変わってしまった世界で怪物退治をする話
「これか……」
男は目の前にある、渦巻く気配を感じてぼやく。
何もない平原の中に、光が渦巻いている。
その中にいる何かをくるむように。
それが目当てでやってきたのだが。
実際に目にするとため息が出てくる。
変わってしまった地球。
地磁気が異様に強烈になった世界。
そこでは様々な異常が発生している。
男の目の前にあるのも、そうした現象がもたらすものだった。
そこにあるのは、凝縮された地磁気。
今の地球には、こういったものがあちこちに発生する。
そして、それは更に厄介で面倒な危険を生み出す。
それが出現する前に、凝縮を解消したかったのだが。
今回は間に合わなかった。
そこには既に面倒をもたらすものが出来上がっていた。
凝縮した地磁気は、周囲にある物体を吸収して再構成していく。
そうして本来ならあり得ないものを出現させる。
獣人、魔獣、幻獣、鬼、悪魔……。
伝承や伝説で語られるもの達。
それが地磁気によって生み出されていく。
今も目の前でそれが形作られていく。
渦巻く地磁気を繭にして。
その中で危険な存在が生命を得ていく。
「しょうがねえ……」
面倒になった。
だが、やるしかない。
腹をくくって男は生まれてくる敵に向かっていく。
放置するわけにはいかないのだから。
生まれた敵…………怪物と呼ばれるそれらは危険だ。
ほぼ例外なく人間に襲いかかってくる。
少なくとも、これまでの例で友好的なものは存在しない。
あらゆる存在が、問答無用で人間に襲いかかってきた。
知性や理性がないわけではない。
むしろ、それらはしっかり備えている。
襲いかかるといっても、力任せに迫るだけではない。
動き方、戦い方などを考えて行動している。
それが出来るだけの能力を、人を襲う事に費やしてるだけだ。
しかも、超常的な力を備えている。
人を凌駕する筋力や体力、強靱さだけでなく。
炎や電撃を発生させ、体を瞬時に凍り付かせる。
魔術や超能力と言うしかない事をやってのける。
そういった能力を持ってるのが怪物である。
一対一で戦えば人間が勝つ可能性はない。
戦車や爆弾でも用意すれば話は変わるだろうが。
素手で戦える相手ではない。
そんな怪物を処理するために男はやってきている。
放置すれば、これらが人を探して動き出す。
そして、人里を襲っていく。
放置するわけにはいかなかった。
怪物だけではない。
人が変化した化け物もいる。
そういったものがはびこってるのが今の地球だ。
安全を確保するためには、戦って生存間を確保するしかない。
そんな危険な存在を前に、男も武器を手にしていく。
日本刀と、火縄銃。
地磁気の影響で、電子機器の大半が使えなくなっている。
そんな世界でこれらは、確実に動く貴重な兵器になっていた。
これを使える状態にして怪物に向かっていく。
今回出てきたのは、空を泳ぐ魚といったものだった。
細長い胴体に、手足のような長いヒレがついている。
背びれも尻尾も長くのび、一見するとそれなりに優美なものに見える。
だが、怪物である。
地磁気の繭から出てきたそれは、空中を泳ぐように飛び回っていく。
そして、通り過ぎていく時に衝撃波を周囲に及ぼしていく。
そこまで極端に早く動いてるわけではないが。
それがこの空飛ぶ魚の能力なのだろう。
そんな怪物に、男は銃口を向ける。
まずは一発、相手にたたき込む。
どれだけ効果があるかわからないが、試しに攻撃をしていく。
相手が飛んでるので、接近戦が出来ないというのもある。
引き金を引いて放たれた銃弾は、狙い通りに魚に当たった。
だが、その威力は大きく減退している。
魚に届く直前に、速度が一気に落ちた。
体の周囲に見えない壁や膜でもあるように。
「やっぱりそうだよなあ」
男は特に落胆する事なく呟いた。
予想していた事だ。
怪物はたいてい地磁気をまとっている。
それが銃弾の威力を大きく削ったのだろう。
地磁気はそうした防御的な効果をもたらす。
また、魚が通り過ぎる時に発生する衝撃波。
それも地磁気によるものだろう。
速度だけで発生させるには、魚の動きは遅すぎる。
やはり、魔術や超能力的な力を用いてるようだった。
ただ、銃弾の効果が全くないというわけではない。
体を貫通したりえぐったりは出来なかったが。
鉛の塊がそれなりの速度でぶつかったのだ。
打撃は確実に与えている。
それが証拠に、空飛ぶ魚がもだえ苦しんでいく。
動きも若干鈍る。
男はそれを見て、素早く銃弾を込め直していく。
ボルト・アクション方式の火縄銃の薬室を開く。
そこに円錐形の銃弾と、火薬をくるんだ紙巻を入れる。
そうしてから薬室を閉じて、火縄を装着する。
再び射撃できる状態にしてから、再び魚へと向かっていく。
痛みにもだえる魚。
そこに向かって走って行く。
その際に、体の中にある気力を用いていく。
身体能力の強化にそれらを使い、速力を上げる。
その意思や気力の働きに地磁気も反応していく。
男の体が淡い光を放つように見えた。
オーロラ現象のようなものだ。
地磁気に応じて光が反射する。
それは空飛ぶ魚の周囲でも発生していた。
能力を強化する男にも、当然起こる。
地磁気の影響を受けてるのは怪物や化け物だけではない。
人も相応に影響を受けている。
それは良いことばかりではない。
だが、悪いことだけというのでもない。
人を化け物にし、世の中に怪物を出現させもしたが。
人に多大な力を与えもしていた。
その力を使い、男は自分の能力を強化する。
空飛ぶ魚に追いつけるように。
魚もかなりの速度で動いている。
普通の人が走って追いつけるものではない。
だが、肉体を強化すればそれも可能になる。
そして、魚のいる高さまで跳躍する。
助走もあって、飛び上がると数メートルの高さまで届く。
魚が滞空してる高度だ。
更に気力を噴射していく。
そう意識する事で、地磁気などが反応していく。
ロケットエンジンのようにそれらが後方へと吹き出されていく。
それは魚が空を飛んでるのと同じ原理だった。
魚も泳ぐように飛ぶ時に、おなじように気力を用いて地磁気を動かしている。
男もそれとおなじようにして空を飛ぶ。
魚めがけて。
魚に向かって進んでいく。
手にした刀を振りかざす。
それを魚に接触する直前に振り下ろす。
刀にまといつく地磁気が、魚を覆う地磁気にぶつかる。
オーロラが散乱し、一瞬だけ地磁気が消えた。
その瞬間に男は、火縄銃を撃つ。
地磁気の守りを失った魚に。
空飛ぶ魚はそれによって心臓を撃ち抜かれた。
致命傷だ。
助かる事は無い。
魚はそれでも即死は免れたが。
心臓を破壊されてはどうにもならない。
傷の再生も始まっているが、それが完了する前に死ぬ。
生まれたばかりの怪物は、こうして倒されていった。
それをなした男は、気力を用いて落下の速度を減退させて着地する。
そして、地面におちた魚に向かい、刀を振り下ろしていく。
確実に殺すために。
怪物が倒れ、危険は消えた。
もしこのまま放置していたら、怪物はより強力に育っていたかもしれない。
それを阻止できただけでも幸いである。
ただ、これで終わりというわけではない
荒れ狂う地磁気はそこかしこで怪物を発生させる。
その全てを倒して回るのは簡単ではない。
出来るだけ生まれる前に破壊する。
それが無理でも、まだ育ってない段階で処理する。
楽に仕留められる段階で片付けたいが、そう上手くはいかない。
大半の怪物は、生まれてからある程度育って人里までやってくる。
人の踏み込むことが出来ない場所で生まれた怪物がやってくる。
それだけはどうしようもない。
それでも、できる限り数を減らし、脅威を消していく。
損害を少しでも抑えるために。
男はその為に動いていた。
少しでも怪物を倒す。
化け物も倒す。
脅威を減らす。
その為に、危険な屋外で活動を続けていた。
終わりのない作業である。
危険もつきまとう。
それでも男はこんな仕事を続けていた。
性に合ってるのだろう。
危険であるのはわかっているが、他にやりたい事もなかった。
そんな男は、倒した怪物から地磁気を回収していく。
地磁気によって生まれた怪物は、多大な地磁気をその場に残す。
それを用いれば、様々な事が出来る。
怪物を生み出すほどのエネルギーだ。
必要な物資をその場で発生させる事も出来る。
食料に物資など。
消費した火薬や銃弾も、これを用いて生み出していく。
当然、当面の生活に必要な食料も。
更には、自分の能力の強化にも使っていく。
思考や判断、直観に反射、体力や強靱さなどなど。
そういった能力も地磁気によって増大させる事が出来る。
そうした事を済ませて、男はその場から立ち去っていく。
次の怪物を探すため。
少しでも多くを倒すため。
人類の未来と、自分の食い扶持のため。
どこに行けばいいのかはわかってる。
地磁気によって発生する響き。
頭の中に直接入ってくるようなそれの鳴る方へ向かえばいい。
そこに何かがある。
それが何であるかはわからないが。
確かめるためにも、そちらへ向かって歩いていく。
上手くまとめたら、長編などにしようとも思ってる
ただ、そこまでまとめるより先に、とりあえず先行試作ということで出してみた
気にいってくれるとありがたい
こういうのも良いと思ってくれたなら、ブックマークとか評価点とかお願い
「いいね」を押してくれるのも嬉しい
続きが読みたいなら、メッセージにて要望を
20220223
メッセージをもらって喜んでる
続きというか、本編というか
書ければいいなあとも思ってる
なんとか形にしたいもんだ
とはいえ、さて、どうやっていけばいいのやらとも
20230514
長編として書き始めてみた↓
「変わってしまったこの世界で、あらわれる怪物を倒して生き残る為にあがいていく」
https://ncode.syosetu.com/n5417if/