第11話 再会
流行り病が収束するまでは、忙しい日々が続いていた。
だが、収束すると塔の動きが今まで以上に大きくなった事が、目に見えて分かった。
扉を開けた呪術医たちは、再度、塔に入るかを選択させられ、受け入れる者もいれば、変わらずまた拒否する者もいた。
拒否した呪術医の排除が始まろうとしていたのは、新たに塔に入った呪術医の情報が左右していた。
新たに塔に入った呪術医の処遇……それを期待した結果だろう。自分が優位に立つように、他人の足を引っ張る……正直、腹が立つばかりだ。
状況は悪くなっていく一方だったが、それでも塔に属する事はないと答えを出した呪術医は、覚悟を決めた事だろう。
現状を打破したいのは、俺たちだけではない。そう思える事があったのは救いだった。
それでも塔は、塔に属さない呪術医に圧を掛けるように、奴らは姿を見せつけていた。
「どうやらこの辺りにも来ているようです」
俺は、部屋の窓から外を見ながら、咲耶と二人で話しをしていた。
「そう……みたいだな」
「貴桐さん……何か……?」
歯切れの悪い返事に、咲耶はどうしたのかと俺を見る。
俺は、その目線を少しだけ受け止めて、うっすらと笑みを漏らした。
「いや……騒がしくなると思ってな……」
「……そう……ですね」
「どうせなら、上手くやって貰いたいものだが……」
「……そう……ですね……」
咲耶の返事も歯切れが悪くなる。
俺と咲耶は、目を合わせると互いに苦笑を漏らした。
だが、その表情も真顔に変わる。
そして、互いに意味ありげに笑みを見せると、咲耶が先に口を開く。
「僕は……本気でやりますよ」
「ああ。それがいい」
それから数日後、庭で大きな物音が響き、炎があがった。
「来たか……。咲耶、行くぞ」
「はい」
「おい……貴桐……」
侯和は、心配そうに俺たちを見る。
「貴桐さんっ……!」
外に出ようとする俺たちの前に、一夜が声と共に飛び込んで来た。
「心配するな。侯和…… 一夜を頼む」
はっきりとした口調でそう告げ、俺たちは外へと向かった。
それでも、俺たちを心配する一夜が追い掛けて来る。侯和が一夜の後を追った。
外に出た俺たちの前に現れた男は、塔の中層に属した男だ。その背後には、数十人の男を引き連れていた。
男は、俺を見ると不敵にも笑みも浮かべて、歩を進めて来る。
「ああ……やっと見つけた。やっぱり生きていたか。まあ、お前の生死なんかどうでもいいって思ってんのは、俺以外の連中だけだ。どうせ呪術師なんか何の役にも立たないってな……だが……その呪術師がどれだけ危険な存在か……俺とお前なら分かるだろ? なあ、タカ……いや……貴桐」
あまりにも堂々とした態度に、俺は思わず笑ってしまった。
「危険ねえ……? 使い方を誤ったらそうなるだろうな。だが……お前、呪術師だったっけ?」
俺のその言葉に、不愉快に顔を歪める。
それでも強気な態度は崩す事はなく、俺を睨みつけていた。
俺の背後に咲耶と等為、可鞍がついた。
お前は今……試されている事に気づいていろよ。
一夜と圭の間に起こった事、綺流が一夜に近い存在になってきている事……奴が気づいていないはずがない。
だからこそ、送り込んで来たのだろう。
俺は、男の目線をじっと受け止めながら、心の中で呟いた。
……やるなら……本気でやれよ。
丹敷。




