プロローグ
初めまして。このページを開いていただき、ありがとうございます。お目目汚しな物語ですが、少しでも時間つぶしのお供になれば幸いです。
ひとりの男が、薄暗い部屋の中で壁に貼られている2枚の写真を見つめていた。
男の視線の先にある一枚の写真には、人の良さそうな朗らかな笑みを浮かべた壮年の男性が写っている。けれど、その写真を見つめる男の目には、はっきりとした憎しみが込められていた。男がつぶやく。
「許さない。絶対に、許さない。」
小さいが、強い意志が込められた声だった。
男は、ポケットから折り畳みの果物ナイフを取り出すと、思いきりその写真に突き立てた。よくみると、その写真は、何度も突き立てられた跡があった。
男の視線が、もう一枚の写真に向く。その写真は、幼い男の子だろうか。仕立ての良さそうな服を着た黒髪の少年の顔は、黒いマジックで塗りつぶされていた。
「お前の大切なものを壊してやる。」
男は左手に持っていたグシャグシャのメモを開いた。
(7月21日 緑ヶ丘公園 15:00 )
「明日、決行だ。」
そう言って微笑んだ男の笑みは、狂っていた。
しばらく、続きます。