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登城の前の···別視点────

今度は国王目線で。


次のページからは本編戻る予定です。

───国王:シルヴェスター視点───



「あの、今日は従兄妹殿に会えるのでしょう?何時くるのですか?」



とても小さい頃から利発で聡明なセオドリックがソワソワしながら、父親の仕事場である執務室に来るのは珍しかった。


そんなにサミュエルの子が気になるのか。


確かに全妖精王様からの加護を授かってる者は全世界探しても居ないだろう。

むしろ、昨年セオドリックが水の妖精王様から加護を授かっただけでも国中が歓喜したというのに、本人は全く気にもとめておらずセオドリックの従兄妹になるサミュエルの子ばかり気になる様だ。


セオドリックとの話を和やかな雰囲気でしていたが、宰相として執務室に一緒に居たサミュエル自身に圧の掛かった声で午後からのスケジュールを問われ、渋々午前中に片付ける仕事をいそいそとやり、昼食になろうかというときにサミュエルが話し掛けてきた。



「国王陛下、セオドリック殿下は私の娘に興味をお持ちなんでしょうか?」

「何だ、藪から棒に」

「いえ、先程セオドリック殿下と陛下のやり取りを拝見してまして、まだ会ったことも無い私の娘に凄く興味津々の様な感じでしたので」

「そうだな。セオドリックが生まれた時に妖精王様から加護を授かったが、翌年にお前の子が全妖精王様から加護を授かったのが、あの子なりに気になる様だ。嫉妬ではなく単に興味の対象なんだと思う」

「そうなんですね。つい先日王族のみが入れる書庫で偶々セオドリック殿下をお見掛けした時に妖精王様からの加護について調べてる様でしたので、何かセオドリック殿下の中で気になる点があったのかと思い陛下に問いました」

「ほぉ、書庫で妖精王様の事をか。では、私達が知ってる情報をセオドリックも知ってると思って良さそうだな·····まあ、その件については本当に稀に起こる事だから奇跡に近いとは思うが···」



妖精王様からの加護自体が奇跡に近い。

王立図書館で保管されてる記述でさえも妖精王からの加護を授かった者はかれこれ100年程前の王族が1人、各隣国でも数名いるくらいなのだ。


「まあ、後程お茶会の席でセオドリックがどう行動するのか様子を見るとしようか。サミュエルも家に帰り昼食を取ってきなさい。奥方と娘にも今日の件よろしく頼む」

「はい、では一旦失礼します」

「ああ、また後で」



サミュエルが執務室を出て行き、自分も書類を机の上で整理して執務室を後にした。



────·····



昼食の後午後から残りの仕事をしてスケジュール通りにお茶会の時間になり、妻のオーロラを連れてセオドリックの部屋に行ったら、そこでもセオドリックはソワソワ落ち着かない様子で自室の前に侍従と一緒に居た。

少し離れた所から見てても目が輝いて見えた。


「セオドリックは本当にサミュエルの娘に会いたいんだな。ここから見てても分かりやすいくらいに浮かれてる」

「ふふふっ、そうですわね。セオドリックには申し訳ないですけど、私はすでに会ったことがありますのでティナ嬢が可愛い子って分かってますけど、セオドリックは今日が初対面ですからね」

「そなたは既に会ってるのだったな。確かに我がプラントン王族の容姿とサミュエルの妻であるソフィア殿の容姿を合わせた感じで人形のようだったな」

「そうなのですよ!生まれた時からもうお人形の様に可愛いので、つい私も我が子の様に可愛がってしまい、服を送ってしまったくらいですわ」

「お、おお···そうだったのだな」

「そんなお人形の様に可愛いティナ嬢と会ったらセオドリックがどんな反応をするのかとても楽しみですわ」


オーロラの溺愛っぷりに少し驚いたが、女性とは可愛いもの好きなんだと改めて感じる。


「父上、母上早く行きましょう!」


そんな国王夫婦の会話を遠くから既に眺めていたセオドリックが近付き、早く行こうと急かす。


「セオドリックは待ちきれないのね」

「そ、そんなことは無いです!時間をちゃんと守らねばと思いまして」

「そうだな···そう言うことにしといてやろう」

「父上まで!」


顔を真っ赤にして反論するセオドリックに年相応な反応で空気が綻ぶ。


「では、王族専用の中庭まで行こうか。既に侍女達にはお茶会の準備をするよう言ってある」

「ええ、セオドリック。念願のご対面ですよ」

「母上もー!」


真ん中にセオドリックを挟みシルヴェスターとオーロラは中庭まで歩みを進めた。




─────·····




「これセオドリックよ、此方に座らぬか」

「嫌です、父上」



何と珍しい事か。

今まで一度も私に反論したことが無いセオドリックがティナ嬢と会い、側に居たいと言っているではないか。



「私の加護と共鳴しているのかもしれません、何か胸の辺りが温かい気がして、確かめる為にも側に居てもよろしいでしょうか?」



「!?」


王族に伝わる文献と同じ現象がセオドリックに起きてるなんて。

加護の“共鳴”を私の代で見る事が叶うとは。

しかも自分の息子が今さっき初対面したティナ嬢と共鳴し、惹かれている。

何と私は幸運なんだろうか。


それに“共鳴”しているから···ではなく、セオドリックが純粋にティナ嬢という人物にも惹かれているのだと認識出来る。

セオドリックは何処か一線引いた目線で他人と付き合う節があるが、ティナ嬢とは砕けた感じで既に自分を出してるではないか。



その後、妖精王が現れティナに纏わる事と、穢れた魂がこの国に転生しているという事、セオドリックとティナ嬢でその穢れた魂が奪った妖精の加護を妖精王様に返還するという約束。

それに、セオドリックがティナ嬢を婚約者にと希望したこと。



そんないろんな事が起こった日だった。

ご購読ありがとうございます。

誤字脱字等ありましたら、ご指摘ください。

よろしくお願いいたします。

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