プロローグ
「やべぇ!バイト間に合わねぇ!」
1人の青年が急いでいた。青年の名前は【八神 学】田舎の高校に通う高校3年生の18歳である。
「近道するしかねぇか...」
普段なら絶対に通らない、いや通りたくない道。
18歳にもなってまさか自分が、怖がってるなんて情けねぇな。身体がでかくなってくと、小さい時に触れた虫とかなんともなかったのに、今じゃ気持ち悪くて触れなかったりするからなぁ。まぁあれと一緒のようなもんか。
「気味が悪いんだよなー・・・ここ通るなんてガキの時以来か。」
少し不安にかられつつも意を決して道に飛び込み、走り続ける。
しばらく走ると小さな違和感を覚えた。鳥の囀りや虫の合唱が聞こえない。
久しぶりにこの道通ったけど、こんな静かだったか?いや、今はそんな事気にしてる暇はねぇな・・・急がねぇと!
夏の夕暮れ時なのにもかかわらず、蝉たちの声が聞こえないことに少し引っかかりながらも学は走り続けた。
しばらく走ると遠くのほうに立派な赤い鳥居が見えてきた。
近づいてみると鳥居の奥には立派だが、どこか寂れている神社があった。
「あ?こんなとこに神社なんかあったか?」
急いではいるものの妙に気になった。子供の時の記憶を思い起こしてみるが、やはり神社など無かったように思える。1度気になってしまったらもう神社の中を覗かずにはいられない。
「ガキの時はこんなのなかった気がするけど。ちょっと寄ってみるか。」
この道なら遅刻しなくて済みそうだし、10分位なら大丈夫なはず。それにしてもすげぇ立派だな!手入れされてる雰囲気はないし、寂れた感じが残念だな。
誰も聞いてはいないが、少し辛口の評価をしつつ中に入っていった。
鳥居をくぐり、中を見回ってみるとそこには見たことが無い像が道の両脇に立っている。
学が住む田舎町にある神社には、基本的には狛犬が両脇にあるといったことが多い。
だが、そこにあるのはヒト型の像で、顔の部分は抉れて無くなっている。大きさは学の身長が190なのに対し、それより少しだけ大きいくらいだ。
でっけぇ!いや、神社の本殿より主張激しいな!
顔が抉れてるのはさすがに自然になったとは考えづらいし、多分だれかイタズラでもしたんだろーな。
この場所も人通りは少ないし、ヤンキー達のたまり場にはもってこいだもんな。ひでぇことしやがる・・・ちゃんとした状態の像をみてみたかったな。
ヒト型の像で顔が抉れているのを見たら、普通は気味悪がるはずが、学は何故か時間がたつのも忘れてその像を魅入ってしまっていた。
どのくらいの時間が経っただろうか。
ギィーっと言う音で学は我にかえった。その音のほうを見てみると神社の扉が少しだけ開いていた。
「あれ?扉最初からあいていたっけ?風であいたのか?」
神社の本殿の階段を登り、扉に近づいていく。
扉の隙間から中を覗いてみるも、中は暗くてよくみえなかった。
「すいませーん。誰かいますか?」
人の気配はないものの、一応声をかけながら扉に手をかけ中を覗いてみると、そこには小さな木造のテーブルとその上に仄かに光る球体の物体が置いてあった。
学は少し戸惑いつつも、自分の中の好奇心を抑えきれず恐る恐る近づき、その不思議な球体を覗き込んでみた。
「すげぇ...なんだこれ?模様?文字みたいなのもあるけど・・・よく分かんねぇな。」
光る球体の中は、不思議な模様や文字がいくつもあり、それがうごめいていた。それを手に取り、中を覗いていると次第に模様や文字が形になってきていた。
「これって、魔法陣みたいだなー」と考えているとその球体は突如として眩い光を放った。
光が次第に収まった後、そこには学の姿はどこにもなかった。
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