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鮮血の騎士

 あれからガクはヨロイアントの魔石を20個ほど集め、魔力を吸収していた。


 んー、仮説でしかないけど倒した魔物の種類の魔石によってステータスが変化するってことか?

 ヨロイアントは防御のパラメーターが上がったけど、その外には変化が今の所はないな。


 色々な魔物の魔石を集めてみればわかるんだろうが、今は飯を探さなきゃな。


 ヨロイアントからのドロップは魔石とヨロイアントの甲殻とアリの蜜であった。アリの蜜は思っていたより甘く、美味しいのだがさすがにこればかりでは腹は膨れない。


 ただ、このままだと自分がどこにいるか分らんということで、考え付いたのがマップ機能だ。マップのことをイメージしながら魔法を発動してみると、自分が進んできた道が表示させることができた。さすがにダンジョンの全体像をマップに表示させることはできなかったけどな。


 マップ機能を使いながら進み、道中ではヨロイアントの集団に出くわしたりしたが全部アリンコホイホイで倒していった。

 しばらくマップを埋めつつ進むと上に進む階段を見つけた。


 これは上に上がるのが正解なのか?まだこの階のマップも埋まってないしとりあえずは見るだけにしとくか。


 階段を上っていくとそこは砂漠が広がっていた。空気は乾燥しており、気温もかなり高い。


 砂漠地帯ってことは、中央大陸を中心にすると東側の大陸にあるダンジョンってことか?厄介だな・・・人に会うとすると中央大陸に行かなきゃいけないんだけどかなり遠回りになるな。


 中央大陸は日本のように周りを海で囲まれており、そのまわりには主に八つの大陸がある。ガクがいる大陸は中央大陸から丁度、北東の場所にある大陸であり、海を渡って中央大陸に向かうのは現実的ではない。というのも、当たり前だが海にも魔物は存在している。そんな中を仮に船を使ったとしても一か月以上かかる距離をガク一人で乗り切れるとはガクは思わなかった。


 だったら、大森林の中にある管理者が設置した転移の門から中央大陸へ向かった方が遥かに安全だな。ここが砂漠地帯のダンジョン1階層ってことが確認できたのは不幸中の幸いだったな・・・・最深部に飛ばされてたらかなりの確率で死んでたな。とりあえず、このダンジョンを攻略してステータスを底上げしてから行くか。



 ガクはそう意気込むとダンジョンの攻略を開始した。


 ダンジョンを進んでいくとどうやら1階層はヨロイアントの巣になっているようで、他の魔物の姿が見えない。ガクにとってもはや、ヨロイアントは倒し方が確立してしまったため、ただの作業になっていた。


「魔石のドロップは美味しいんだけど、他の素材はもういらねぇな。一応インベントリに突っ込んでおくけどさ、今ほしいのは飯なんだよな・・・。」


 ダンジョン攻略を始めてから半日以上の時間が経っている。水と蟻の蜜を食べてきている為そこまで空腹感はないが、さすがにこの現状がいつまでも続くとなると気が滅入ってくる。


 2階層を目指しながら歩いているとようやく地下に続く階段を発見した。地下に続く階段を下りていくとそこは1階層と変わらない洞窟の景色が広がっていた。


 その状況にげんなりしつつも気を取り直して先に進んでいくと、奥の方から僅かに音が聞こえる。音をたてないように慎重に進んでいくとやがて広い空間にでた。


 そこには、ヨロイアントの集団と一人の騎士が戦っていた。


 全身を鮮やかな朱のフルプレート騎士が人の背丈ほどもある大剣を軽々と一振りすると、ヨロイアントの集団がまるでバターを切っているかのように切られていく。ヨロイアントの集団は騎士により駆逐される様子をガクは唖然としながら見ていた。


 あんなに固い甲殻を真っ二つにするとかどんだけすげぇんだよ・・・。まてよ?そもそもこんなところに人間がこれるのか?しかも一人で・・・!!!


 そんなことを考えていると騎士と目が合った。


「む?こんな所で人間に会うとは珍しいこともあるもんじゃな。そんな所で呆けてないでこっちにこんか。」


「いや、普通に考えて1人でこんな危険地帯にいるなんて怪しすぎるだろが。お前何者だよ?」


「それはお主も同じじゃろうが。ふむ。まぁよい。儂の名はウィリアム・マーシャル。今はなき国の騎士団長をしておった。まぁ、はるか昔のことだがな・・・。」


 そういいながら、ヘルムを脱いだ顔を見てガクは警戒を強めた。



 おいおい....骸骨って、やっぱり人間じゃなくて魔物じゃねぇか!!会話が成り立つってことはかなり高位のスケルトンってことか?



「驚いたじゃろ?なに、取って食べたりはせんよ。お主もここまで来れる位じゃ、儂との力量の差がわからぬわけでもあるまい。殺すならとっくにやっておるわい。」


 骨なので表情はわからないが、イタズラが成功したときのように、楽しげなのが声色からわかる。


「確かにそうかもしんねぇけど、なんでアンデットになっても自我があるんだ?そんなの聞いたことねぇぞ?」


「確かに儂も他のアンデットが自我を持っとるのは見たこともないのぅ。儂も詳しくは理解できていないのしゃが・・・」


 この爺さんの話では、黒い霧が世界を包み込んで数年が経った頃には多くの人間や動物たちが亡くなって、爺さんの住む国中が大混乱に陥っていたらしい。それと共に狂暴になった動物達が人間を襲い始めたということで、爺さん率いる騎士団が討伐に向かった。


 多くの犠牲を伴いながらも魔物達を順調に殲滅していったけど、数の暴力には勝てなかった。


 魔法を使わないで純粋な身体能力で魔物を倒すとか、この爺さんもそうだけどその頃の人間って結構化け物だったんじゃね?


 そんで、状況がかなり悪くなり色々揉めたらしいが、民たちを避難させる事になったんだが、強力な1体の魔物によって爺さん達騎士団は全滅したってことらしい。


「儂が気付いた時には、もうこの姿になっておったよ。人々が無事に逃げられたのかも分らんかった。部下達も儂と同じかと思ったのじゃが、儂だけのようじゃった。それから長い時、儂はもう滅んでしまったが、儂が愛した国があったこの土地を今でも守っているんじゃよ。最初は儂たちをこんな目に合わせた魔物達に恨みや怒りもあっての、手当たり次第にやり場のない怒りを魔物達にぶつけて殲滅しておったわい。そのようなことをしても結果は何も変わらんのにのぅ・・・今は丁度、魔物がダンジョンから溢れないように間引いていた所なんじゃよ。」




「そ、壮絶な人生歩んできてんだな・・・もしかしたらスケルトンになっても自我があるのって爺さんの固有スキルなんじゃねぇか?ちょっと鑑定してみてもいいか?」


 許可を貰ったガクは鑑定を行い魔法を発動したが、何かに弾かれるような感覚とともに鑑定は発動しなかった。


「わりぃ。無理みてぇだ。多分俺の今の魔力じゃ化け物みたいに強い爺さんを鑑定できないみたいだ。あーそれと自己紹介まだだったな。俺はガクだ。ウィル爺ってよんでいいか?」



「そうじゃったか。好きなように呼ぶとよい。ガクは不思議な魔法をつかうのじゃな。ところでガクは何の用でここにきたんじゃ?」


 ガクはこれまでの経緯をウィリアムに話した。


「そのようなことが・・・いや、あの日から今日まで起こったことを考えるとガクの経験したこともあり得ないことではないのぅ。してガクよ、先程の話ではダンジョンコアから魔力を吸収と言っておったが、人の身でコアにたまっている魔力を全て吸収できるのか?」


「時間はかかるかもしれないけど、やるしかないだろ?じゃないと魔力爆発でこの星が消えちまう。」


 ガクも時間はかかるのは承知の上だった。しかし、8つのダンジョンコアから果たして自分だけでどうにかできるのかは分からなかった。


「ガクよ。ダンジョンコアの魔力を消費させるのはガクにしかできないのかのぅ?」


「いや、ダンジョンの魔物や宝箱、トラップなんかもダンジョンの魔力から消費されてつくられてるぞ?魔物を倒せばコアが魔力を消費して新たに魔物を作り出すんだけど、そもそもこんなところまでこれる人間はいないだろう?」


「今は中央大陸に人間や亜人が住んでいるのじゃったか。ふむ・・・ガクはこの後ダンジョンコアを確認しにいくのじゃったな?儂もそれに同行しよう。その後に儂の仲間たちが住んでいる集落によっていきなさい。」



 確かに俺1人でダンジョン攻略してたら時間はかかるし手伝ってもらったほうがいいか。


 ガクはこうしてウィリアムと共にダンジョンの最深部に向かって行った。

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