星座なんか見てないでさ。私とイチャイチャしてよ?
「なろうラジオ大賞4」参加作品です。
彼に誘われて星を見に来た私のお話です。よろしくお願いします。
寒い夜だ。
モコモコのマフラーに目元まで顔を埋めて、坂を登る彼の後ろをついて行く。
体力のない私が夜中に山登りをするのは、天体観測が好きな彼に誘われたから。
所謂デートだと思ってたんだけど。こういうのって並んで歩いたり手とか握ったりしないものなの?
やっぱり私達って、
付き合ってはないって事かな。
木々が途切れ開けた場所へとやって来た。目的地に着いたようだ。
山の麓にある公園、彼の一番好きな場所。
「綺麗でしょ? 今日は特によく見えるね」
見上げれば、空一杯に散りばめられた星々だった。
「ふゎあ……」
星屑が零れ落ちてきそうな、幻想的な世界。
思えばちゃんと星空を眺めるのすら初めてかも。こんなに胸が弾むものだとは知らなかった。
空に心を奪われている間に彼はシートを地面に敷いて望遠鏡を組み立てていた。
私はそこに三角座りになり、寒さに縮こまった。
彼はレンズを覗き望遠鏡の操作に一生懸命で、私はその横顔を見つめる。
「冷えるね?」
「ちょっと待って。出来た、土星だよ? 覗いてみて」
彼に代わってレンズを覗くと、不思議な惑星の姿があった。
「すごぉい」
「でしょ。代わって? 次はもっと遠い星を見せてあげるよ」
彼はまたせっせと星を探し始めた。
「私、望遠鏡はもういいかな。こっち来て星座を教えて?」
彼は残念そうにするも、望遠鏡を手離し、私の隣に座ると空を指差した。
「オリオン座は知ってるでしょ? 三つ並んでるから見つけ易いね。その向こうにある明るい星がおおいぬ座のイヌの鼻になるよ。見える?」
私は彼の指差す先に星座を探した。宙に線をひいて明るい星と星を繋いでいく。
彼は楽し気に話を続けた。まるで子供のように目を輝かせて。
「それでシリウスとペテ――」
「ねぇ」
「あ、難しい?」
「じゃなくて。星座はもういいかな」
「もしかして、楽しくない?」
私は首を振った。楽しいんだけど、
「星より星座より、したい事あるんだけど」
面目つぶしちゃったかな。でもハッキリしたくて、
「私のこと好き?」
彼は唾を飲み込んだ。
「好きだよ。知らなかった?」
「じゃあイチャイチャしよ?」
固まる彼。
「私だって恥ずかしいんだよ?」
「うん、じゃあしよっか、イチャイチャ」
私と彼は、
不器用に体を寄せ合って、
くっついて、
見つめ合って、
恥ずかしくて私が吹き出しちゃって、
すると彼が肩を抱き寄せて、
私は胸にもたれかかって、
そして見つめ合う。
好き。
私も。
私の頬を覆っていたマフラーを彼が引き下げた。