・・・そうだ!!貴様の通り名だ!!これから私が付けてやった通り名を名乗ることを許す!!」


 とってつけたように言いやがって。【虫けらのガク】はさすがにないだろ。こんなのが浸透した日には顔隠してなきゃ外なんて歩けなくなっちまうじゃねーか。


「通り名なんて俺にはまだまだ実力不足だし、遠慮しとくよ。ところでさ、その抱えているのは一体なんなんだ?」


「ほう。見た目によらず謙虚な奴よ。よかろう、私が貴様の事を認めたその時にまた新たな通り名を付けてやろう。ふふッ・・・よくぞ聞いてくれた!この方は皆大好き!!ヒアステリアのお掃除屋さんのスラリンじゃ!!」


 ででーん!!と、効果音が付きそうな位に胸を反らしながら答えるスーの腕の中で、プルプルと誇らしそうに震えているスラリン。


 スラリン・・・だとッ?!スーがあの名作を知っているはずはないよな・・・こんな偶然があるとは思わなかったな。


「えーと、種族はスライムだよな?センスが良い名前だけど、スラリンって名前はスーが付けたのか?」


「貴様のような脳みそが筋肉で詰まってそうな奴にもこの名前の良さを分かるとは・・・その通りだ!この名は私が敬意と尊敬を込めて付けた名前じゃ。砂嵐の日も、たまに降る雨の日も毎日欠かさずに、お掃除をしてくれるスラリンと私はいつか話をしてみたいと思っていたんだ。早速その魔道具とやらを使って、私にスラリンと会話をさせてくれ!」


 俺には何言ってんだか分からないけど、とりあえずスルーしといて魔道具の使い方をスー教えてやった。めんどくさいことになりそうだったので、ドリヤードと魔道具を使って会話が出来たことは話さないでおいた。


「私の名前はスーというのだがスラリン聞こえているか?」


『・・・・・』


「どういうことじゃ・・・私とスラリン、会話こそできないが気持ちは繋がっていたと思っていたのに、まさか私の一方通行だったということなのか?!」


「恐らくじゃが、スラリンはスーの腕の中で寝ておるだけじゃと思うぞ?」


「はッ?!そういう事だったのですね。なんという愛くるしい寝顔でしょうか・・・しかしこの魔道具、手に持ちながらだと少々不便ですね。」



「確かに小さいから落としたら探すのも手間だし、ネックレスとか指輪に魔石を付けてしまえば無くすこともなくなりそうだな。」



「それだッ!!宴の準備はまだ出来ていないはず、それならば装飾品を作ってくれる専門店【蛙の尻尾】に向かいましょう!!」


 こっちは1日中歩きっぱなしで疲れてるんだよな・・・いつになったら広場に行けるんだろうか・・・

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