報告···───
亀更新に失礼します。
ぼちぼち更新していけたらと···
───コンコンコンッ······
「父上、セオドリックです」
「·····──入りなさい」
「···失礼します」
執務室の重厚な扉を物ともせず開け、入室するセオドリックに執務室内に居る初めてその光景を見る大人は驚きを隠せないでいた。
「先程、お前の侍従から早急の報告があると来たが、してその内容は今報告せねばならんのか?しかも、アラステアもティナ嬢もいるではないか」
「はい、父上。そのご報告ですが、此処にいらっしゃる大臣方も同席して頂けると有り難いです」
「ほぉ···申してみよ」
大臣以外は場の空気を読み退室して行った。
「ありがとうございます。──先程の妖精に関する講義にて、今日受講していた者は各自妖精との対面及び対話を目的とした実践を行っていました。その際、ティナはすでに妖精王との対面及び対話が可能、私も水の妖精王との対話が可能になりました」
「ほぉ···それで?それだけでは、特に急を要する内容では無さそうだが···」
シルヴェスター陛下は特に驚くでもなく、妖精王との対面·対話は王族であれば当たり前の様に話すが、一般的には妖精との対面だけでも子供には難しく、殆どの人間は10代半ばから後半に掛けて学園等での教育の一貫で対面と対話が可能になる。
それがセオドリックとティナは妖精王との対面と対話が幼児年齢で可能になったということは前代未聞なのだ。
その話を聞いていた執務室内に居る各大臣たちが驚きを隠せる筈もなくざわめく。
「はい。私は水の妖精王に、ティナは水の妖精王以外の妖精王へそれぞれ名付けを行いました」
「···っ!!」
──ガタンッ!!
ガタガダッっとシルヴェスター陛下の居る執務机が音を立てて軋み、勢い良く立ち上がったので執務椅子が倒れる音が鳴り響く。
大臣達も驚愕し、さっきまでざわついていたのが嘘の様に静かになり息を飲むのが伝わる。
流石にシルヴェスター陛下も自分の息子が妖精王の名付けに関わるとは思ってなかった為、陛下らしからぬ驚きを見せた。
隣にいるティナの父であるサミュエル宰相も驚愕の眼差しをセオドリックとティナに向ける。
「───···セオドリック、そ、それは真か?···ティナ嬢も?」
「はい、真実にございます」
「はい陛下、セオドリック殿下同様妖精王の名付けの件、真実にございます」
「·······はぁ···」
手を額に充て、眉間に皺を寄せながらシルヴェスター陛下は溜め息をついた。
「セオドリック、ティナ嬢。この事を知ってる者は他に誰がいる?」
「アラステア、ルィエ伯爵自身と子息、アザレア侯爵子息、ゼラニューム伯爵令嬢と此処にいるバートラントです」
「では、至急その者達を此処へ」
「はっ!わかりました」
執務室にいた大臣の1人が退室し、今日セオドリック達と同じ場所にいた者全員が執務室に集められた。
─────···
皆が到着し、国王からの言葉を待つ為に執務室内が緊迫した雰囲気になる。
「·····ルィエ伯爵、先程セオドリックから妖精王への名付けについて報告があったのだが、ここにいる者全員が目撃者としての証言は可能だろうか?」
「はい、私の子供含め皆が目撃致しました。この事については世界中への影響がありますので、子供達には他言無用と伝えてあります」
妖精への名付けなら日常的な光景であるが、今回はその妖精を統べる妖精王への名付けなだけあり、各大臣へも情報統制し尚且つ各国への通達が早急課題になる。
「ふむ、ありがとう。セオドリックとティナ嬢はこのままこの場に残り、今後妖精王への名付けに関して各国へ通達した後の事について話し合いをしたい」
「「わかりました」」
「子供達よ、あらぬ心配を掛けさせてすまないが、この件の詳細が決まるまでは講義を一時的に中断したい。再開についは追って連絡する」
「は、はいっ!」
「わ、わかりました」
「了解しました」
国王陛下に謁見することでさえ一貴族でも大人が殆どの中、突然の謁見にクラーク達は緊張の面持ちで大人達を見上げ、尚且つ国王から直接命令を下される状況に緊張がピークに達する。
各々自分たちの服を握り締めたり、手を強く握り締めたりと緊張しているのが伝わる。
シルヴェスター陛下は緊張した面持ちの子供達に気付くとサミュエル宰相に目配せし、子供達を退室するよう指示を出した。
コソコソッ···────
「サミュエル宰相、このままでは子供らが可哀想だ。ルィエ伯爵と一緒に退室して貰うよう指示を。ルィエ伯爵は子供を見送り後に再度此処へ来るよう言ってくれ」
「承りました」
─────····
「ルィエ伯爵、子供達を各家の馬車まで送ってあげて欲しい。このまま此処に居るのは流石に居づらいと思う。ルィエ伯爵は見送り後直ぐ此処に戻ってくれ」
「わかりました。では、子供達皆様退室致します。陛下、御前失礼します」
「ああ、子供達もすまなかったな」
「っ!!いえっ!御前を失礼しました」
「「失礼します!」」
ルィエ伯爵はそう言い残し、子供達に退室の指示を出し、元気良く挨拶して退室して行った。
執務室に残った子供はセオドリックとアラステア、ティナの3人になった。
「セオドリックたちはそちらのソファーで待ってて欲しい。ここに居ない大臣を呼び次第話し合いを行う」
「はい、わかりました」
「父上、私も同席しても宜しいのでしょうか?」
「アラステアも将来の為に聞いておいた方がいいだろう。同席を許可する」
「ありがとうございます」
「ティナ嬢も大人ばかりで緊張するかと思うが、いいか?」
「はい。とても重要なお話ですので大丈夫です」
「ありがとう」
シルヴェスター陛下との会話をそこそこにサミュエル宰相がティナの前まで来て、目線を合わせる様にしゃがんで話し始める。
「ティナ、この話し合いが終わったら私と帰宅しよう。ソフィアにも話さないといけない」
「はい·····そうですね。お母様にこのお話は大丈夫でしょうか?お腹の赤ちゃんとお母様が心配です」
「そうだね、でもそこは大丈夫かも。ソフィアは寛容であり器量が良いからね」
「ふふふっ、そうですね。そう思うと大丈夫な気がしてきました」
「おい、サミュエル宰相!私がまだティナ嬢と話してたじゃないか」
「陛下は、子供向けの話し方になってません。ですのでティナが怖がってしまいます。うちの可愛いティナはまだ3歳なんですよ?」
「ぐぐっ···わかっているが、話し方はなかなか難しい。執務中でもあったし回りには大臣も居る」
「ですが、やはり先程の子供達を見れば陛下の威圧感にとても緊張していたかと思われます。もう少し子供達への配慮は今後の為には必要かと」
シルヴェスター陛下とサミュエル宰相は兄弟である為、サミュエル宰相の強気発言に本人同士の会話とはいえ、やり取りに大臣達は見守っている。
「────ふぅ···善処しよう」
「そうして頂けると助かります」
「サミュエルは相変わらず私に厳しい······むぅ···」
一国を代表する国王陛下が唇を尖らせたアヒル口を宰相に向ける光景は、他国からすれば異様な光景でしかないが、プラントン王国では日常茶飯事なので他の大臣も驚くことは無い。
国王陛下と宰相のお互いの信頼関係の強さに、会議の中でも宰相が強く意見を言ったとしてもさほど問題にはならないのだ。
しばらくすると、他の大臣と共にルィエ伯爵が戻ってきた。
セオドリック達がいるソファーではなく、話し合いをする会議部屋に場所を移し、大臣達は決められた席につく。
セオドリックとティナ、アラステアもシルヴェスター陛下とサミュエル宰相の近くに椅子を用意してもらい座る。
「皆に急遽集まって貰ったのは、此処にいる我が息子のセオドリックとサミュエル宰相の娘ティナ嬢が妖精王に名付けを行った事について話し合いをしたいと思い集まって貰った」
「なっ、なんと!」
「真でございますか?!」
────ザワザワザワザワッ···
ザワザワと先程執務室に居なかった大臣達がどよめき、驚きを隠せないでいる。
「名付けの証人としてルィエ伯爵、君に説明して貰いたい」
「はっ!発言の許可を頂き感謝致します。本日の午後より妖精に関する講義をセオドリック殿下、アラステア殿下含め貴族子息·令嬢の一部の選抜された子供達に行っておりました。子供達のレベルは一般的年齢の教養より遥かにハイレベルまで達しております故、弱冠3歳及び4歳でも行えると判断し、妖精との対面と対話をする実践講義を行いました。その際、セオドリック殿下は水の妖精王、ティナ嬢については火の妖精王と闇の妖精王の対面と対話をして頂けました」
「なっ、なんと対話まで!」
「流石、セオドリック殿下!」
「否、サミュエル宰相のご令嬢も殿下と同様に凄すぎます。まだご令嬢は3歳···凄い」
ルィエ伯爵のまだ途中の話しに大臣達が再び驚く。
「皆様も驚くのは無理が無いと思います。私も実際に妖精王と対面したのは生まれて初めてでございました。しかも、ティナ嬢につきましては既に各妖精王と対話まで済んでるとの事でございましたので、また次回以降にティナ嬢の無理の無い範囲で他の妖精王にお目にかかれればと存じます」
ルィエ伯爵は優しい眼差しでティナにちゃっかりお願いする。
「ふふふっ···はい、分かりました。妖精王へも伝えておきます」
「ありがとうございます。では、話しを続けます。実践講義中に火の妖精王がティナ嬢に以前より名前に関するお願いをしていた様で、先程全妖精王への名付けがなされました。セオドリック殿下は水の、ティナ嬢は水以外の属性の妖精王にございます。全妖精王の名前に関してはセオドリック殿下とティナ嬢からの報告が宜しいかと思われます。以上がご報告となります」
ルィエ伯爵が説明をしているとシルヴェスター陛下とサミュエル宰相は同じ事に気付いた様で、お互いを目配せする。
王族にのみ伝わる事を2人は思い浮かべ、後で確認する旨をアイコンタクトで確認し合う。
「分かった···ありがとうルィエ伯爵。ではセオドリックとティナ嬢妖精王の名前について話して欲しい···────
その後はセオドリックとティナがそれぞれ妖精王の名前を報告し、議事録の記入をサミュエル宰相が行い、各大臣に妖精王の名前における重要事項を取り決め、今後の各国への通達を外務大臣と決め即日公表する事に決まった。
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