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第23話 真相

「……使ったんだよ。そう簡単には使えない……いや、使わないと決めた呪法を使った結果が……」

「一夜だな?」

 俺の言葉に、侯和は頷いた。

「……分かった」

 侯和の話を聞いた俺は、部屋を出て診察室へと向かった。


「咲耶、いるんだろ?」

 声を掛けると、直ぐに声が返ってくる。まあ……咲耶がここにいるだろうと思って来たのだが。

「ええ、いますよ」

 咲耶は、穏やかな笑みを見せて、俺を振り向いた。

「咲耶」

「戻りますか……?」

 俺の目を見て、俺の思いに気づいた咲耶は、笑みを見せたまま、そう答えた。

 俺も咲耶に笑みを返す。

「ああ。ジジイが待っているだろう?」

「そうですね。寂しがっている事でしょうね」

 咲耶の言葉に、俺は小さく二度頷いた。


「一夜を連れて行こうと思っているんだ」

「そうですか。分かったんですね。彼が…… 一夜さんが何故、宿になったのか」

「ああ。分かったよ……」

「貴桐さん……他にも何か分かった事があるんですか……?」

 咲耶は、俺が一夜の事だけではなく、他の事を考えている事に気づいているようだった。

「おそらく……来贅も同じだ」

「一夜さんと……同じ……ですか? 来贅も宿だと……」

「ずっと考えていたが……中々、繋がらなかった。『心臓に宿し力を持った者』……あの塔で分かっただろ……。それでも奴は、心臓を探している。それは勿論、他の臓器もだが、妙だろ」

「ええ。それに呪術に対しての思いは、かなり強いようですしね……」

「精霊の力を持っていても、それだけに(とど)まらない。それでも継承者を探しているんだからな……」

「ええ。僕もずっと疑問に思っていましたが……」

「来贅がこうして接触してくるのには、当然、繋がりがあるからだ。ジジイの墓の前にいた俺に、奴は言ったんだよ。『朽ちた屍に用はない』ってな……。だから俺は、生きている者の臓器を使っているんだと思った訳だが」

「その通りですよね……?」

「ああ。奴は……死ぬ訳にいかないんだ。生き続ける理由もそこにあるだろう」

「どういう……事ですか。来贅は、死ぬ事はないんですよね……?」

「そうなんだが……その力を得た後に奴は、反魂を使った事があるはずだ。だがそれは完璧ではなかった。失敗したと言っていいだろう」

「骨を繋ぎ合わせるよりも……生きている者の臓器を使った方が、可能性が高くなると考えているという事ですよね」

「ああ。だが、それは反魂に似ている呪法だ。それはこの家にあるはずなんだ。侯和から聞いた。一夜の両親が事故に遭った時、この診療所に運ばれ、その時に呪術を使った、と」

「僕も気になっていたので、探していたんです。呪術医は、その家々に伝わる呪法を持っていたと言われていましたし、一夜さんが宿していたものが綺流の性質に似ているというのが引っ掛かっていましたので」

「あったのか?」

 咲耶は頷くと、俺に冊子を手渡した。

「見つけましたよ。何か記録でも残っているのではないかと、随分と探しましたが……。診療簿です」

 俺は、診療簿を開く。

 そこには、事故当時の一夜の事、一夜の両親の事が書かれていた。

 中を開いて、目を止めたのは、その日付だ。


 ……これは……。


 俺は、咲耶と目を合わせた。

 咲耶は、深く頷きを見せると、答えた。


「塔が出来た頃と同じ頃です」

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