登城の前の····────
いろんな視点でも書いていけたらなーって思ってます。
今回はセオドリック視点を書いてみました。
読んで頂けたら幸いです。
───セオドリック視点───
今日は初めて従兄妹殿に逢えると思うとドキドキする。
僕も妖精王様から加護を貰ってるけど、その子は全ての妖精王から加護を授かってるみたいだし。
セオドリック·プラントン·スリズィエはプラントン王国の国王シルヴェスターの第1子としてこの世に生を受けた。
この世界には生まれた時に妖精から加護を授かる。
その加護を素に魔法が使えたりするのだ。
僕も生まれた時に風属性と光属性の妖精から加護を、水の妖精王から直々に加護を授かる事が出来た。
妖精王からの加護は本当に奇跡に近く、ここ数十年単位で授かった者がいるという情報は無い。
なので、妖精王からの加護を僕が授かった時は城中、いや王国中が歓喜した。
けど、僕が生まれた次の年に全妖精王から加護を授かった者が生まれたと王家に連絡が来て皆が驚いたと言っていた。
しかも、僕とは従兄妹になる子だという。
父上の弟で公爵のサミュエル叔父上の第1子で、女の子が生まれたみたい。
その子が全妖精王様から加護を授かってるって僕が4歳になった時に父上から聞いて、凄く興味が湧いた。
なぜ今までお互い会えなかったかは、僕もその子も妖精王からの加護を授かってる者同士で、まだ引き合わせるには早熟過ぎるとの事で、僕が4歳になるまで会う事が無かった。
···でも、向こうは母上のお茶会に最近来てたみたい。
僕が帝王学を学んでいる時間帯だったから会えなかった。
母上もなかなか焦らしてくれる。
ちなみに、僕は言葉を理解するのが凄く早かったみたい。
自分で言うのも何だが他人からは天才だの頭脳明晰だの言われる。
大人が話してる内容も全て理解出来たし、学ぶ事に対しては好きな部類だ。
自分ではそれが普通だと思ってた。
4歳だけど、帝王学含め加護持ちで魔力持ち·魔法が使える者が、14歳から通う王立学園の一学年の始めくらいの学力は既に持ち合わせてると、この間家庭教師に招いてる先生に言われた。
剣術も弓術もどちらも師範を付けて頂いてるけど、どちらも簡単に出来てしまった。
父上にも母上にも驚かれたけど、同時に凄く喜んでくれたから余り気にはしてない。
コンッコンッコン···───
「誰だ?」
「セオドリックです」
「ほぉ、入りなさい」
「ありがとうございます父上、失礼します」
重厚な扉を4歳のセオドリックは意図も簡単に開けて入室した。
「セオドリック、何故執務室まで来た?今日は午前は剣術の鍛練では無かったかい?」
「はい、既に剣術師範には終了の旨を頂きました。取り急ぎ父上に聞きたい事がありましたので、此方まで来ました。」
「ほぉ、何だい?」
「あの、今日は従兄妹殿に会えるのでしょう?何時くるのですか?」
昼食時は父上と母上と共に食べる為その時に聞いても良かったのだが、居てもたってもいられず父上のいる執務室に突撃してしまった。
「とても利口なお前がそんなに落ち着かないのは珍しいな」
「そうでしょうか?·····自分でも良くわからないのですが、父上が言うのでしたらそうなんだと思います。とても気持ちが昂ってる気がします」
「ふふふっ、もっと小さい時からお前は聡明で何処か大人びてたが、その顔は年相応に見えるな。ちょっとホッとしたよ」
自分でも驚いてはいる。
常に冷静な目線で物事を考えよ···と剣術師範には教えられ、それを心掛けて生活しているんだけど、同じ加護持ちの従兄妹殿に会えると思うとソワソワしてしまう。
それに、王族しか入れない書庫で見つけた“共鳴”なるものも気になった。
妖精王からの加護を授かった者が“共鳴”する事実が記載されていた。
その“共鳴”は番と同義であるみたいで、運命の相手だと身体に変化があるらしい。
従兄妹同士だけど、その可能性も低くは無い。
その実証としても気になるから落ち着かないのかもしれない。
「世の中の4歳児はとても元気にはしゃいでいる年頃らしいが、セオドリックはそういった姿は無いからな~、今の落ち着かないお前がとても可愛いよ!」
そういってシルヴェスターはセオドリックを抱き締め立ち上がった。
所謂抱っこだ。
「ち、父上!!恥ずかしいです!もうそんな年頃でもありません!」
「何を言う!4歳なんてまだまだ赤ん坊だろう。もう少し抱っことか抱き締める事をさせておくれ」
「うぅー····わかりました·····けど、母上には内緒ですよ?」
「わかった、わかった」
とても聡明で物分かりのいい子ではあるが、普通の男の子だ。
父上に抱っこされるのも、ちょっと恥じらいがある。
「そ、それで父上!!従兄妹殿には何時会えますか?」
「おお、そうだったな。この後昼食をオーロラと一緒に取った後にもう少し私が仕事が残っているからそれが終わり次第、サミュエルに家族を迎えに行かせるから、早くても15時頃になるのではないかな」
「わかりました!では、僕も父上のお仕事手伝います!そしたら従兄妹殿に早く会えるでしょう?」
「!?そこまでして会いたいようだね」
「はい!とても楽しみです!」
「お前にとって善き出会いになるといいな·····なあ、サミュエル!」
「ええ、そうでございますね」
「あ·····」
叔父上が執務室にいらっしゃるのをスッカリ忘れてました。
チラッと叔父上を見るととても爽やかな笑顔を見せてるが、父上と同じで表情には出ない何かを秘めた笑顔を作ってるみたいだ。
「では国王陛下、今から昼食を取って頂き、午後からはセオドリック殿下にも残りの仕事をお手伝いして頂くということで宜しいでしょうか?」
「いや、まだセオドリックには私の仕事は難しすぎるから何とか早く終われるよう頑張ろうかな。セオドリックはその間帝王学の復習をしてなさい」
「·····はい」
叔父上からの圧の掛かった声で、僕も父上も正気に戻り午後からのスケジュールが決まった。
早く従兄妹殿に会いたいな。
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